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社説:死刑の情報 可能な限り開示が必要
昨年の鳩山邦夫法務大臣による「死刑執行の自動化」発言や執行された死刑囚の氏名と執行場所の公表を契機に、死刑に関する論議が注目されている。1日には昨年12月7日の死刑執行から2カ月弱で、新たに3人が執行された。
昨今、凶悪犯罪が続発し、死刑判決は増加の一途だ。藤里町連続児童殺害事件の畠山鈴香被告の公判で検察側は、死刑を求刑した。判決は3月19日に予定されている。
来年5月までに実施される裁判員裁判は、死刑など極刑も想定される凶悪な刑事事件が審理対象だ。裁判官と一緒に評議する市民の裁判員も、死刑に向き合わざるを得なくなる。
にもかかわらず、死刑にかかわる情報を知ることはあまりに少ないのではないか。死刑と執行の実情を十分に知らされないまま、裁判員が死刑を含む評議に加わることは妥当なのか。法務当局は死刑情報を可能な限り開示すべきである。
死刑は絞首刑により、確定から6カ月以内に執行すると定められている。しかし、その通り実施されることはないとされる。確定後も無実を訴えたり、何度も再審請求することもあり、未執行のまま長く拘置されることになるようだ。
今回の執行により、死刑場のある全国7拘置所に拘置中の死刑確定者は104人となった。執行には法相の署名が必要だが、「私は署名しない」と任期中に命令しなかった法相もいた。
鳩山法相の自動化発言は死刑制度への信頼が揺らぐことを危惧(きぐ)したものだろう。死刑判決が増えながら、一方では執行が滞る現実があるからだ。鳩山法相は執行した死刑囚の氏名などの初公表に転じたが、国民が求める情報開示からは程遠い。
2004年の内閣府の世論調査では、国民の8割強が死刑制度を支持している。被害者遺族の感情からすれば、命で償っても埋め切れないものがあろうが、死刑は凶悪犯罪の抑止力になっているとの見方もある。
しかし、この世論調査は、死刑情報がほとんど開示されない中でのものである。とりわけ、絞首刑の執行の実態は、拘置所の勤務経験者らによる刊行物でわずかに紹介されているにすぎない。大半の国民は情報に接することはないに等しい。
世界の大勢は死刑廃止の方向にあり、昨年は国連で死刑執行の停止が決議された。死刑制度を存置しているのは米国や中国、日本など少数派だ。韓国は10年以上前から死刑を執行していない。廃止論者は死刑の残虐性なども指摘する。
最初から死刑制度の存置と廃止の対極論に陥らず、まずは執行の実態を知ることから始める必要があるのではないか。そのためには、司法改革新時代にふさわしい情報開示が前提となる。その上で、死刑制度の論議を深めたいものだ。
裁判官の意識に首をひねらざるを得ない判決が先月18日、東京地裁であった。拘置所内の死刑場の図面を公開しない国に処分取り消しを求めた請求を棄却した。執行が妨害される恐れがあるなどの理由は驚くばかりだ。むしろ死刑の情報開示への契機にできたのではないか。
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