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今やアキバは電気より「自販機珍缶」の街
「おでん缶」に端を発した、自動販売機などで売られる「自販機珍缶」商戦が、ヒートアップを続けている。新しいモノ好きが集まるオタク都市、東京・秋葉原で話題になり「ラーメン缶」の登場で人気爆発。ブームを仕掛けた電機店の自販機は「観光名所」にまでなった。最近も「パスタ缶」「担担麺(めん)缶」「山菜そば缶」やラーメンの「替え玉缶」まで新顔が次々参戦。多くのメーカーが参入し、数十種類の意外な缶が、ホットなバトルを繰り広げている。
週末の東京・秋葉原では、歩行者天国の路上でコスプレ女性2人が「ラーメン缶」を食べていた。雑貨店には「おでん缶」「ラーメン缶」の山。近くの自販機にも並んでいた。一見意外な食べ物が入った、自販機などで売られる「珍缶」が今、秋葉原を中心にホットな商戦を繰り広げている。
珍缶ブームは「おでん缶」から始まった。85年に天狗缶詰(名古屋市)が元祖「おでん缶」を発売。95年に秋葉原地区で初めて、チチブ電機が店の自販機におでん缶を入れた。05年から本格化した再開発で秋葉原が注目され、チチブ電機のおでん缶が「アキバ名物」として有名に。ほかのメーカーも独自の「おでん缶」を売り出す一方、秋葉原や全国の自販機、店に広がり、人気が爆発した流れだ。
「自販機珍缶ブーム」の仕掛け人といわれるチチブ電機の小菅英臣会長は「05年につくばエクスプレスが開通し、大型ビルや量販店が次々できたことでアキバが注目された。その中で、うちの自販機のおでん缶も『アキバ名物』としてメディアやネットで取り上げられ、新しいモノを取り入れようというアキバの気質もあってうちが、自販機に行列ができるほどの『観光名所』になった。今や『缶』はアキバ文化として定着したんです」と分析した。
天狗缶詰によると、おでん缶(税込み270円程度)は06年、3種類合わせて年間約600万本売れた。同社では「秋葉原が一番売れる場所です」と話す。
昨年には、おでん缶に続く強力商品「ラーメン缶」が登場。東京の人気ラーメン店「麺屋武蔵」山田雄店主が発案。食品プロデュース会社「UMAI」(東京都)と自販機メーカー「フジタカ」(京都府)が店主とともに共同開発し、07年4月から「札幌らーめん缶」(税込み315円程度)シリーズを発売したところヒット。シリーズ合計で昨年12月までに約295万缶を売り、UMAIでは「もの珍しさと、監修が山田店主であること」などが人気の原因と分析している。
その後同夏ごろからは、富士見食品(大分県)や、はかた寿賀や(福岡市)が続々ラーメン缶戦線に参戦。はかた寿賀やは個性的な「博多とんこつラーメン缶」で勝負し、「替え玉缶」も作り、これまで約20万缶売った。UMAIは「うどん缶」も発売した。
最近“デビュー”した人気缶は「パスタ缶」。天狗缶詰は同12月から「ボンゴレ・ビアンコ」など3種類を、富士見食品も同月から「洋風きのこ」など3種類を発売した。はかた寿賀やも同月「担担麺缶」で驚かせ、寿フーズは同11月「山菜そば缶」を投入。「珍缶」商戦には現在、主要メーカーだけで10社前後が参入し、自販機以外に全国の小売店にも拡大。アイデア勝負合戦となっている。
チチブ電機では現在、17種類の缶を11台の自販機および店内で販売。1日数百缶以上を売り、自販機だけで、昨年1年間で約5000万円の売り上げをたたき出した。小菅会長は「新しい缶で人気なのは天狗缶詰のパスタ缶。100缶以上売れる日もある。でも一番売れてるのは今でもおでん缶です」と明かした。
多くのメーカーでは今後も新「珍缶」を仕掛ける意向が強く、はかた寿賀やでは「うちしか作れないような『驚きの缶』も開発中です」。今後も想定外の缶が登場しそうだ。【広部玄】
[2008年2月3日8時43分 紙面から]
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