中国の不動産バブル陰る 背景に政府の投機抑制2008年01月30日12時22分 極端な値上がりが続いてきた中国の不動産市場に変調の兆しが出てきている。不動産価格は全国70都市の平均で前年同月比10%以上の上昇が続くが、深センや広州、北京など大都市の一部で上昇加速に歯止めがかかりつつある。中国政府の投機抑制策が効いてきた形で「不動産バブル」が転換点を迎えたとの見方も広がる。
「転換点が来ているという意見に同意する」 中国の大手不動産開発会社「万科」創業者で会長の王石氏は先月中旬の記者会見でこう語った。広東省深セン市、広州市の不動産市場についての意見を求められての回答だが、業界大手のトップ自らが「転換点」を認めたことで、不動産が「値上がりし過ぎている」との見方が広がった。 王氏は自らのブログで、同社が広州市の物件を、周辺の物件より10%安く発売して当日に完売したことを紹介。「転換点とは、値上がりから値下がりへの転換点ではなく、速い値上がりが理性的に調整する転換点のことだ」とし、「買うのは3、4年後でも遅くない」とまで述べた。 実際、極端な値上がりが続いた深セン市などでは、不動産価格の上昇スピードが落ちてきている。中国国家発展改革委員会の統計によると、深セン市の不動産価格は昨年、前年同月比で10%以上の上昇が続き、8月には20%を超えた。 だが、その後は12月まで4カ月連続で上昇率は縮小。広州市も10月以降は縮小傾向にあり、12月は両市ともに前月比ではマイナスに転じた。 北京市では、例えば、03年ごろに建った市中心部のマンションの場合、昨年1月に約110万元(約1700万円)だった広さ90平方メートルの2DKの部屋が、昨年夏には約155万元(約2300万円)と半年で4割上昇。市全体の上昇率も年初の9%前後から15%前後まで加速したが、昨年10月以降はほぼ横ばいが続く。売買件数も落ち込んでおり、中国メディアの報道によると、08年第1週は、前週と比べて北京市で約3割、深セン市で約4割減少したという。 「転換点」の背景となっているのは、中国政府の不動産投機抑制策だ。中国人民銀行(中央銀行)は昨年秋、中国銀行業監督管理委員会と連名で通知を出し、2軒目のマンションを購入する際に必要となる頭金を引き上げ、物件価格の4割以上を用意するよう求めた。その後も「窓口指導」などを通じて不動産向け融資の抑制に努めてきた。政府は「一部地域の不動産値上がりには明らかに非理性的な要因がある」(人民銀)とみて今後も抑制に努める方針で、値上がりし過ぎた物件は価格の調整が進むとの見方が出ている。 ■仲介業者の休業相次ぐ 「昨夏なら客が3人来れば、必ず1人は買ってくれた。今は10人来ても1人も買わずに帰ることもある」 北京市の不動産仲介会社に勤める女性(26)は、昨年秋以降の不動産市場の変調をこう語る。この女性の店舗は最近、売り場を2倍に拡張して人員も増やしたばかりだが「ここ数カ月で客の数は明らかに減った。投機目的の客が来なくなったのが響いている」。 仲介会社各社は不動産市場の活況に合わせて経営規模拡大を急いできたが、売買件数の減少で手数料収入が落ち込み、営業休止や店舗閉鎖が相次ぐ。 発端は「不動産バブル」の色彩が強まっていた深セン市。中国メディアの報道によると、昨年11月、同市で100店以上を展開する不動産仲介会社「中天置業」の経営者、蒋飛氏(33)が失跡する事件が起きた。 会社に1億7千万元(約25億円)の損失が残り、その一部は蒋氏が持ち去ったとみられている。上海などにも店舗網を広げていた「中天置業」は営業を休止した。 蒋氏は四川省の農村から深セン市へ出て、いくつかの仲介会社で働いた後、03年に独立。ゴルフ場の中の別荘に住み、高級外車を何台も所有。経済成長に乗った成功者の典型と見られていた。 蒋氏は「紙幣を刷るよりももっと早くカネを稼ぐ方法を見つけた」と豪語。顧客から預かった代金を流用したり、銀行から不正に融資を引き出したりして投機的な不動産取引に投入していたという。だが不動産市場の変調で資金繰りが行き詰まり、姿をくらました。 同じく深セン市の仲介会社「長河不動産」も先月、約20店を一斉に閉鎖。今月には、深セン市に本社を置く「創輝租售」も上海市、広州市の計約500店舗を突然閉めた。北京市の仲介会社「中大恒基」も、全体の約1割にあたる約50店を閉鎖する方針という。 PR情報国際
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