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2008年2月3日

◎「副校長」導入へ 校長の責任はむしろ重くなる

 学校教育法改正で新年度から設置できる「副校長」などの新職種をめぐり、石川県教委 が小中高校での一部試行を決めたのに対し、富山県教委は設置を見送る方針を固めた。新たな職種は学校運営を活性化させる狙いだが、任意設置となるため都道府県で対応が分かれ、制度の受け止め方も温度差が生じている状況である。

 新職種は副校長、主幹教諭、指導教諭で、鍋のふたのつまみ程度しか管理職がいない、 いわゆる「鍋ぶた型」の学校組織を階層型に近づけるものである。副校長を置くことで校長の負担を減らす意図もあるが、学校がより組織化されれば、組織を動かすトップの責任はむしろ重くなる。導入するからには、校長のリーダーシップのもとで学校組織をフルに機能させ、児童、生徒の教育指導の充実につなげてほしい。

 法改正は安倍内閣時代の昨年六月に成立した教育関連三法の一つである。校長と教頭の 間に置かれる副校長は、学校経営を担う立場を明確化し、従来の教頭より校長に近いイメージとなる。主幹教諭は校務に一定の責任を担い、指導教諭は他の教員の指導、助言を行う。政府は主幹教諭を設置する場合の補充教員として千人を増員する方針を示している。

 石川県教委は、副校長については複数の教頭を配置している県立高や大規模な小中学校 の数校程度で試行する方針で、主幹教諭や指導教諭も導入の可能性を検討している。富山県教委が導入を見送ったのは、教員の選考や学校の選定、待遇など課題が多いと判断したためで、他県の状況を見守る慎重な構えである。

 新職種については教組の一部などから管理体制の強化、組織の風通しが悪くなるとの批 判も出ている。確かに、管理層が厚くなれば屋上屋を架す状態となって組織が硬直化したり、責任のもたれ合いも懸念される。そうならないためにも、校長には組織を上手に動かす能力が一層求められることになる。

 校長は学校が直面する課題を把握し、その解決に向け、どのように取り組むかを示すの が大事な役目である。トップが指導力を発揮しやすい環境を整えることに異論はない。新職種の活用はまだ手探りの段階だが、仕事ぶりや能力に応じた給与体系の構築も今後の課題となろう。

◎外国人労働者 医療での受け入れ緩和を

 政府は、エンジニアなど専門・技術職で就労を希望する外国人に対し、一定の日本語能 力があれば、実務経験年数を大幅に短縮するなど、在留要件を緩和する方向である。日本は他の先進国と比べて外国人労働者の受け入れ要件が厳しいとされ、それがかえって不法就労を増やしているとの指摘もあるだけに、就労条件の緩和は時代の流れであろう。

 専門・技術職だけでなく、医療現場でも看護師や介護士不足が深刻化しているが、一昨 年フィリピンとの経済連携協定で約千人の受け入れが決まった以外は、まだまだ門戸が閉ざされている。今後高まってくると予想されるアジア諸国などからの受け入れ枠拡大と合わせて、外国人に対して極めてハードルが高いとされる日本の医療現場の就労条件の緩和も視野に入れていきたい。

 外務、法務両省内では、エンジニア、語学学校講師、パイロットなどの専門・技術職で 、ある程度日本語能力がある外国人に対して、実務経験年数を「十年」から「五年」程度に短縮する案が浮上している。看護師や介護士は、こうした専門・技術職とは異なるが、現場での必要性という点で医療関係施設からの要請も高まっている。

 フィリピンは看護師不足を補う人材供給国として期待されているが、日本との経済連携 協定が同国国会で、いまだに批准されていないため、日本行きは足踏み状態と言われる。未批准の背景として日本の廃棄物処理問題があるのだが、看護師関連では、他の先進国に比べ待遇が悪く、二重三重の厳しい条件をクリアしなければ日本人と同じ地位で働けないことへの不満があるとも言われる。協定による就労プロセスが動き出してからの課題になるだろうが、就労要件緩和の流れの中で、改善の余地がないか検討してもらいたい。

 もちろん、日本の生活風土の中で医療実務に携わるだけに、まずは国内で人材確保に努 めるのが原則であろう。しかし、新卒看護師の十二人に一人が、過酷な労働を敬遠して一年以内に退職しているとの調査もある。外国人の看護師や介護士が実務を分担することで、労働環境の改善につながれば、国内の看護師の就労促進にも結びつくだろう。


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