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集会拒否 憲法の精神に反する

2月3日(日)

 日本教職員組合(日教組)が毎年開いている催しが中止に追い込まれた。東京で始まった教育研究全国集会のうちの一つ、全体集会である。

 会場に予定していたグランドプリンスホテル新高輪が使えなくなったからだ。いったん受け入れたホテル側が、後から拒否した。教研集会で会場使用をめぐるトラブルはこれまでもあった。中止は初めてのことだ。

 ホテルにも事情や言い分はあるのだろうが、今回の対応にはいくつか問題点がある。見過ごすわけにはいかない。

 まず、司法判断を突っぱねたことだ。ホテルは裁判所の仮処分決定に従わなかった。

 日教組とホテルが会場使用契約を交わしたのは昨年5月だ。その後11月に、ホテルは右翼団体による妨害行為の可能性などを理由に契約破棄を通告した。

 これに対し、日教組が申し立て、東京地裁は会場使用を認める仮処分を決めた。東京高裁も同じく使用を認めている。

 疑問なのは、ホテルの基本的な姿勢だ。なぜ契約が成立して半年もたって、集会が近づいてから解約を言い出したのか。やりとりを聞く限り、日教組側の落ち度はいまのところないようだ。ホテルは、利用者の納得がいくように、背景を含めてきちんと説明してもらいたい。

 企業も社会の一員である。法治国家の下、ルールを守らなければならないのは当然のことだ。イメージダウンは避けられない。

 重要になるのが憲法との兼ね合いだ。使用拒否は、憲法が保障する集会の自由にかかわる。

 右翼団体はこれまで、日教組が大規模な集会を開くたびに街宣車を出すといったやり方で妨害してきた。会場管理者や周辺住民はそれに悩まされながらも、警察などの助けを得て集会を実現してきた。

 今回のホテル側の対応は、これまでのそうした努力にも水を差す。利用者の安全、安心を考えるなら、警察や警備会社と十分連携し、混乱が起きないように努力すべきだった。ほかへの影響が心配だ。

 今回は教職員組合が対象だった。これが例えば、政府や政党ならばどうか。右翼団体が妨害する恐れがあれば、使わせないのか。ホテルの対応が異なるようなら、弁明しても通らない。国民の視線は厳しいことを自覚してもらいたい。

 いちばん責められるべきは、これまで集会を妨害してきた右翼団体である。忘れてはならない。

 全体集会は中止されたものの、分科会は開かれている。会合を最後まで無事に進めてほしい。