中国製冷凍ギョーザによる中毒事件は、兵庫県高砂市の事件のパッケージに穴があったことが分かり、有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が、人為的に投入された可能性が出てきた。どの場所でどういう経緯で混入したのか、「穴」はどこで開いたのか。日中で事件に対する怒りと困惑が広がった。
◇中国市民は
問題のギョーザを製造していた中国河北省の「天洋食品」は、約630人が午前8時から午後6時まで働く。手作業部はすべて手袋着用だ。しかし、最近雇用を巡って労働争議があったばかりといわれ、「何があっても不思議ではない」とうわさされる。
工場近くの小売店店主の閻華さん(34)は「中国人はやさしいから、故意に日本人を狙って薬物を入れるなんてことはあり得ない」と言う。ただ、「3、4年前に天津で、牛乳工場の従業員が解雇を恨んで乳製品に毒物を混入して食中毒被害が出る事件があった」と話す。
また、北京在住で日系企業に勤める金美花さん(26)は「2つの可能性がある。日本で開けられたのなら、今夏の北京五輪を支持しない日本人が中国のイメージを悪くするためにやったのだと思う。もう一つの可能性は冷凍食品メーカー間の競争が激しいため、食品業界関係者がやったのではないか」と自説を述べた。
◇輸送、管理は
輸入元の「ジェイティフーズ」(東京都品川区)の親会社、日本たばこ産業IR広報部は「袋は穴が開きにくい材質が使われており、製造段階で3ミリもの穴が開くのは考えにくい」と驚く。「万が一、何らかの事故で穴が開いたとしても、従業員が事故そのものに気づくはず。また穴が出荷まで見逃されるとは思えない」と語る。
流通段階での事故の可能性についても「段ボールを2階から落とすぐらいの衝撃なら分からないが、それも考えにくい」と話した。
千葉県の2事件の流通・販売にかかわる日本生活協同組合連合会職員は「配送過程で針を刺すには段ボールから商品を取り出す必要がある。段ボールが開いていたり、テープが張り替えられていたら、異常に気づく」と話す。「冷凍倉庫に保管するので、外部からは簡単に倉庫に入れない。国内の流通過程で針を刺すのは難しいのでは」と首をかしげる。
◇日本の店頭で
母娘が中毒になった商品が販売されていたコープ花見川店(千葉市花見川区)の川上保史店長は「穴が事実だとすれば消費者の命を脅かす殺人行為だ。食の信頼を根底から揺るがす結果を生み、強い憤りを感じる」と怒る。市川市の女性と子ども4人が中毒になった製品があったコープ市川店の後藤聡店長は「何を信じていいか分からないというのが、今のお客様の心境だと思う。国や関係機関に一日も早く原因究明をしてもらい、安心して買い物ができるような環境を作ってほしい」と話した。
◇「穴に気づいていたら、食べなかった」
兵庫県高砂市の事件で冷凍ギョーザを食べて妻(47)、次男(18)とともに入院した造園業の男性(51)は「袋に穴が開いていたとは……。もし気づいていたら、食べていなかった」とショックを隠せない。先月5日に中毒になり、まだ体に力が入らず仕事を休んでいる。「今日、近所を歩いたら頭がくらくらした。息子もまだ両手がしびれている」。だが仕事がたまっており、週明けから職場に復帰するという。
毎日新聞 2008年2月1日 22時39分 (最終更新時間 2月1日 22時44分)