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2008年01月26日

review:いしかわかずはる個展「Dear friends,」《1/10、1/24》

いしかわかずはる個展「Dear friends,」
YUKARI ART CONTEMPORARY
東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階
1/10(木)〜2/9(土)日月休・火水事前予約制
12:00〜20:00
いしかわかずはる0110DM.jpg

Kazuharu Ishikawa solo exhibition "Dear friends,"
YUKARI ART CONTEMPORARY
2-5-2-1F,Takaban,Meguro-ku,Tokyo
1/10(Thu)-2/9(Sat) closed on Sunday and Monday,Tuesday and Wednesday:appointment only
12:00-20:00
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和みの線のスペシャリスト。



YUKARI ART CONTEMPORARYでの、いしかわかずはるさんの個展です。
これまでもギャラリーエスノグループ展などで作品は拝見していて、そのキャッチーさには心底和やかな気分が広がって心地よかったのですが、個展ではその個性がさらに発揮されていて、楽しい空間が満ちています。


入口すぐ。
なんともかわいいちっちゃな作品がお出迎え。


いしかわかずはる21



福助か!Σ( ̄口 ̄;)
昭和時代に生まれた福助の子供の頃か!Σ( ̄口 ̄;)



・・・・



なんだその想像上のディティール設定は!Σ( ̄口 ̄;)




も、もとい。



いしかわさんの作品は、線を用いてさまざまな情景が引き出されています。
普段はノートを持ち歩き、そこにスケッチを重ねられるのが日常となっているとのことで。
それをキャンバスに現すとき、絵の具など何らかの画材線を「描く」よりももっと線の均一さをピュアにで保たせた状態にするため、糸を用いることにされた、というお話を伺い、おおいに膝を打った次第で。

均一に撚られた毛糸が、その素材のあたたかみをそのままに、ゆったりと人々の表情や仕草をシンプルに引き出す線を辿り、ときにくるりと渦を巻いてちいさな色面を作り出しながら、なんとも和やかな風景を生み出しています。

たったひとつの色の毛糸が画面の上に紡いでいった絵。
キャンバスの下地と毛糸とのふたつの色しかない、しかも背景と線しか画面の上には存在しないのに、そうやって描き出された人々のやわらかな表情から、見えていない光景や時間の流れ、さらにはそこから聞こえる音までも、イメージとして浮かんできます。


いしかわかずはる13 いしかわかずはる14

いしかわかずはる12



シンプルだからこそ、画面の空間の活かされ方も絶妙です。
さまざまな大きさのキャンバスに、本来そのサイズに収められる情報はきっともっとたくさんあるはずで、しかしそこからおそらく自然に視線が向く場所の、さらにそのラインを辿って現すだけで、その場面のすべてを現しているかのような。
それが、構図的にもなんとも言い難い収まりのよさ、心地よさが滲み出ていて、嬉しいもどかしさが想像を緩やかに掻き立ててくれるのがまた堪らなく感じられます。

そして、特に子供の表情は、その素朴さがさらに素朴に表現され、なのに決して可能な純粋が放つ危うさは微塵にも感じさせずに、ただキャッチーに、そこに溢れるほっこりとした小さな幸せが表現されているような印象を受けます。


いしかわかずはる17 いしかわかずはる16

いしかわかずはる15



キャンバスの作品は、用いられる糸によって、背景のクリーム色も微妙に異なっています。
そこに、いしかわさんの色への気遣いが感じられます。
その微妙な差異が、それぞれの糸の色を引き立てるだけでなく、色がもたらす季節感や場面のイメージを押し拡げているような気もしてきます。


いしかわかずはる19

いしかわかずはる20



ふたつの展示室のうちの奥のほうへ。
こちらには、キャンバスでなく、透明のパネルに糸が配された作品が並びます。
透明パネルと線、このふたつの素材の面白さがシンプルに活かされています。


いしかわかずはる01



キャンバスと同様に、空間を活かしつつ、照明が当てられることで白い壁に線の影が映り、期せずして二重の線の作品ができあがっています。
至近で眺めたときの細かい毛糸の繊維の表情と、それらが消されてシンプルな線となって壁に映り込む影とのコントラスト。


いしかわかずはる05 いしかわかずはる04

いしかわかずはる07 いしかわかずはる06


影では消えてしまっている、毛糸の微妙な繊維による素材的な「滲み」の存在をさらに強く意識させられるのも興味深いです。
また、白い糸を使った作品の、先に影が見える面白さも。


いしかわかずはる11 いしかわかずはる10

いしかわかずはる09 いしかわかずはる08



さまざまな角度で糸と影とのズレが変化し、実像と残像との関係が生み出されているようで。
近くで確かめると、影を透明パネルの裏側が反射してもうひとつの薄い影を映し出していたりして、いくつもの像のかさなりがそこに見受けられます。
いろんな想像が湧いてくると同時に、このアプローチの可能性も広がっていくように感じられます。


いしかわかずはる03

いしかわかずはる02



イラスト的な軽やかさ、シンプルさが魅力のクリエイションです。
どこまでもキャッチーで、エンターテイメント性に富んでいます。
いしかわさんの作品の楽しい要素としてもうひとつ忘れては行けないのが、タイトル。
作品ごとには添えられていないのですが、それぞれの作品のタイトルを確認しながら観たり、または作品を観てそのタイトルを当ててみるのもまた面白い!


このところ東京ではいつになく気温が低い日々が続いていますが、その冷えきった感覚をあたためてくれそうな展覧会です。
いろんな世代の人、特にこどもたちに観て楽しんでもらえると嬉しいなぁ、なんて思ったり。


いしかわかずはる18
posted by makuuchi at 10:48| Comment(0) | TrackBack(0) | review
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