「文化はゲームだ!」っていう大それた建前で迷走を続ける「OG」なのですが、ゲームに特化しているかと問われると正直さほどなわけでありまして……。反省の念を込めて、2008年ド頭は原点回避! ということで、今回は「SIMPLEシリーズ」の生みの親をお迎えして、ドップリとゲームに特化したスペシャルインタビューを全国8900万の「OG」ユーザーにお届けしたいと思います! まぁ、結局はトンデモ話ですけど(笑)
「で、ボクなわけ? なんかイヤだなぁ(苦笑)」
いえいえ、コンシューマゲーム業界の常識を、贅肉を一切排除した企画と超低価格という価格帯、そして、岡島イズムとごく一部で賛美されるそのトンデモセンスで叩き壊したといっても過言ではない立役者、岡島信幸(以下、岡島さん)さんこそ、「OG」が追い求める
スローガンそのものですよ!
「う〜ん……、要するに大バカ野郎だということですよね?」
まぁ、ぶっちゃけその通りなんですけど、気にせず進めますね。まず最初に「SIMPLEシリーズ」をキックオフさせた経緯みたいなものを教えていただけますか?
「詳しく話せば長くなるんですけどねぇ」
ここはザックリで結構です(即答)
「ではザックリといきましょうか。そもそも株式会社D3パブリッシャー(以下、D3P)はカルチュア・パブリッシャーズという会社の一事業部だったんですけど、その時代、後のSIMPLEシリーズ初代プロデューサー(NOT岡島さん)に『花札とか将棋とか麻雀とか、そのあたりのスタンダードなソフトを出さないか?』って企画の持ち込みがありました。」
でも、その辺のタイトルってかなりのタイトル数が既にあったのでは?
「そうなんですよ。しかしその頃に、SCE(ソニー・コンピュータ・エンタテインメント)さんが定めていたソフトのロイヤリティが大雑把に言うと固定性から可変性に変わったんですよ。が、それまでも段階はあったのですが、可変性になってからはソフトの価格に応じて何%みたいな形になったんです。それによって、サードパーティーは安価でソフトが提供できる状況になりましてね、じゃあおもいきっり安いソフトを作ってみようということで、『SIMPLEシリーズ』の企画が立ち上がったということです」
まず最初は比較的重厚なゲームシステムを必要としないテーブルゲーム系をリリースしようと?
「そうですね。例えば麻雀なんかはですね、プロ雀師を前面に出したタイトルや、女の子が出てきてお色気ムンムンなタイトルとか、いろいろとあるわけじゃないですか。でも、そういうのって、普通に4人打ち麻雀をやりたいって人にとっては変な付加価値でしかないのではと考えたんです。で、麻雀しか出来ないけど、麻雀をするだけなら十分なソフト、麻雀という部分では徹底的に作ってありますよ的なソフトを、『オレはプロ雀師とか水着脱ぎ脱ぎなんかいらん!』ってお客様に提供ましょうと」
1.500円(PS用SIMPLEシリーズ)という価格帯は当時ユーザーの度肝を抜きました。
「旧作の人気タイトルが当時『Best!』シリーズとして2.800円くらいで好調な売れ行きをしていましたので、手頃さをアピールするなら、その半分くらいに設定しないとお得感とかインパクトはないかなという判断で、1.500円に設定しました。まぁちょうど500円玉3枚だし、1.400円だとか1.700円だとかだとキリが悪いかなということです」
逆に安すぎて手が出ない的な風評を不安視したりとかは?
「もちろんありましたよ。関係各所で賛否両論ありましたし、当時のスタッフも真っ二つですよ。『安かろう悪かろう』的な意見はもちろんありました。意見が分かれた結果、我々だけでは売れるか売れないか判断しかねるってことで、当時の営業担当が販売店さんに、主要な量販店とかチェーン店にインタビューしてみようってことになったんです。で、実際に話を聞いてみたところ、『それはいいですね!』という声がたくさんありまして、『じゃあやるか!』ってことで」
98年10月22日に「THE麻雀」「THE将棋」「THE五目並べ」「THEリバーシ」の4タイト
ルが同時発売されました。
「一応、販売戦略を立てて臨んだのですけど、良い意味で戦略が外れちゃったんです」
ちなみにどんな戦略だったんですか?
