「国に誇りがないのだろうか」。岡山市出身でパリ在住の洋画家赤木曠児郎さんが先日、本紙に連載中の随筆「フランス 日本 遠眼鏡」で嘆いていた。
ファクスが動かなくなり、パリで日本製のものを購入した時の思いを記していた。英語やフランス語など欧州各国の言葉で書かれた分厚い使用説明書はあるが、日本語の文章はない。難解な内容を外国語で理解するには、数日かかることもあるという。
パリで暮らしていると、日本製品のことで地元の人から使い方などを質問されることが多いそうだ。しかし、日本語の説明書がないため、十分な対応ができない。日本の製品なら、なぜ自国の文章を最初に載せ、続いて外国語にしないのか、と日本企業の姿勢を批判する。
もっともな話である。岡山県に住んでいても、似たような思いを抱くことがある。特に目立つのが、建物の外壁などに大きく掲げられた会社や施設の名称だ。ローマ字表記が増えている。有名なホテルや商業施設をはじめ、公共のホールや宿泊施設などでも使われている。
すっと頭に入らず、目を凝らして確認しないと分からない場合が少なくない。イメージ戦略の一環なのだろうが、「どうして公共施設まで」と首をかしげてしまう。
外国人のためなら、日本語と併記すればよさそうなものだ。「国の誇りよ、どこへ」と嘆きたくもなる。