正月に飾っていた松竹梅の寄せ植えを露地におろした。園芸店で買ったが、元気がなくなったので、個々の株を分けて植え付けた。
寄せ植えには、幸福と長寿を重ねた縁起のよい名前のフクジュソウも添えられていた。鉢に押し込まれた形になっていて、植物にとっては苦痛だったろう。それぞれを鉢に植え替えることも考えたが、水やりなど手間がかかる。ゆとりのない生活だけにあきらめた。
盆栽は小宇宙を演出する。手入れさえよければ、限られた空間で百年を超えて生き続け、大自然の風格を漂わす。かつてはお年寄りが縁側で盆栽作りをしている姿を見た。のんびりとした風景は視界から消え、隠居という言葉も死語化したようだ。
何年か前に庭の落葉樹の下に植えたフクジュソウは根付いた。今ではわが家の住人だ。全く放置しているのに、植え付けた場所が適していれば毎年花を咲かせ、季節を伝えてくれる。律義なものである。
フクジュソウは、元日草とも呼ばれるが、庭に出てみると、まだつぼみ。開花はこれからが本番となる。日光が当たると最大限受け止めようと黄色の花を精いっぱい開く。最初は一株しかなかったが、十株以上に増えた。寄り添うように芽を出している。
角川学芸出版編「俳句歳時記」に「福寿草母なる子なる蕾かな=山田弘子」が載っていた。実際、仲良し家族を連想する。