「ゲームショップのレジ周りに着目したんですよ。例えば、お父さんとお子さんでゲームソフトを購入されるお客様がふとレジの横を見たら、そこに1.500円のソフトが置いてあって、『なんだこれは!? 安いぞ!』みたいな感じで、お子さんに買ってあげるついでにお父さんも麻雀購入…というような想定です」
コンビニのレジ横にあるちょっとしたお菓子や小物を精算時に「安いしこれも買っとくか」みたいな感覚で?
「そうです。FFを買おうとお店に行きましたと、で、1.500円だったらFFといっしょに暇つぶし用に買おうみたいなノリを狙ったんです。レジ横に置く専用箱も作って準備万端だったんです
けど、案外ですね、レジ前ってものスゴく込んでて、箱を置く場所がないんですよ(苦笑)」
ほとんどの人が「早く家に帰ってFFやりてぇ」ってしか思ってないでしょうしね。
「ですよね。結局は専用箱ごと棚に入って、『どうしたもんかなぁ……』って思っていたんですが、売れ行きだけは絶好調で」
嬉しい誤算というやつですね!
「おかげさまで、『THE麻雀』は発売から1年で50万本売れまして、『Play Station Awards』で表彰していただきました!」
おぉ! スゴいじゃないですか。
「1.500円という価格帯が功を奏したのか、もういろんな方にお買い上げいただきまして、予想を遥かに超えた数字を叩き出しましたね。まぁ、違った部分でも予想を遥かに超えたりしましたけど」
違った部分とは?
「あれは『THE将棋』だったかなぁ……。お客様からユーザーサポートにお電話をいただきましてね。なんでも、『プレイヤーに入れても何もできないぞ!』ってことで。よくよく聞いてみると、なんとCDラジカセにソフトを入れてらっしゃったみたいです」
アハハハハ! ちゃんとゲームだと認識して購入されているわけですよね?
「その辺はボクにもわからないんですけど。あと、これもまた『動かない』ってお客様のお電話なんですけど、『ケースからソフトを取り出して、PSのトレイにセットして電源ボタンを押してください』ってご説明さしあげたら『電源なんてない!』っておっしゃる方もいたようです。電
源ボタンの場所とか、コントローラーの説明なんかを説明してもさっぱりな様子で。で、これまたよくよく聞いてみると、どうやらケースからソフトを取り出して、もう一回ケースにしまわれていただけだったとか。もちろんPSはお持ちでなくて(笑)」
アハハハハ! ソフト単体でゲームが出来ると思われてたんでしょうかね?
「これまたその辺はボクにもわからないんですけど。でも、そういった方からも注目されるぐらいのインパクトがあったということ、非常に多くの方にお買い上げいただいたということですね。しかも、その次の年も50万本売れて、発売から2年後に100万本で表彰して頂きました。(累計101万本)その時は既にD3Pでしたが。」
ひとつのタイトルで「Play Station Awards」を2回ってスゴいじゃないですか! ゲーム事業部も社内で右肩上がりだったんじゃ?
「いや、実はそうでもなかったんですよ。ゲーム開発はやっぱり博打みたいな部分が色濃くてですね、『THE麻雀』は売れたんですけど、それ以上に時間もお金も掛けて製作した『プルムイプルムイ』というゲームがあったんですけど、これがもう思ったよりも売れなくて(苦笑)」
ちなみに、「プルムイプルムイ」ってどんなゲームだったんですか?
「モーフィングRPG 『プルムイプルムイ』ってタイトルなんですけど、ムイっていうクニャクニャしたキャラクターがお菓子を食べていろんな形に変身するんですよ」
さっぱりわからないんですけど、RPGってことで、やはりムイには何か大切なジョブがあるわけですよね?
