JR福山駅前の広場整備予定地から出土した福山城外堀遺構をどう保存するか、福山市内で大きな論議となっている。昨年の発掘調査で、御水門や二重櫓(やぐら)跡などが良い保存状態で見つかった。広場を整備する市は計画の枠内で保存する方針だが、そうすると遺構の主要部分を壊すことになる。
地元の意見は真っ二つ。おおむね経済界は計画通りの整備を求め、文化関係者らには現状保存の声が強い。昨年末には市民団体が遺構周辺を水辺公園として保存する提案をまとめ、十万人分の署名を集めた。
一月十八日には市と署名を集めた市民団体が初めて会合し、市側が従来の方針を説明。四日は市民団体側が提案を説明する。本当の協議はその後になる見通しで、いよいよヤマ場を迎えそうだ。
本紙は備後版を中心に読者にできる限り情報提供するとともに、緊急インタビューなどで双方の関係者の声を載せ、市民の判断材料としてきた。
駅前再開発は、市の長年の悲願でもある。一帯は過去三十年間ほとんど整備が進まず、中心部沈滞の要因にもなった。整備区域は一・四ヘクタールにわたり、バスやタクシー乗り場、一般車地下送迎場などを予定。計画は数年掛けて練り上げられた。
一方、福山城は福山のシンボル。初代福山藩主の水野勝成が十七世紀初めに築き、城下町を整えた。外堀遺構は築城当時のものだ。
どういう結論にするのか。難しい選択だが、四百年経過した遺構も壊すのは簡単で、その前に十分な論議を尽くしたい。
(福山支社・柏原康弘)