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【国際】

豪政府、先住民に謝罪へ

2008年2月2日 朝刊

 【マニラ=吉枝道生】オーストラリアで先住民アボリジニの子どもを親元から引き離して収容した隔離政策について、ラッド首相が今月十三日、議会で謝罪する。政府の公式謝罪は初めてで、文言や内容をめぐって議論が高まっている。アボリジニ側からは賠償基金設立を求める声も上がっている。

 一九一〇−七〇年代ごろまで行われた隔離政策では、十万人ともいわれる先住民の子どもたちが強制的に施設や白人家庭などに送られた。彼らは「ストールン・ジェネレーション(盗まれた世代)」と呼ばれ、精神的にも深刻な問題を抱えてきた。

 保守連合のハワード前首相はこれまで謝罪を拒否。昨年の総選挙前になってアボリジニ側との和解策を打ち出したが、選挙で敗北した。昨年末に発足したラッド新政権は、議会開会の最初の仕事として謝罪を選択。マックリン先住民問題相は「過去から前進するための必要な最初の一歩だ」と強調した。

 政府は一カ月にわたり、謝罪の内容や文言についてアボリジニ団体や識者らから意見を聴いており、現在も調整中。公式謝罪によって発生する法的な問題についても検討している。

 野党側では謝罪についての意見が揺れており、賛意を示す議員もいるが、「文言を詳細に検討しなければならない」との慎重論も。「謝罪より具体的な先住民政策を進めればよい」とする意見もある。

 マックリン氏は、先住民の平均寿命が国民平均より十七年も短いことに触れ、「新たな関係を築いて、政府は先住民とともに対策を進めることができる」と話している。しかし、謝罪にともなって議論が起こっている賠償基金設立については否定的だ。

<アボリジニ隔離政策> 18世紀後半から白人がオーストラリアに入植。白人文化への同化を進めるため、先住民族アボリジニの子どもたちは、強制的に親元から隔離され、文化や歴史の継承を許されず、英語での教育を強いられた。現在の人口は約40万人。

 

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