社説(2008年2月3日朝刊)
[日教組集会拒否]
ホテル側の判断は疑問
全国から約三千人が参加して二―四日の日程で開かれる日本教職員組合の「教育研究全国集会」全体会議が中止になった。
会場となっていた東京都港区にあるグランドプリンスホテル新高輪が、右翼団体による妨害行為などを理由に会場使用の契約を一方的に破棄したためだ。
テーマ別の分科会は会場を分散して開かれている。だが、基調報告や記念講演が行われる全体会議は約二千人が入れる大会場が必要であり、すぐには探せなかったという。
ホテル側は「『お客さまの安全・安心』を企業理念、規範、行動指針の第一に掲げており、今回の姿勢はそれに沿ったもの」とコメントしている。
しかし、日教組がホテル側と会場の使用契約を交わしたのは昨年五月のことだ。
それを十一月になって、突然契約破棄したのはホテル側である。
日教組の申し立てで今年一月、東京地裁は会場使用を認める仮処分をし、東京高裁もホテルが行った抗告を棄却している。
つまり、司法は「会場として貸しても問題はない」という判断を示したとみていい。
日教組大会は、これまでにも会場使用を断られ裁判になったことが四回ある。
会場が公共施設で、裁判所も使用を認定したため開催にこぎ着けられたが、全体会議が中止されたのは初めてのことだ。
確かに日教組大会には毎回、右翼団体が街宣車を動員し先生方の討論や報告会などを妨害してきた経緯がある。
これに対し、警察側も警備態勢を強化し交通規制を徹底するなどでトラブルを避けてきたはずだ。
東京高裁が判断したのも、日教組は警察庁や警視庁に警備を要請しており、打ち合わせをすれば混乱は防げるということからだろう。
憲法二一条は集会、結社及び言論、出版を含めた表現の自由を保障している。今回の場合、集会の自由は会場が確保されてはじめて認められるのであり、ホテル側の対応には疑問が残る。
会場としての使用拒否は企業の社会的責任にももとり、社会の理解を得ることはできないのではないか。そう思えてならない。
私たちの社会に主義主張の違いがあるのは当然である。それでも表現や集会の自由が守られなければならないのは、それが民主主義社会の根幹をなしているからである。
そのことをホテル側にはしっかりと考えてもらいたい。
社説(2008年2月3日朝刊)
[ブランド開発]
品質と供給態勢が鍵だ
商品開発に力を入れ「地産地消」はもとより、全国展開に向けてブランド化を目指す動きが活発だ。
今帰仁ブランド協同組合と同村商工会が、国際見本市「第六十五回東京インターナショナルギフトショー」に出展する「バニラアイス黒糖蜜かけ」などもその流れと言っていい。
見本市には文字通り世界中の商品が展示される。国内各地からも独自のアイデアで生み出されたブランド商品が並ぶに違いない。
「今帰仁匠の品」というロゴマークを付けた商品はほかに「マンゴージャム」「今帰仁アグーもち米シュウマイ」など五商品あるという。
今帰仁ブランドプロジェクトの関係者は「決してローカルでは収まらない」と話すが、三万人ものバイヤーが集まる見本市である。評価とともに厳しい意見が聞こえてくる可能性も高い。
ブランドとして確立するためのステップとして、この機会を有効に生かしてもらいたい。
言うまでもないが、ブランドは消費者にとって「信頼の印」だ。似た商品と区別する「識別の印」でもある。とはいえ、ブランド化したからすぐに売れるというものではない。
農産物が原材料であれば、まず安定的に生産できるのかどうか。原材料はもちろん加工した商品の品質にこだわることも重要だろう。その上で、安定供給していけるのかどうか。
これまでも沖縄の気候を生かしたインゲンやカボチャなど、本土市場では「沖縄ブランド」として期待されたのに安定的に生産、供給できず海外産に取って代わられたケースがある。
レッテルがはがれるのは簡単だ。生産者はそのことを肝に銘じ、全力で商品開発に取り組んでもらいたい。
モズクや紅型、ウコン、ゴーヤー、パイナップル、紅イモなどに地域名を記しブランド化を試みる産地は多い。南国沖縄の可能性をブランド開発で模索する企業もまた少なくはない。
全国展開を図るためにもまず足元を固め、市場の信頼を得たいものだ。
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