「さしあたり『世界の平和を守る』といったところでしょうか」
かなりバックリしてますね(笑)
「いいゲームだったんだけどなぁ……。結局この『プルムイプルムイ』があまりにも売れなくてですね、ゲームビジネスの難しさ、怖さを肝に銘じたわけです。そういった教訓で、今の『SIMPLEシリーズ』やD3Pが存在しているわけです」
大変恐縮なのですが、今のD3があるのは「プルムイプルムイ」がまったく売れなかったおかげともいえますよね?
「その通りですね。今も社内では『今のD3があるのはプルムイプルムイが売れなかったおかげだ』とされていますからね」
なんだか複雑ですけど、つまるところは、よかったと?
「そうですね(笑)。その頃のボクは役職上は宣伝広報としてゲームに携わってたんですけど、もともとは制作側の人間だったんですよ。で、 当時の制作プロデューサーがなぜか営業や販促が得意な人間だったんですよ。『オレたちどう考えても得意分野が逆だから、アナタは宣伝、オレは製作でチェンジしましょう!』って話して交代したんですよ」
役職をそんな自分勝手かつ簡単に交代しちゃっていいんですか?
「だって、当時のD3Pは6人しかいなかったんですから(苦笑)」
6人ですか!
「開き直った感ありありでしたよ。ボクと社長ともうひとり役員がいて、営業が1人、経理総務が1人、解説書の編集が1人、計6人。『SIMPLEシリーズ』のナンバーでいえば、Vol.14の『ブロック崩し』あたりのときですね。ボクが『SIMPLEシリーズ』の製作にドップリと漬かるようになったのはVol.27の『THEスノーボード』あたりからですね」
ゲームにしようとする題材に困ったことは?
「基本的にないですよ。Vol.9の『THEチェス』が出たあたりから『SIMPLEシリーズで欲しいラインアップは?』 的なアンケートも取ったりしてまして、エンドユーザーからのリクエストで実現できるものからラインナップしていこうといった形でやっていましたし。まぁ、中には実現できそうにないものや、絶対に実現できないものもありましたけど」
ちなみに「絶対に実現できないもの」って?
「そうですね、『THEドラゴンク●スト』とか、ゲーム史上もっとも偉大なソフトを所望されても……」
アハハハハ! その後、岡島体制となった『SIMPLEシリーズ』はもう好き勝手に?
「好き勝手になんてやって……、そう言われても仕方ないでしょうね(笑)」
岡島さん自身が岡島イズムを噴火させ始めたと考えるタイトルはどのあたりからですか?
「そうですね、VOL36の『THE恋愛シュミレーション〜夏色セレブレーション〜』あたりからですかね」
メジャースポーツやオーソドックスなテーブルゲームに特化していた流れを「恋」で断ち切りましたか!
「まさかこんなにタイトルが出るなんて想定してなかったんですよね。メジャースポーツやテーブルゲームはほぼやりつくした感があって、最後に残ったエンターテインメントってなんだろうって深く考えて、出た答えが『恋』だったんですよ。いわゆるギャルゲーですね」
最高の方程式です!
「でも、いきなり恋愛ものをいちから製作するのはかなりのリスクがあるんで、最初はPCゲームからの移植という形でリリースしたんですけど、これが案外コアユーザーにウケたんですよ」
どちらかといえばライトユーザーをターゲットにしていた「SIMPLEシリーズ」としては新たな市場が生まれたといっても?
