中国毒餃子問題について。
昨日1月31日、中国の品質管理部門である質検総局(国家質量監督検験検疫総局)が餃子の製造元である河北省の天洋食品(河北省食品輸出入集団天洋食品)に立ち入り検査を行い、同日午後にその結果が記者会見で発表されました。それに関する報道が出揃ったので並べて眺めてみました。
前回のエントリーで私は、
中国側がさらに伝家の宝刀、「日本のメディアが騒ぎすぎ」を抜くかどうか注目しましょう。
と書きましたが、流れをみているとその可能性は高まりつつあるように思えます。関連記事に目を通した私の感想は、
(1)中国当局は早くも捏造を開始。
(2)日本のマスコミの多くがそれに足並みを揃えた。
(3)中国側はこれを日中間だけの問題に限定したい。
(4)限定した上で、毒餃子があくまでも「シロ」だといい続ける構え。
(5)さらに「これを政治問題化するのはおかしい」と問題点をすり替える。
(6)一方では対外的に「中国食品は安全」キャンペーンを展開するかも。
……というゲームプランを中国側はすでに固めているな、といったところです。「日本のメディアが騒ぎ過ぎ」はたぶん(5)(6)の段階で使われる可能性があると思います。
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日本のマスコミには「中国当局、異例の対応」なんて表現が目につきます。この問題をスルーしたりガセネタ扱いすることなく、質検総局に仕事をさせた上ですぐ記者会見を開かせた。誠意があるではないか。……といったところでしょうか。
勘違いしちゃいけません。
私のみるところ、中国当局の素早い対応は、これを契機に中国食品の安全問題が国際的に再認識され、貿易はもとより、北京五輪への風評被害を避けたいという思惑があるからでしょう。このあたりは私も日本のマスコミと同じ考えです。
ただし、その先は違います。中国は即応することに2つの狙いがあったと私は思うのです。第一には、「即応」することで「中国側の誠意ある対応」を対外的にアピールするということ。普通に考えてもそうなるでしょう。
しかし重要なのは第二点です。即応することで欧米各国が本格的に動揺する以前に、この問題を日中両国だけの問題に限定することです。そのあとは、
●製品はシロ。
●毒餃子とは事実無根のないいいがかり。
●日本のマスコミが騒ぎ過ぎる。
●日本政府の姿勢によからぬ政治的企図を感じる。
という形で一方的に押しまくって終了。相手が日本だけなら押し通すことが可能だと中国は踏んでいるでしょう。いま日本は中国にとって憎悪すべき小泉政権でもなく、常に警戒を怠れない安倍政権でもないからです。
何といっても中国にとって我を通しやすい相手ですから。「相手の嫌がることをする必要はない」と外交カードになり得るかも知れない靖国神社問題について、在任中は参拝しないことを就任早々に明言してくれた福田政権。昨年末の首相訪中でもそのことが改めて明らかになりましたが、中国側にしてみれば実に扱いやすいのです。
北京五輪まであと半年ちょっとという時期に、国際社会で無用に混乱を広げ、中国食品についていよいよネガティブなイメージを強めることになる「餃子は毒入りでした」なんて「クロ認定」を中国が行うとは私にはまず考えられません。「シロ」で通す以上、通しやすい環境を整えるのが当たり前。だから即応して問題を日中間だけに絞り込んだのだと思います。……これが、
(3)中国側はこれを日中間だけの問題に限定したい。
(4)限定した上で、毒餃子があくまでも「シロ」だといい続ける構え。
ということになります。まあ実のところ(4)については現時点では結論が出ていませんけど、どうであれ中国側は断固「シロ」で押し通すことになると思います。
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さて、
(1)中国当局は早くも捏造を開始。
というのは、質検総局の記者会見を報じた新華社電で読みとることができます。
●「質検総局HP」(新華網 2008/01/31)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2008-01/31/content_7535106.htm
もう日本語になっていますのでこちらをどうぞ。
●日本向け冷凍餃子からメタミドホスは検出されず(人民網日本語版 2008/02/01/10:30)
http://j.peopledaily.com.cn/2008/02/01/jp20080201_83391.html
