現在位置:asahi.com>教育>子育て>朝日新聞記者の子育て日記> 記事 逆子でびっくり!(女性編)2008年02月04日 お腹が痛い。生理痛のような痛みが下腹部に走る。妊娠初期のころから、うっすらとそんな痛みはあった。妊娠中期になると、痛みがさらにはっきりしてきて、お腹が張ってきた。苦しくて、ペンギンのような歩き方になった。 名古屋で産休に入ったら、したいことは山ほどあった。あこがれのマタニティービクスにマタニティースイミングにも行ってみたかったが、それどころではない。 ただ、保健所が開く妊婦対象に栄養指導をするお料理教室に参加でき、ママ友だちもできた。一緒にランチに行ったり、情報交換をしたり。そこで気がついたのが、胎動を感じる位置がママ友と違うこと。彼女は上の腹部をけられるのに、私は下腹部。逆子だったのだ。 私は50メートルも歩くと苦しくなる。100メートル先の店が遥かかなたにあるように感じ、買い物にも出られなくなった。転院先の医師からは、逆子が直らないうちは、無理に運動をしないようにと言われた。しかも、引っ越し直前に同僚たちとデザート付きのお別れランチを繰り返したことがたたり、尿検査で糖が出てしまった。臨月前から、体重はすでに臨月状態。助産師さんに「これ以上太らないように!」とクギをさされた。おまけに貧血で、頭もボーッとする。手帳に書いた自分のメモさえ何のことかすぐに思い出せない。暑さと疲労のせいかと思っていたが、処方された鉄分を飲み続けたら、頭がシャキッとしてきた。 すぐ痛くなるお腹を抱えながら、えっちらおっちら1カ月かけて、何とか引っ越し先の新居を片づけた。しかし、独りで部屋にいると、ちょっとお腹が痛くなっても、どんどん不安になってくる。体も思うように動かなくなり、夫の手助けなしには、日々の生活に支障が出るようになった。大好きな料理をするのも疲れる。 名古屋に来て約1カ月後の検診で、医師から自宅安静を言い渡された。大きくなる赤ちゃんに胃が圧迫され、食欲もなくなった。でも、逆子を直さなければ、帝王切開になってしまう。逆子を直すのに効果的だという姿勢で寝てみたり(この姿勢は苦しい)、毎晩おきゅうをしてみたり(これも効果があるそうだ)。そんなことを繰り返していたら、頻繁にお腹が張るようになってしまった。ある晩、とうとう1時間に何度もお腹がキュッと痛くなり、ひたすら夜を耐えた。 翌日、病院に行った。つらくて着替える気力もわかず、パジャマのままカーディガンを羽織り、タクシーに乗った。3分ほどで到着。近くの病院にして本当によかった。診察の結果、赤ちゃんが下がってきているらしい。点滴をするほどではないが、軽度の切迫早産でそのまま入院することになった。逆子を直すどころではない。とにかく、時期が来るまで赤ちゃんをお腹の中に入れておかなくては。張り止めの薬を飲み、ベッドでひたすら横になって過ごす日々が始まった。 人生でこれまでにないほどテレビを見た。唯一の楽しみは、お食事。病院食は栄養バランスやカロリーも考慮されているので、安心して完食できるし、とにかくおいしい。和洋中とメニューが工夫されていて、週に1度手作りおやつまで出てくる。食器も陶器でうれしい。毎週配られる献立表がとても楽しみで、何度も読み返した。ネットの口コミ情報は正しかった! 寝たきりで硬くなった体をマッサージをしてくださるスタッフの方もいて、癒された。 夜になるとやはり不安が募るが、新居にいた時ほどではなくなった。看護師さんが夜間の見回りに来て、起きていれば声をかけてくれたからだ。自分でもままならない体にいらだちを覚えつつ、「お年寄りのストレスって、こんな感じなのかな。寝たきりになるとさぞつらいだろうな」と想像した。 そして、13年前に亡くなった祖母のことを思い出した。晩年は次第に体が弱り、ずれた掛け布団を自分で直すこともできなくなっていた。心配で深夜に様子を見に行き、ベッドから落ちかけた布団をかけ直して立ち去ろうとすると、やせ細った手で不意に腕をつかまれたものだった。暗がりの中でじっと見つめられ、当時はただドキリとしただけだったが、今になって祖母が感じていた不安が分かる気がした。 女性記者プロフィール(07年10月15日から)
女性記者プロフィール(07年10月6日まで)
男性記者プロフィール
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