「過言ではないですね。でも、ここを境にライトユーザーとコアユーザーの両方を意識して、バリバリと意見を吸い上げなくちゃいけなくなっちゃったんですけどもね(苦笑)」
とにもかくにも、このあたりのナンバーから「SIMPLEシリーズ」はサブカル的に大回転し始めて、数々の伝説を生み出していくわけですが、Vol.77の「THE水泳」はもうトンデモ極まりないというか(苦笑)
「やはりそこを突かれますか。『THE水泳』に関してはもう語りたくないですねぇ(キッパリ)」
そこをなんとかお願いします(笑)
「当時、世界水泳が開催されていて、世の中が非常に水泳で盛り上がっていたんですね。あと、これまた当時PSでアナログコントローラーのデュアルショックが発売されまして、水泳をゲームにという要望と、デュアルショックの特色をどうにか生かせないかという要望をミッ
クスしてみようという企画でザブンと入水したわけなんですが、見事なまでにダメでしたね」
ふたつのアナログスティックと各種ボタンを駆使して泳ぐわけですけど。
「(デュアルショックをグリグリとしながら)だってですよ、これが平泳ぎでこれがクロール、こう回してこうでバタフライ、息継ぎをちゃんとしないと死ぬし、バタ足はL1ボタンとL2ボタンを交互にって……、もう今考えたら最悪ですよ!」
アハハハハ! ソフトの売り文句も「アナログコントローラーで水を掻け! ほんとに疲れる水泳ゲームがここに登場!」とこれまた最高ですね。
「あぁ、そのコピーはボクが書きました。だってホントに疲れるんですよ。実際にソフトが出来てきて、『まさかここまで……』と思いましたもん」
正直、このコントローラー操作はかなり無理がありますよね(笑)
「10本の指を酷使しないと泳げないっていうのがもうどうにもこうにもですね。『アナログスティックを同時に内側に回すのだ!』とか、あり得ない(怒)」
ボケ防止に最適ですよ! 「4人対戦が熱い! 4倍燃えて4倍疲れるぞ!!」ってコピーも秀逸です。
「基本操作はすべて2本のアナログスティックを死ぬ気で激しく回すだけですからね。いやぁ、ボクが言うのもなんなんですけど、絶対にオススメしません、ここまで疲れるゲームはこの地球上に存在しないと思います。でも達成感は通常の10倍あります」
岡島さんの口からそんなに言われちゃうと逆にプレイしてみたくなる人もいるかもしれませんよ? とにかく「OG」的にはバツグンなタイトルです。
「正直、二度とプレイしたくないですねぇ(遠くを見つめながら)」
あと、岡島イズムがかなり狂い咲きしているところでVol.92の「THE 登山RPG〜銀嶺の覇者〜」がありますね。これはもうタイトルと内容があまりに強烈で(笑)
「『THE 登山RPG』! これはもうゲーム史に残るといっても過言ではない歴史的ソフトですよ!(奮)」
ある意味ボクもそう思いますよ! パッケージにある両目を開いた凶悪な表情の山がパーティーに襲いかかっているイラストを見た瞬間に歴史的覚悟はできましたから(笑)
「いやぁ、いいなぁこのゲームは(ニンマリ)」
リアルタイムで移動する登山チームたちに指示を出しながら登頂を目指すゲーなわけですが、なぜかRPGというのがとんでもないですね。
「だからあれですよ、SFCの『伝説のオウガバ●ル』みたいな形で登山するわけです」
他社のソフトを例えに出さないでくださいよ(笑)。ストーリー的には世界登山家協会なる怪しげな団体から、各国の有名登山家をことごとく蹴散らした魔物と呼ばれ恐れられている山を制覇して、世界中の登山家の名誉を取り戻してほしいとお願いされるわけですが。
「男のロマンですよね。誰も成し遂げたことがないことに命を懸けるっていうね。まぁ、出てくる山は登山家でなくても誰もが知ってる山ばかり(富士山、ロッキー、アトラス、アンデス、アルプス、エベレスト)ですけど」
へ? じゃあ各国の有名登山家をことごとく蹴散らしたそ魔物山ってのは?
「もう覚えてません!(キッパリ)」
アハハハハ! とにかく、オーソドックスなRPGでいうドラゴンやら何やらの魔物が「山」という世界観には脱帽です!
「山というか山頂そのものがラスボスなんですよ。ちなみに最初のボスは登山初心者向けに富士山です」
山頂がボスなんですか?
「その名の通り『山頂』というボスが登場しますすよ。山頂を倒すことによって、文字通り『山を征服する』ってことになるわけです。でも。山頂は強いですよ、HPもめちゃくちゃありますからね」
山にHPって(笑)
「ラスボスの山頂にたどり着くまでには山の神様を倒さないといけないんですよ」
山の神様?
「山の守り神みたいなもんですね。各山に必ずいます」
登山家として山の守り神は倒しちゃいけなんじゃ?
