中国の工場で製造、輸入された冷凍ギョーザを食べた人が相次いで中毒症状を訴え、患者の食べ残しから有機リン系の殺虫剤が検出された。
誰もが日常的に口にしている冷凍食品に、事もあろうに殺虫剤が混入していたとは。全国の消費者に不安と怒りが広がる。
昨年暮れに症状を訴えた女児は、一時重体に陥った。最初に伝えられた千葉、兵庫両県に続き、全国の都道府県で多数の人々が同様に具合が悪くなっていたことが分かってきた。厚生労働省や各自治体は、引き続き被害の実態把握に努めてもらいたい。
被害の拡大阻止にも全力を挙げなければならない。製造元は中国・河北省の「天洋食品」で、冷凍ギョーザのほか多種の食品を製造している。ギョーザ以外で被害が拡大する恐れもある。厚労省は食品の輸入企業と品名を公表し、販売中止を要請した。
店頭からの食品の撤去・回収も進められているが、買った商品を冷蔵庫などにしまったまま忘れている人もいるかもしれない。点検を心掛けたい。関係機関や企業の積極的な情報提供や注意呼び掛けが欠かせない。
殺虫剤がなぜ冷凍食品に混入したのか。原因の究明が何より重要だ。一部の商品だけに混入した可能性があることや、殺虫剤は高濃度とみられることから、厚労省は通常の食中毒としては不自然との見方も示している。
中国当局が、天洋食品の調査を始めたと伝えられる。今後の中国側の協力が究明の鍵になろう。中国製品に関しては世界中で問題が続出している。食品関係ではペットフードを食べた犬や猫が大量死し、ウナギのかば焼きやせき止め薬、練り歯磨きなどから大腸菌や有害物質が見つかった。玩具からも化学物質が検出されている。
今回の食中毒問題により、またも不信が高まった。中国当局は誠意を持って日本側と協力し、調査に当たる必要がある。一刻も早く原因を突き止め、再発防止策につなげなければならない。当局の断固たる姿勢は、中国製品への世界の信頼を回復する上でも助けになろう。
国内に目を戻せば、患者の発生から問題の公表まで時間が掛かったことは問題視しなければなるまい。当初原因がはっきりしなかったため、自治体レベルから国への報告が遅れたという。しかし、早く公表されていれば次の被害発生を防ぐことができた可能性もある。行政間の連携体制や連絡システムに不備がないか検証し、問題の早急な改善が求められる。
不妊の夫婦が別の女性に子どもを産んでもらう代理出産について、日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は、代理出産を法律で原則禁止し、営利目的の実施は依頼者を含め処罰すべきとする報告書案をまとめた。国民の意見を聞き、二月中に最終報告書を発表する。
代理出産の是非は、極めて重いテーマである。日本産科婦人科学会は倫理指針で禁じているが、法的拘束力はない。ドイツやフランスは法で禁じているが、英国や米国の一部の州は認めるなど判断は分かれる。
日本では代理出産で子どもを得た夫婦は五十組以上いるとされる。娘に代わり母親が「孫」を代理出産した例なども報告され、こうした現実に戸惑う人は多いはずだ。ただ、学会の自主規制には限界があり、医者個人の判断に委ねるのは問題が大きい。何らかの法整備が必要な段階に来ているのは確かだろう。
報告書案は、妊娠出産の危険を別の女性に負わせる問題や、生まれてくる子どもの健康に悪影響を及ぼす恐れなどを重視し法律で禁止すべきとした。だが、処罰の対象は営利目的に限定した。すべての代理出産を罰則付きで禁止すべきとした二〇〇三年の厚生労働省部会の報告書に比べ、処罰の範囲を緩和した。
代理出産は、子どもを産めない人の最後の選択肢といわれる。こうした声に配慮し、国の厳重な管理下での実施などに道を残した。
〇三年の報告書は与党内に反対意見が強く、政府の法案提出は棚上げになった経緯がある。今回も法整備に向けて動き出すかどうか注目されるが、まず社会的な合意形成を急ぎ、合意に基づく対応が望まれる。
(2008年2月1日掲載)