国家質量監督検験検疫総局(「質検総局」、品質検査当局)は31日午後、記者会見を開き、日本に輸出された冷凍餃子による食中毒事件について、同日早朝までの調査結果を発表した。河北食品輸出入集団の天洋食品が製造し、日本に輸出した豚肉・白菜入り餃子の在庫と使用した原料を検査した結果、いずれもメタミドホスは検出されず、生産・加工記録にも問題はなかった。新華社が伝えた。同社の商品はすべて日本向けで、中国国内や他の国々では販売されていない。(中略)
王局長は「輸出食品の安全を確保するため、また高度に責任ある姿勢によって、国家質検総局は日本向けのすべての商品をただちに回収するよう同社に指示するとともに、河北省の公安部門に調査を依頼した。また、近日中に専門家を日本に派遣し、日本側と合同調査を行う」と述べた。
今回の事件に関連した中国企業はすでに30年の歴史を持つ登録輸出企業で、整った生産設備と管理体制を備え、従業員への定期研修も実施しており、同社の商品は長年安定した品質を保っている。同社の商品はすべて日本向けで、中国国内や他の国々では販売されていない。(編集NA)
隠したり嘘ついたりしている部分が色々あるのかも知れませんが、それは私にはわかりません。唯一いえることは、文末の一節、
「同社の商品はすべて日本向けで、中国国内や他の国々では販売されていない」
が嘘だということです。だって現に香港で堂々と販売されていましたから。それが今回の事件を受けて、商品撤去が始まっています。以下は今朝(2月1日)の香港各紙の報道から。
「香港の崇光(元そごう)、西田(元西友)、Three SixtyとAPITAなどはみな同じブランドの餃子3品目を売り場から撤去した」(蘋果日報)
「香港では崇光、西田、Three Sixty、APITAのスーパー4社が問題のある疑いがあるブランドの餃子を販売しているが、すでにこの餃子、さらに同じブランドのロールキャベツ2品目を全面販売停止にしたうえ、商品を卸売業者へと返品した」(明報)
「この餃子を販売していたスーパーは崇光、西田、APITA、Three Sixtyの4社。香港食物安全センターによると、これら各社は同じブランドの食品3品目を販売していたが、すでに全てを卸売業者に返品した」(東方日報)
●『蘋果日報』(2008/02/01)
http://www1.appledaily.atnext.com
●『明報』(2008/02/01)
http://hk.news.yahoo.com/080131/12/2o87r.html
●『東方日報』(2008/02/01)
http://orientaldaily.on.cc/new/new_c06cnt.html?pubdate=20080132
嘘はいけませんねえ嘘は。「同社の商品はすべて日本向けで」というところに、中国当局が問題を日中両国間のみに限定したい思惑が垣間見えると思うのです。
もうひとつ証拠があります。質検総局の記者会見におけるやり取りと、新華社電に食い違いがあるというものです。やはり「同社の商品はすべて日本向け」という部分が焦点となっています。『産経新聞』北京特派員の福島香織記者による「記者ブログ」が同紙電子版「MSN産経ニュース」の国際面に出ていましたので、同ニュースサイトの記事として扱います。以下はその一部を引用したものです。
●食の安全学再び:毒ギョーザ事件、中国側の言いぶん、きいてみる?(MSN産経ニュース 2008/02/01/01:18)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080201/chn0802010118001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080201/chn0802010118001-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080201/chn0802010118001-n3.htm
■朝日新聞:二つ質問があります。例の企業の商品は中国国内でも売られていますか。あと2003年に例の企業は“緑色ルート“待遇(優良企業に与えられる品質検査免除の待遇)を与えられていたそうですが、具体的にどういう優遇ですか。もうひとつ、2003年以降、品質検査上の問題はなかったのですか。
■王:質問は3つですね。私の理解するところでは、河北省のこの企業は国内でも商品を販売しています。具体的な数量は急いで調査しているところです。我々は企業に対しすでに、生産停止、輸出検査検疫申告の停止、すべての産品の回収を命じています。これは国内商品も含んでいます。
■緑色ルート待遇ですが、これは我々が輸出検査検疫速度をアップするために事前に便宜をはかる優遇措置です。しかし検査の機会自体が少なくなるわけではありませんし、検査が厳格さが緩くなるわけでもありません。
嘘はいけませんねえ嘘は。
「河北省のこの企業は国内でも商品を販売しています。具体的な数量は急いで調査しているところです。我々は企業に対しすでに、生産停止、輸出検査検疫申告の停止、すべての産品の回収を命じています。これは国内商品も含んでいます」
