医療をはじめ、介護や年金等の分野で負担増と給付減が進み、健康を害しても医療機関を受診しない(できない)患者の「受診抑制」が深刻になってきている。格差社会≠フ進行とともに、働いても生活保護基準以下のワーキングプアといわれる貧困層は、生活保護世帯を除き全世帯の2割を超える約1,105万世帯に。年収300万円未満の場合、具合が悪くても医療機関を受診しなかった人の割合が40%以上に及ぶなど、患者が安心して医療を受けられる制度の確立が急務になっている。
近年の社会保障をめぐる国の動向をたどると、70歳以上の窓口負担1割・現役なみ所得者は2割の引き上げとなった2002年の「医療改革」をはじめ、03年にはサラリーマン本人等の窓口負担が2割から3割に引き上げ。同年には、介護保険料も引き上げられ、年金も物価スライドで受給者の年金額が初めて削減された。このほか、06年には現役なみ所得の高齢者の窓口負担が3割になるなど、国民(患者)にとっては負担増と給付減の施策が相次いでいる。
受診抑制は、このような社会保障の抑制が主因になっていると、医療関連団体などから指摘されている。
全国商工団体連合会共済会の06年度調査では、会員業者の初診から死亡までの期間が「24時間以内」が16%、「2日から1か月未満」が20%と、3分の1を超える業者が「手遅れになってから初めて受診する」という実態が浮き彫りになっている。
また、日本医療政策機構が07年度に調査した「所得と医療機関の受診率」によると、具合が悪くても医療機関を受診しなかった人の割合が年収300万円未満では40%以上に上り、その84%が「病気になった時、医療費が支払えるか心配」と答えた。
さらに、06年の全日本民主医療機関連合会(民医連)の高齢者生活実態調査では、86.5%の高齢者が体の具合が悪いと答える一方、1か月間に支払える医療費・介護保険料の上限を5千円までと答えた人が45%にも上った。
このほか、新日本婦人の会が行った母子世帯の家計調査でも、児童扶養手当の減額などで生活が苦しい世帯は85%に達し、「医療費も3割負担になり、病院に行くのもためらわれる」といった厳しい実情を訴える声が寄せられている。
このような各種の調査結果からも浮き彫りになっている受診抑制問題について、民医連は「負担増・給付減に伴う受診抑制は深刻になっており、『お金の切れ目が、いのちの切れ目』といえる状況になっている。医療費抑制政策を転換し、大幅な医療・社会保障費を増やすことなくして、国民の健康、生命、医療機関を守ることはできない」と訴えている。
更新:2008/02/01 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。