「(無視して)あとは雪崩や霧、クレパスや落石、凍傷といった登山家を襲う障害や事故全てが魔物となって登山家を襲うんですよ」
「襲うんですよ」って。雪崩や霧なんかは一万歩譲って魔物として理解しますけど、凍傷なんかはさすがにどうなんですかね?
「(パッケージ裏を指して)ここにもちゃんと『障害や事故が魔物として登場、スリリングな登山バトルが熱い』って書いてありますし」
でも、これ書いたの岡島さんじゃないですか。
「まぁそうなんですけどね。いやぁ、このゲームは作ってた頃は『レインボー』の『マン・オン・ザ・シルバー・マウンテン』ばかり聴いてたなぁ(しみじみと)」
かなりハイだったんですね。ゲーム内容にもそのハイっぷりが色濃く滲み出てますよ! ちなみにRPGには必須の剣士や魔法使いという概念なんかも?
「もちろんありますよ。キャラクターはアタッカー、クライマー、シェルパ、ナースという4種類のジョブで構成されているんですけど、例えるならば、アタッカーは戦士、クライマーは盗賊、シェルパは僧侶、ナースは魔法使いのイメージですね」
戦士や魔法使いとリンクするキャラクターがいるということは、剣とか魔法に似た概念も存在するんですか?
「しますよ。攻撃系のキャラはハーケンとか、登山に不可欠な荷物なんかを敵に投げたりして攻撃します。召還魔法みたいなものもありますよ」
ちなみに何を召還するんですか?
「そうですね、救助犬とか除雪車とか、最強の召還獣はヘリコプターですね」
なんだか非常に現実的かつ遭難ムード満載な召還獣たちですね(苦笑)
「ちなみに、MPはお金です」
お金を出して救助要請してるだけじゃないですか(笑)
「ヘリコプターの消費MPはたしか14万くらいです。いやぁ、お金がかかりますよねぇ登山ってもんは(呆れ顔で)」
(無視して)ユーザーの反応はどうだったんですか?
「全然売れなかったですね。このソフトを手にする度に思うんですけど、作り手が良いと思うソフトだからって“いい”ソフトなわけじゃないのだと、お客様に振り向いてもらって、手に取ってもらって、『買おう』と思ってもらわないとダメなんだと。ゲーム人としての初心をまったく忘れてましたねぇ。登山に水泳……、そうそう『THE剣道』なんてものもありましたね、これは最高です」
Vol.99「THE剣道」ですね!
「剣道という孤高の武道が持つ醍醐味を詰込んだ素晴らしいゲームですね。あとキャラがいい! 主人公は3人いて、全国大会を目指す剣道一筋高校生に地下剣道組織の男49歳」
地下剣道組織って(笑)
「“地下”ってつくだけでこう幻想が広がりませんか? あとは剣道大好き美人婦警さん。ちなみにこの女の子の名前は剣道よしみっていうんですけど」
アハハハハ! ただのダジャレじゃないですか(笑)。
「次々と敵を倒していく野試合モード、対戦モードなどがあるんですけど、このゲームのメインモードは物語を進めながら試合を行っていくストーリーモードなんですよ。めちゃめちゃいいストーリーですよ。3つの章がありまして、ストーリー上で主人公がザッピングしているんです
よ。自分でいうのもなんなんですけど、抱腹絶倒ストーリーですよ(ニンマリ)」
岡島さんが自信を持って抱腹絶倒の太鼓判を押されているということは、かなりとんでもないストーリー展開にちがいないですね。
「全国大会を目指す剣道一筋高校生は天野陽太くんのストーリーは全国大会1日前ってところから始まるんですけど」
それ、展開早くないですか? 全国目指してるってんだから、普通はそこまでをフューチャーするのでは?
「(無視して)まぁなんですか、そこからマネージャーとのラブストーリーに展開していくわけです。でね、よしみちゃんのは潜入捜査、剣道大会が行われている武道館に犯人が潜伏しましてね、よしみちゃんが道着と防具を身につけて潜入捜査するんです」
別に道着と防具を身につけなくてもいいのでは?
