2007年11月26日 (月)スタジオパーク 「オープン・ポストで第2の鉄腕アトム?」
(遠藤キャスター)
クール・ジャパンの代表と言えばアニメやマンガ。
この二つは世界で高く評価されています。
そのアニメとマンガの世界でオープン・ポストという試みが始まりました。
その取り組みの意味や課題について聞きます。
Q1:オープン・ポストとは、どういうものですか?
A1:インターネットを使ってアニメなど作品発表の場を提供する試みです。
経済産業省から委託を受けた日本動画協会と映像産業振興機構が、今月から始めたプロジェクトです。
そのホームページです。
目的はアニメーターやクリエーターなど人材発掘と育成です。
面白いのは日本が世界に誇る漫画家・手塚治虫さんの作品を使って二次創作をして、それを投稿できるという点にあります。
つまり、手塚ワールドのヒーローたち、鉄腕アトムやリボンの騎士のサファイヤ姫、ジャングル大帝のレオといった登場人物やシナリオ、舞台設定などを自由にアレンジして、まったく違った表現や物語を作るとか、未完成に終った作品「ネオ・ファウスト」や「火の鳥」の続編を作ることも出来るのです。
Q2:どんな作品が来ているのですか?
A2:今のところ、応募はイラストやアニメなど60点程度です。
イラストでは例えば「アトム今昔物語」というテーマでアトムが現代のロボットに出会うシーン。
アトムの中の構造が見えるイラスト、鉄腕アトムとレオを組み合わせて「休日のアトムがレオを愛犬のように可愛がっている」シーン。
こちらは、黒いマントがトレードマークのドン・ドラキュラとブラックジャックを対面させたイラストなど様々です。
Q3:動画もありますか?
A3:はい、あります。
手塚作品に登場するキャラクター「ひょうたんつぎ」が、アトムをバックにダンスをするオリジナル・アニメです。
手塚作品からイメージされた新しい創作あるいはヒントを生み出そうというものです。
そのために今回、手塚治虫さんがテーマ作家として選ばれました。
ご存知のように、手塚さんは日本初の国産アニメ「鉄腕アトム」の生みの親、多くの漫画家やアニメーター、作品に影響を与えた漫画家です。
その手塚さんの作品を使って新しい才能を発掘したいというのが、オープン・ポストの狙いです。
Q4:手塚作品を自由に使って良いということですが、著作権はどうなっているのですか?
A4:今回の試みは画期的だと思います。
と言いますのは、手塚治虫さんの作品を自由に使っても良い、つまり著作権を一時的に開放して二次創作を募集しようということです。
二次創作とは、他人が著作権で保護されている作品を下敷きにして創作することです。
一般的に著作権で保護されている著作物を無断で使うことは違法です。
ところが、オープン・ポストでは手塚作品の著作権を一時的に開放したことが面白いことです。
著作権をがっちり保護しながらビジネス展開をするアニメやマンガ業界にとって、期間限定とは言え著作権を開放するのは異例のことです。
ただし、今回それが出来る期間は、来年3月いっぱいまでで、オープン・ポストに応募した作品に限られています。
誰でも応募できます。
創作意欲はあるけれど、発表する場がない人たちが対象です。
第一線のアニメーターやクリエーターが思いも付かない作品やキャラクターが生まれるのかどうかが期待されています。
Q5:応募者には、どんなメリットがあるのですか?
A5:おもちゃメーカーや映像会社、広告代理店などが作品を見て、質の高い作品については、アニメ化やおもちゃ、文房具など商品として検討されることになっています。
Q6:二次創作と言っても、模倣するということじゃないですか?
A6:手塚さん自身、ディズニーのバンビを描くなど二次創作を行っていました。
重要なことは、新しいものは、先人の作ったものの積み重ねの上に出来上がっていくという点です。
そもそも日本のマンガは他人の作品を模倣する、二次創作することで発展してきました。
それは著作権法からみるとグレーゾーンとされてきました。
それを、オープン・ポストは一定期間ですけれども、著作権者が堂々と著作権の開放を公認したことに意味があるのです。
著作権でがんじがらめの創作物を二次創作の可能性を含めてどう活用していくのか、そこから傑作が生まれるのか、その意味でオープンポストは実験的な試みだと思います。
Q7:オープン・ポストの課題は何でしょうか?
A7:日本動画協会は、手ごたえがあれば来年4月以降も続けたいと言っています。
しかし、今月から始まったにも関わらず応募数が少ないのは、明らかに宣伝不足だと思いますし、ポストという入れ物だけ作っても中身が問題です。
新しい才能は「模倣すること」を入り口にして生まれますが、その芽を摘まないようにという思いの反面、二次創作する人には「模倣すること、作り変えること」がどういうことなのか考えて欲しいと思います。
そうでなければ、元の創作者のイメージを損なう、傷つけるような二次創作がインターネットに出回る、ということにもなっていくと思います。
そうならないように、今回の試みが新たな創作に結びついていくのかどうか。
その中から世界に向かう日本のアニメやマンガ、そして若く才能ある創作者が育っていって欲しいと思います。
投稿者:扇谷 勉 | 投稿時間:14:01