静岡鉄道は2月1日から、中小私鉄では全国初となる新型ATS(自動列車停止装置)を導入する。特定の地点に置かれた装置がピンポイントで列車の速度を検知する現在のATSを、レールに流した電流が列車の速度を検知して広範囲に速度を制御するシステムに更新し、安全性や機能性を一層向上させる。既に新清水―御門台駅間の五駅に設置し、2010年度をめどに全15駅に導入する計画だ。 同社は1970年にATSを導入。その後も段階的に増設を進め、現在では新静岡―新清水駅(11・0キロ)の全線に整備している。設置当初と比較してダイヤが過密化したことに加え、兵庫県尼崎市で多数の死傷者を出した05年のJR福知山線脱線事故をきっかけに、安全面のさらなる強化に向けて新型ATSの導入を検討してきた。 新たに導入するのは、レールに流した速度制限情報を車両が受信する「I―ATS」と呼ばれる装置。駅のホームやカーブ手前などで、列車が決められた速度パターンを超えると自動的にブレーキが作動する仕組みで、都営地下鉄の一部でも導入されている。総事業費は10億円。 制限速度以下になるとブレーキが自動的に解除されるのも特徴で、「後続車両への影響が出にくく、乗客の乗り心地も損なわれない」(長野高幸鉄道部長)。将来的には緊急地震速報を受けた場合に列車を全自動で制御できるようになるという。 同社は29日夜、報道陣向けに体験試乗会を開き、実際に長沼―新清水駅間を運行。運転士がブレーキ操作を誤った―などの想定で、時速30キロのままホームに進入したり、制限速度を超過して走行したりしてブレーキの作動状況を公開した。 |