「地下剣道組織の男49歳は鉄蔵っていうんですけど、地下剣道で八百長やってるんですよ、負け役の。そんな八百長剣士が自分を取り戻していくっていう超感動巨編です」
超感動巨編ものの剣道ですか(笑)。どれもこれもかなり気になるんですけど、そもそもなんで剣道をゲームにしようと?
「え!? いや、なんとなく剣道っていいかなって思って」
なんとなく発進ですか!
「そういわれたらそうなんですよね。ただですね、武道はやりたかったんですよ、でも柔道ってなるとなかなか無理っぽいじゃないですか、だけど剣道ならいけるかなって思って。でも、この『THE剣道』はゲーム性もなかなかのもので、ちゃんと剣道の心理戦みたいなものも表現できてますし、試合画面のキャラも3Dモデリングで迫力がありますしね」
剣道家のモーションキャプチャーなんかもやられて?
「そんなことしないですよ(即答)」
そんなことしませんか(笑)
「こうしてあらためて見てみるといろんなことやってますねぇ。あぁ、これもいいゲームだったなぁ、このVol.100の『THE宇宙飛行士』。これはたしか『記念すべき100タイトル目はやっぱり宇宙でしょ!』ってことで作ったんだよねぇ(しみじみと)」
アハハハハ!(大爆笑)
「このVol.86の『THE鬼ごっこ』なんて今見るとかなりカルトですねぇ。これはもうマジに鬼ごっこです。もうひたすら鬼ごっこ」
伝承遊びにまで手を出されましたか(苦笑)。岡島イズムが炎上しまくりの「SIMPLEシリーズ(1500)」もこの頃から本格的にPS2に移行し「SIMPLE2000シリーズ」が誕生します。
「そうですね。PS2になると開発にはかなり気合を入れないといけなくなっちゃって大変でしたね。1500にくらべると開発費用も段違いですから」
値段的なことがやはりネックに?
「PS2でも1.500円が実現できたら最高だったんですけど、かかるコストがもう全然違って、特に制作費はPSに比べて全然高いわけですし、やむを得ずといったところで500円アップの2.000円に決めましたね」
正直、いくらで出したかったですか?
「3.000円くらいでやれればもっと楽だったんですけどね。やはりインパクトにかけますし、1500シリーズの二倍って数字はお客さんにとっても、ちょっと無理かなという感じで」
2000シリーズは1500シリーズと企画面で何か変化を持たせようとされたりとかは?
「特にないですね。ただ、ややコアユーザーのお客様が多くなったので、それに合わせていこうかといったぐらいですかね」
要するに岡島イズム大炎上ということですね。2000シリーズでは岡島さんの他に岡島さんのお弟子さんにあたる方々もプロデューサーとして参加されてるんですけど、タイトルを見てるだけでどれが岡島さんのものかってわかりますよね。
「そうですか! じゃあ当ててみてくださいよ」
じゃあこのVOL61の「THEお姉チャンバラ」。お色気お姉ちゃんが繰り広げる血みどろホラー剣劇アクションゲームです。
「ボクですね(笑)」
敵の返り血を浴びると「穢れゲージ」なる数値が上昇して、数値がMAXになるとお姉ちゃんが暴走を始めるという変態っぷりが最高です! では、Vol.88の「THEミニ美女警官」。ミニ美女警官と書いてミニスケポリスって読ませてるところが……?
「これもボクですね(笑)」
警視庁特殊工作員の鮫島桃がセクシーコスチュームで謎に包まれた事件を追うアクションゲームですね。「敵からダメージを受けると、コスチュームがドンドン破れていって、最後には●●●●な姿にされてしまい、敵の●●●な視線に●●されてしまうのだ!」っていう宣伝コ
ピーが最高です。じゃあこのVol.120の「THE最後の日本兵〜美しき国土奪還作戦〜」は?
「いやぁ、ボクですねぇ、途中まで(笑)」
敵国に占領された日本を舞台に、日本にたったひとり残った自衛官が占領された国土を奪回するために、北海道から南下して、47都道府県を闘い抜くという戦闘アクションゲームです。「NOと言える最後の兵士よ、美しい国を守れ!」ってコピーが秀逸過ぎますよ!
