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教研全体集会中止 法無視のホテルに疑問 '08/2/3

 きのうから東京で開幕した日教組の教育研究全国集会で、全体集会が中止に追い込まれた。会場のグランドプリンスホテル新高輪が、裁判所の仮処分決定に従わず、施設の使用を拒んだからだ。

 右翼団体による妨害行為の可能性があるというのが、一方的な契約破棄の理由である。他の宿泊客もいるホテルとはいえ、社会的に責任の重い大企業が司法判断を公然と無視していいのだろうか。結果的に、憲法が保障する「集会の自由」が損なわれたことからも、疑問が残る。

 日教組はホテルと昨年五月、会場の使用契約を交わした。ところが、十一月になってホテル側が契約の解除を通告。これを不服とした日教組の申し立てで東京地裁は今年一月、会場の使用を認める仮処分を決定した。さらにホテル側が、東京高裁に抗告したが棄却された。

 なぜ、ホテルはいったん会場を引き受けたのに拒否に転じたか。言い分はこうだ。契約当初は十分な説明を受けておらず、周辺で多数の右翼団体が抗議行動を繰り広げることが十月ごろになって分かった。「宿泊客に影響を与える恐れがあり、施設を貸せない」と判断したという。

 しかし、周辺の警備を十分にすれば、混乱は防げるはずだ。集会の妨害を狙う、度を越した示威行動は本来許されるべきではなく、それが拒否の理由にはあたらないだろう。施設使用を認めた東京高裁は「申し込み時点で多くの右翼が集まることは予測できたはず」と指摘している。

 会場問題では、大阪府泉佐野市の市民会館使用をめぐり、集会の自由を最大限尊重するよう求めた最高裁の判決もある。もちろん自治体が管理する施設のケースと、今回のような民間ホテルを同列に論じることはできない。ホテルにも憲法が保障する営業の自由があり、拒むことはできるからだ。

 ただ二千人規模の参加者が入る施設は都内でも限られる。体育館や武道館などの公共施設がほかに使われていたため、イベント会社を通じてホテルが会場に選ばれた経緯もあるようだ。会議などで不特定多数が利用するホテルは、公共的な性格を持つ施設と受け止められる面があるのも確かだろう。

 一九五一年に始まった教研集会の全体集会が中止されるのは初めてだ。他のホテルでもこうした例が続くようだと、言論の自由が危うくならないか心配だ。




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