という中国当局者の発言が全てですね。「中国国内」というのが香港だけなのか中国本土をも含めるのかは明らかではありませんが、前掲の新華社電のいう、
「同社の商品はすべて日本向けで」
というのが虚構であることはこれでわかります。……そして、
(2)日本のマスコミの多くがそれに足並みを揃えた。
という点ですが、これは故意なのか行数制限の都合上枝葉の部分を削ったのか、あるいは横着して新華社電をベースに記事を書いたのかはわかりません。わかりませんけど、結果的に新華社電=中国当局の言い分に足並みを揃える結果となっています。
●ギョーザ原料からは農薬検出せず 中国検疫総局(MSN産経ニュース 2008/01/31/19:56)
●中毒ギョーザ、「農薬検出せず」=日本に専門家派遣へ−中国(時事ドットコム 2008/01/31/20:57)
●サンプルから農薬検出せず 中国、検疫当局が製品検査(共同通信 2008/01/31/21:19)
●「農薬検出されず」中国側が会見、日本側と共同で調査へ(YOMIURI ONLINE 2008/01/31/21:25)
●中国警察が捜査 天洋食品 検査当局は製造停止命令(東京新聞朝刊 2008/02/01)
●中国国内で報道されず ギョーザ中毒「慎重に対応」(asahi.com 2008/02/01/01:02)
●中国製ギョーザ:中国「サンプルから農薬確認されず」(毎日jp 2008/02/01/01:05)
●ギョーザサンプルから農薬検出せず・中国外務省(NIKKEI NET 2008/02/01/12:50)
これらはあくまでも電子版の記事です。紙媒体ではどうなっているか確認していませんが、ここに並べた記事のうち、問題の餃子が中国国内でも販売されていると明記しているのは「毎日jp」だけです。
枝葉末節と思われる向きもあるかも知れませんが、
「同社の商品はすべて日本向けで」
という中国側の言い分が嘘であることは明らかになりました。とすると、問題の餃子は日本だけでなく、香港とマカオを含めた中国国内はもとより、他国に輸出されている可能性もあるのです。それを「すべて日本向け」で断ち切ろうとする中国側の姿勢には問題を日本だけに限定するという思惑があるように思います。
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それから、
(5)さらに「これを政治問題化するのはおかしい」と問題点をすり替える。
についてですが、これはもうそういう動きが出ています。
●商務部専門家:日本餃子事件を政治化する動きを防がなければならない(CCTV 2008/02/01/11:12)
http://news.cctv.com/world/20080201/102500.shtml
この記事の中で「商務部専門家」である唐淳風・同部研究院が、
「日本のメディアはちょっとしたことを騒ぎ立ててセンセーショナルなニュースに仕立て上げるのが好きだ。以前にも『中国の健康食品を食べた日本人が死亡』といった問題のあるニュースが流れたりもした」
などと語っています。外交部声明などオフィシャルな形ではありませんが、
「日本のメディアが騒ぎすぎ」
が早くも登場しているのです。この記事、元ネタは『人民日報』系の国際紙『環球時報』ですが、日本でもすでに紹介されていますね。
●「ギョーザ包囲攻撃」に不快感も、中国各紙が報道始める(YOMIURI ONLINE 2008/02/01/13:54)
最後になりますが、こういうニュースも出ていますね。
●天洋製輸入牛肉に微量の金属粉(YOMIURI ONLINE 2008/02/01/13:23)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080131-1068087/news/20080201-OYT1T00353.htm
中国製冷凍ギョーザの製造元「天洋食品」から食品商社「東海澱粉(でんぷん)」(静岡市)が輸入した加熱処理の牛肉に、微量の金属粉が混入していたことが31日、分かった。
健康被害の報告は現在のところないという。
同社は混入が見つかった昨年11月以降、輸入を中止し、三重県の食品メーカーへの納入もやめている。在庫約14トンは、残留農薬の有無を検査した上で、返品か廃棄かを決める。
事件はまだ明るみになったばかりですが、上述したように今後中国側は(1)〜(6)というゲームプランを揺るぎなく押し通してくることと私は思います。
しかし、今度ばかりは、安全・安心問題に人一倍敏感な日本国民、なかんずく主婦層をパニックに陥れた事の意味を、全く理解していないなあ。おそらく考え付きもしないんじゃないでしょうか?