「いやぁ、あらためて自分のやってきたことを見てみると、『ボクっていったい何やってんだろう』って考えちゃいますね(苦笑)」
アハハハハ! 岡島さんが携われた2000シリーズの中で、特に印象に残っているタイトルは何ですか?
「そうですねぇ、これはかなり気持ち悪いですね。Vol.38の『THE友情アドベンチャー 〜炎多留・魂〜』はキテますね」
やはり出ましたか!「SIMPLE2000シリーズ」で唯一のボーイズラブゲームですね(笑)
「この頃にはもうギャルゲーの市場がかなり衰退してましてね、乙女ゲーム(女の子のための恋愛ゲーム)の市場にもいろんな会社が参入してましたので、ボクらはその先に、恋愛系ゲームの向こう側にいかなきゃダメだって思いまして」
そこでいきついたのが……。
「ズバリ、男同士の友情シュミレーション、ヒューマンラブゲームですね。男臭い世界が大好きな人にはオススメです!」
振り切ってますねぇ(苦笑)。「魂と魂で繋がり合う男たちの熱い友情物語」とありますけど、繋がり合うのは魂だけですよね?
「それは実際にヤッてみてもらえれば(ニンマリ)」
こっちの世界にはまったく興味がないんですけど、このゲームはかなり気になりますね。
「気になりますか! 誰にでも可能性はあるっていいますから、きっかけなんてちょっとしたことらしいですよ。でも一応言っときますけど、あくまで友情アドベンチャーですからね。まぁ、このソフトは話題にはなったんですけど、売り上げとは反比例しちゃいましたねぇ。早過ぎた
というか(苦笑)」
コンシューマじゃ無理っぽいジャンルですからね。
「これもダメだったなぁ、Vol.53の『THEカメラ小僧』」
3人の美少女をカメラ小僧になりきって激写するという前代未聞の美少女撮影ゲームですね!
「題材は良かったし、ゲームシステムもかなりいいとこまで作ってたんですけど、土壇場で致命的な問題が浮上しちゃいましてねぇ(苦笑)」
その致命的な問題とは?
「諸々の事情によりスカートの中を撮れてはダメという規制をいただきまして……、最終的に商品性の部分を根こそぎ奪われてしまったもんですから、もうこりゃダメだと。グラビアアイドルのキャラクターもかなり良い出来だったんですけどねぇ」
ご愁傷様です。グラビアアイドルといえば、沖縄県の皆古島に突如現れた身長48メートルの超巨大グラビアアイドルが大暴れするというぶっ飛んだストーリーが爆発する、Vol.50の「THE大美人」も岡島さんの担当ですよね!
「その通りです。『THE大美人』はたくさんの媒体がこぞって取り上げてくれましたね」
不思議な生き物に刺されて巨大化し、破壊の限りを尽くしながら東京へ北上するグラビアアイドルの双葉理保を自衛隊となって阻止するというゲームですが、そもそもこのぶっ飛び設定はどこから?
「もともとはですね、自分が小さくなって、女の子にイタズラが出来るゲームが作りたいなって考えたんですよ」
不埒な企画ですねぇ(苦笑)
「でね、いろいろ真剣に会議しまして、最初はプレイヤーが小さくなって女性の皮膚の上を歩いて悪さをするというゲームだったんですけど、何かこう足りなかったんですよ。で、企画担当のクリエイターさんが『女性がでかくなればいいじゃないですか?』って、『あぁなるほどね』って」
「あぁなるほどね」って(笑)
「そのクリエイターさんは、思いついたときに『ゲームの神様が降りてきた』と思ったそうです。で、企画変更でそのまま突き進むように出来上がりましたね。ゲームシステムもミッションものにしたりして。例えば、『敵の様々なデータを収集するのだ!』ってミッションでは、巨大化した双葉理保のバスト、ウエスト、ヒップなんかをヘリコプターでもって測定したりとか」
アハハハハ! バカですねぇ(大爆笑)
「これ、ダウンタウンの松本さんが撮った『大日本人』より全然早いんですよねぇ。まあ元ネタは大魔神でしょうけど……」
たしかにそう考えたらこの設定はかなり早いかもですね!さすがです。で、「THE大美人」のユーザーからの反応は?
