医師不足や救急患者の増加に伴い、救急病院の診療体制が縮小を余儀なくされたり、その余波で最重症患者の受け入れが困難になるなど、救急システム全体が悪循環に陥っている実態が、毎日新聞の緊急アンケートで分かった。2次救急病院で救急診療を縮小した病院が2割に上ったほか、3次救急病院(救命救急センター)の4割が重症患者を断るケースが増えていると回答。重症患者が多数の病院に断られるケースが各地で相次いでいるが、こうした実情が背景にあるとみられる。
アンケートは、全国200の2次救急病院と102の救命救急センターの計302病院を対象に実施。それぞれ138病院、85病院から回答があり、全体の回答率は73.8%だった。
その結果、2次救急病院の22%が「05年1月以降に、救急診療を縮小した」または「近く縮小する」と回答した。縮小理由として、約8割が医師不足を挙げ、看護師不足や医療訴訟回避などが続いた。2次救急病院は全国に約4000あり、単純計算すると、約900病院が診療を縮小していると推計される。
また夜間や休日の緊急手術について「原則不可能」または「不可能なことが多い」と回答した2次救急病院が41%に達した。主な理由は医師不足で、特に「麻酔医不足」を挙げた病院が目立った。
一方、3次の救命救急センターでは、05年1月以降の3年間で、重症患者を断ることが「かなり増えた」または「やや増えた」との回答が39%あった。「医師不足」と「2次救急病院の患者受け入れ減少」を理由に挙げた病院が、複数回答でそれぞれ約7割だった。
さらに、05年1月以降に、本来は2次救急病院が診療すべき(最重症ではない)患者の受け入れが「かなり増えた」または「やや増えた」との回答は74%に達した。
救急診療の最後の砦(とりで)とされる救命救急センターの患者受け入れに支障をきたすケースが増えているのは、2次救急病院の体制縮小や緊急手術ができないことなどが大きくかかわっているとみられる。
さらに、救命救急センター自体の医師不足も深刻だ。有効回答のうち96%の病院が、重症患者を断らずに診療するために必要な医師数に足りないとし、不足人数の平均は6.6人だった。【高木昭午、野田武】
◇2次救急病院と救命救急センター
日本の救急医療制度では、入院不要な救急患者を外来診療する医療機関を「初期」(1次)、入院が必要な患者に対応する病院を「2次」、さらに重症で命にかかわる患者を治療する病院を「3次」(救命救急センター)と呼ぶ。厚生労働省は全国で203病院を救命救急センターと認定している。認定がないものの地域の事情などで3次の役割を担う病院もある。
毎日新聞 2008年2月4日 2時30分