で、中国政府が御託を並べれば並べる程、プラン通り押し通せば通すほど、どんどん退いていき「やっぱり中国産はダメ」の確信が深まるだけ(断言!w
あんまり日本国民をなめない方がいいと思うけどなあ。結果的に多くの中国食品公司が立ちゆかなくなり、解雇が続出、民工暴動頻発、五輪どころでは無くなる可能性を否定できない。ワクワクw
それから中国側はこの問題を日本限定にしようとしている肚だと私はみているので、欧米にもこの危機感を伝えていくアクションが必要だと思います。いま現在の日本の消費者が感じている脅威を欧米の消費者も同レベルで共有できれば、中国もゲームプランを変更せざるを得なくなるでしょう。
今日は兵庫で穴が開いていたと。
明日は千葉も穴が開くんじゃ・・・。
日中合作が始まったかな?
中国外交官「それはおめでとうございます。しかしながら貴国に海が ないようですが...海軍省などつくっても無用の長物になるのでは?」
オーストリア軍高官 「(皮肉な笑みを浮かべて)それを言うなら中国には質検総局(国家質量監督検験検疫総局)があるじゃないですか。」
電話が殺到、対応に追われているようで、通販で購入したいぐらいですが、、、少し様子を見たいと思います(^^;
http://www.asahi.com/national/update/0201/TKY200802010149.html
あれだけ自国内で「中毒死」を出していますから、「会社&当局嘘臭ぇ…」となってもおかしくはありません。
大雪で政府批判が増している時でもありますしね…
成り行きを見守りたいです。
これは破綻しだしそうですねえ。
中国製冷凍ギョーザ、韓国でも残留農薬検査を開始
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080201-OYT1T00576.htm?from=main1
内の女房なんかすぐに冷蔵庫の中の冷凍食品チェックして中国産はすべてゴミ箱行き細かい判断なんかしませんから
数日来、英字版メディアをチェックしておりました。
Straight Times と BBCが日本発で日本の大手紙の内容を載せておりました。Japan Times, Mainich Dailyでさえ、1面で報道していましたが、朝日は無視ですね。
ここまでくると、たいしたもんです。
「穴あき事件」以前は、確かに説明を求める声が高かったようですが、現在では「自作自演説」が郵政になりつつあるようですね…
http://comment.news.163.com/reply/post.jsp?type=null&board=news_guoji2_bbs&threadid=43G031QF0001121M&showdistrict=&pagex=1
奥様の態度は正しい!断言しますww
中国製品に関しては細かい判断は
全く不必要。
食品以外の製品でも信頼できるものが
ありますか。
命にかかわることになると女はぶれません。
この間の肝炎訴訟の原告、弁護士の顔ぶれが
見事に女性ばかりなのをみて甘くみると痛い目に
逢うぞと。やはりでしたね。
おっしゃるとおりある意味主婦を敵に廻すと
こわいですよ。口コミという強力な武器が
ありますからw
>日本の主婦は熱しやすい
そしてさめやすいのです。
さらにマスコミを動かしてまで大騒ぎはしませんから、プロからみれば非常に扱いやすいと思います。
マスコミが継続して報道するとは思えないので、主婦層が忘れてしまったところで、「中国産食品に問題なし」の調査結果が出されてお仕舞い、という筋書きじゃないのかな。
http://news.yahoo.com/s/ap/20080131/ap_on_re_as/china_tainted_products_11
今日は知人にコメントを求められましたが「共同通信配信を信じるな」とコメントしました。また検査結果も手法および結果の成分一覧が公開されていない以上、主張にしか過ぎません。
石家庄から北京は車で3時間かかりますね。分析と発表よくがんばった、感動したと猿芝居をほめてあげたいところです。
もちろん日本の消費者は許さないでしょう。ぬるい対応で福田首相はトドメを刺されて欲しいと切に願います。
政府が煽っているからだと思いますが、URLは違うものを貼ってしまったようです。
ですがやはり、穴あき報道があったもなお、「内心」は、
日本企業>>>>>>>中国当局発表
ではないかと思います。
企業批判、日本擁護の声は少なくないと感じます。
農協の産直が絶好調のようです。
全国売上高NO.1の和歌山の農協の産直ショップは、
2000年に開業して、2002年には、売上高13億円。
2007年には、売上高25億円を越えたらしい。
この毒餃子でまた売上げを伸ばしそうですね。
駐車場は京阪神からの車で一杯で止めるのに苦労するらしい。