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2008年2月4日

◎北陸の「就活」本番へ 学生引き寄せる魅力あるか

 北陸企業への就職活動(就活)がこれから本番を迎える。「超売り手市場」と呼ばれる なか、優秀な人材をどれだけ北陸の地に引き留め、あるいは引き寄せることができるか、北陸経済の明日を占う試金石でもある。

 地元企業の多くは、県外の大手企業に比べて規模や経営の安定度などの面で及ばない。 企業にとって就職活動は、それでも北陸で働きたいと考えている学生たちの目に、自分たちがどう映っているのか、これまでの経営姿勢が試される場でもある。見られているのは、事業の将来性や収益力、従業員への待遇ばかりではあるまい。その企業が地域にどんな貢献をしているか、地域の尊敬を受けているか、などの評価は、意外と大きな決め手になるのではないか。就活は「企業市民」としての活動が問われる場となろう。

 大卒・短大卒予定者の就職戦線は年々早まる傾向にあり、石川県などは昨年十二月末、 「ふるさと就職フェア」を、富山県は年明け早々に「Uターンフェアインとやま」を開催した。日本のトップクラスの企業が採用枠を大幅に増やすなかでも、北陸の暮らしやすさ、生活の質の高さを評価し、古里に残りたいと考えている学生は少なくない。

 就職フェアで、谷本正憲石川県知事は、「県内には特定分野での全国シェアトップの企 業が多い」、石井隆一富山県知事は「世界的に評価される企業、中堅でも意欲のある企業が多い」などと紹介した。規模はそれほど大きくなくても、知る人ぞ知る実力を持つ企業が多いのは事実だろう。

 ただ、地元企業への就職を希望している優秀な学生たちの心を掴むには、それだけでは 不十分である。学生たちは自分が住んでいる地域に深く根を張り、社会に貢献している企業なのか、地元住民の評判はどうかなどを、冷静に見ているのではないか。学生たちはこれはと思う企業の評判を、親族や友人知人から聞き、判断材料にしているはずだ。

 そんなとき、金沢経済同友会が提唱している「企業市民」の活動が生きてくる。社会貢 献を通じ、利益の一部を地域に還元していく行為は、地味なようでも決して無駄にはならない。遠回りなようで、地域の尊敬を得る最短の道だろう。

◎再診料下げ見送り 小手先改革に限界がきた

 〇八年度の診療報酬改定で焦点となった開業医(診療所)の再診料について、中央社会 保険医療協議会(中医協)が厚生労働省の「初診料を引き上げ、再診料を引き下げる」との方針を白紙に戻し、据え置きを決めた。医療費抑制を大義名分にしても、小手先の改定には限界がきたともいえる結果だった。

 同じ病気で二回以上の診療にかかるのが再診料である。病院は五百七十円で診療所は七 百十円。百四十円の開きがあり、厚労省は初診料の引き上げと引き替えにその開きを縮小することで勤務医に回す金をひねり出そうとした。が、健康保険組合連合会など支払い側と日本医師会など診療側が対立し、中立的な公益委員が裁定する形で診療所の再診料を据え置く見解を出し、厚労省の方針が引っ込められたのだった。いわゆる医療崩壊が診療所へも及ぶことを恐れたからだったと思われる。

 苦肉の策として勤務医対策に、昨年末に決まった医師の技術料など診療報酬の本体部分 の引き上げ分(約一千億円)のほか、診療所の軽い治療の無料化や問診などにかかる外来管理費の見直しなどで確保する約四百億円強など合わせて千五百億円があてられることになった。この改定で医療崩壊の進行にいくらかブレーキが働くだろうが、根本的な解決にはなるまい。なぜなら、日本の医療費の自然増が国の政策で抑制されており、医療システムを支える三本の柱の一つである医療を提供する分野で問題が起きてきたのだ。

 医療費の抑制で赤字の病院が増え、勤務医の給与が低く抑えられ、これに医療過誤が厳 しくとがめられる社会的な風潮や、若い医師が母校の医局などに残らなくなるなど理念だけを先行させたような医師研修制度の改革などが重なり、病院では勤務医がやめ、その穴埋めができず、残った医師たちが過労を強いられる結果になっている。

 産科や小児科の医師不足が典型的な例であり、そうした悪循環が麻酔科や外科などにも 及んできた。救急医療から撤退する病院も出てきたのである。国民皆保険を実現した日本の医療システムは世界一といわれたが、今では単位人口当たりの医師数が先進国で最下位である。


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