中国製冷凍ギョーザの中毒事件で、厚生労働省は2日、全国の保健所に届け出られた健康被害状況を発表した。既に有機リン系殺虫剤「メタミドホス」中毒と判定された10人のほかに、中国製冷凍食品を食べたことで健康被害が疑われる人は959人。入院した8人を含め296人が医療機関で診察を受けた。新たに有機リン系中毒特有の臨床症状が確認された例はなく、厚労省はこの中毒による被害者が増える恐れは少ないとみている。
調査は中国製の冷凍食品を食べた後、下痢や嘔吐(おうと)などの消化器症状や、めまいやけいれんなどの神経症状を保健所や自治体に届け出たり、相談した人を集計。未報告の徳島県を除き46都道府県の1702人が被害を訴えたが、うち733人は食べた物が不明だったり、感染性胃腸炎が疑われるなどの理由で、中毒とは無関係と判断した。
診察を受けたのは、中毒と判定された10人と合わせて306人。入院したのは大分・沖縄各2人、山形・千葉・愛知・鳥取各2人。鳥取県の80代女性は1月29日、問題のギョーザを製造した「天洋食品」(中国河北省)の「小籠包」(ショウロンポウ)を食べて下痢や嘔吐をし、けいれんもあったため入院中。千葉県の患者は軽症だったが、本人の希望で検査入院している。いずれも有機リン系中毒を疑わせる症例はなかった。
静岡県では、軽症の患者を医師が有機リン系中毒と診断したが、血液検査で中毒でないことが判明した。
有機リン系中毒と判定された人は現在、千葉市、千葉県市川市、兵庫県の3家族計10人。厚労省輸入食品安全対策室は「今後、輸入業者が回収した中国産冷凍食品を分析し、新たな被害者が判明する可能性はある。しかし、急性症状が出たり大量に被害者が増えるという恐れは極めて低い」と話している。【北川仁士、吉井理記】
毎日新聞 2008年2月2日 21時12分 (最終更新時間 2月3日 0時47分)