戦略的武装と新しい主人
自国の戦略を持ち、その戦略を相手に突きつけて揺さぶりをかけるシステム戦略というものを両方持っているのは、アメリカ、中国、フランス、ロシアといった大国です。他の国はだいたいどちらかが欠けているわけです。イギリス・オーストラリア・カナダという英国系白人種国は、アメリカがすべての情報を提示してくれますので、自国で重ねて持つ必要はありません。日本がそれを行うためには、たくさん情報を収集しなければいけませんし、各省庁間で協調し合って日本の戦略を立てるシステムも必要です。
穿った見方かもしれませんが、日本において核武装も辞さずという持論を述べる人々が増えてくることを前提に、日本に対して「それは止めてくれ、日米安保条約は安泰である」とアメリカに言わせる。そしてその先に、「通常兵力を用いた反撃能力を日本が持つことは重要なことである」とアメリカに言わせるというような日本側の戦略がある、と考えることは重要であり、それ自体は非常に重要な防衛戦略的な発想だと思いますが、残念ながら歴代そして現在の政府にもその能力がありません。せいぜい、たまに小さな花火を打ち上げて与党や世論の反応を見るというのがせいぜいのレベルです。日本政府が戦略というものを持っていたらわが国はもっと大国になっていたでしょう。
戦略として日本が長距離弾道ミサイルや空母を持つといった話は、今回の北朝鮮核実験の話が無かったとしたら、押さえ切れないほどの国内世論の反対があったはずです。
そんな戦略的発想は日本人にはない。もっと日本人は純粋で、なんらかの外圧に対して、なんとか生き延びる方策をたててその場をしのいできたというのが昔からの日本人の姿です。戦後は安全保障をリアルなものとして考えていません。
日本には戦前は戦略的発想を持った人たちがいたのに、戦後いないというのは、戦後の日本が特殊な冷戦構造の中、核の傘の下で「平和ボケ」した結果なのでしょう。
戦前は抽象論的な防衛論、国防論はありましたが、戦後は総論も各論も無くなったということです。
アメリカの占領以降、特に1948年以降、日本を反共の防波堤にするという方向に政策が変わり、アメリカは日本が再び戦争をすることがないように牙を抜きました。その後アメリカの言うことをよく聞いてくれるような国になってほしいということで、アジア主義者について書かれた教科書や本は一掃されました。戦前の重要な思想家に関する部分はすっぽり抜けているわけです。これは非常に大きな作意です。
吉田茂や白洲次郎的図式というのがあって、対米追従が前提だけれども、アメリカに対して「日本にあまりに無体な要求をすると、社会党や共産党といった革命勢力がいるのであまり刺激しないで欲しい」というように、これをカードにして使うという戦略がありました。
そういった戦後の戦略的な行動の本義が、うまく述べ伝えられませんでしたし、自民党政府自体が堕落してしまいこの戦略を放棄してしまった。日米安保条約も、冷戦体制が深刻で日本が経済復興の途上にあるときは続くにしても、将来永久に続くべきかどうかについては、特に白洲次郎には暫定的なものだという見識がありました。
しかし、55年体制の中で忘却癖が進んだせいか、ある時期以降、日米安保条約に正面を切ってたてつくと、非武装中立よりもむしろ核武装を含めた日本の武装化を主張することと同じになってしまう矛盾がおきて、安保条約問題を議論する論調は弱くなりました。
しかし黙ることによってもっと矛盾が大きくなってしまったと思います。
日本にとって最も良い政策を選択するために、全ての人材をうまく有機的に活用するシステムは必要だと思います。例えば日朝交渉でも、韓国語、朝鮮語に堪能な、相手の提案の中身を読み取って一番良い反対の提案が出来るブレーンを連れて行くということを韓国やアメリカの外交交渉団などはやっています。学者が交渉団に入って、歴史的な背景も踏まえて一番いい交渉のあり方をアドバイスするといったシステムは日本には必ずしもないので、こういったシステムを作ってほしいと思います。これは小沢一郎が以前から提唱しているものと趣旨も目的も同じです。
先ほど、日本がしっかりした戦略を持っていたらもっと大国になっていたという発言をしましたが、逆によい面もあります。
日本人は考える習慣をなくしてしまったため、本当に「飼いならしやすい国民」になってきたと思います。政府がそれらしいテーマや戦略を投げかけると、一様に狙いどおりの反応を示してくれるのです。これはどういうことかというと、現自民党政府のような自虐的対米追従政府ではなく、自公以外のもう少しましな政府(主人)ができれば、その新たな主人の目論見どおりに動くということです。政権が移行することによって、一気に国民主体の政治に変換できるということです。
もはや日本人は欧米型民主主義ではなく、優れた指導者による哲人政治をこそ待っているといえるでしょう。
腐ったイチジク(自民・公明・官僚)は火にくべましょう。
騙されてはならない。
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コメント(2)
安全保障の問題は大いに議論していただきたい問題です。僕は個人的に日米同盟から、国連を中心とした安全保障に切り替えるべきだと思っている。安保理の常任理事国になって、自立していただきたいものです。
2006/11/10(金) 午前 2:46
ナオさんは、小沢一郎と同じ意見ですね。憲法との整合性を考えれば、立派な案だと思えます。
2006/11/10(金) 午後 0:38