「話題にはなったんですけど、セールス的には……。話題になった割には伸びませんでしたね。でもですね、こんな斬新なゲームはないと思うけどなぁ、XBOX360で復刻したらどうかなぁ(ブツブツ)」
双葉理保のあんなところやこんなところまでがきめ細やかになるとは思いますけど。
「全然違うスタイルで出すってのもいいかもなぁ……(ブツブツ)」
全然違うスタイル?
「バストを測ったりだとかちょっとコミカルじゃないですか。次に出すなら、自衛隊は完全に双葉理保を殺しにいく感じで作りたいですね」
続編に期待します! アイドルを殺しにいくとまではいきませんが、このVol.113の「THE大量地獄」もカワイイ女の子にとんでもないことさせてますね(苦笑)
「怖いゲームを作りたかったんですけど、やっぱり『THE大美人』ぐらいに話題になるものにしたくて。ホラーゲームなんかを作ってもどうにもならないし、話題になる怖いヤツ、ホントに怖いものが迫ってくるのは何だろう?って考えて行き着いたのが『気持ち悪さ』だったんです」
ゴキブリにムカデ、巨大ダンゴムシにカマドウマ……。人間が生理的に嫌う生物が画面中を大量に覆い尽くすという究極の不愉快ゲームなわけですが、これはちょっと気持ち悪過ぎやしませんか?
「これぞまさに大量地獄ですね。主人公は今時の女子高生って感じの水咲エリカちゃんって女の子で、帰宅中に謎のウサギに携帯を持ってかれてしまって、そのまま大量地獄に連れていかれちゃうんですけど。エリカちゃんの体に次から次へとまとわりついてくる大量のゴキブリ、大量のクモ、ムカデ、ダンゴムシ……。いやぁ、背筋が凍るほど気持ち悪いです。普通の人はドン引き必至な仕上がりです」
これ、もちろんエリカちゃんも虫どもに攻撃できるんですよね?
「もちろん出来ますよ。角材やゴルフクラブや殺虫剤なんかで応戦するんですけど、結局は無限に現れる虫をいくら攻撃してもキリがないわけです。目的はあくまでも地獄からの脱出なので」
攻撃はできても結局は意味がないと……、ますます地獄ですね。
「基本は逃げることなんですけど……。でもなぁ、何もここまでストイックに気持ち悪くしないでもと思うんですけどね」
でも、プロデューサーは岡島さんですよね?
「ゴキブリなんかを女子高生がバットでカキーンって吹っ飛ばして痛快!みたいなものがよかったんですけど、なんだかまったく違う世界観になってしまったというか、そういう見方じゃない人たちがたくさんいらっしゃったみたいで(苦笑)」
ウルトラコアユーザーにはもうドンピシャの大ヒットですもんね。なんかネットの某巨大掲示板とかに『エリカが大量の虫に襲われている場面で●●●●した』とか書いてる人もいたりで(苦笑)
「中高生の多感な時期にはそういう子もいるかもしれないですねぇ(呆)」
いやいや、残念ながらそのほとんどがいい大人だと思いますよ(溜息)
「そうなんですか? 怖いなぁ……、どうなっちゃうんだよ日本は! 」
作ったのは岡島さんじゃないですか(笑)
「(『THE大量地獄』のパッケージを見ながら)こんなの誰が買うんだろうねぇ(ポツリ)」
アハハハハ!
「このゲームのホントにスゴいところをみんな誰もわかってないですよ! なにを隠そう。このエリカちゃんは沖縄弁や関西弁、さらには帰国子女風に『ワターシハー』などとしゃべり方を変えられちゃうんですよ(炎上)」
沖縄弁とかに何か意味があるんですか?
「いや、まったくないんですけどね(即答)」
(無視して)このタイトル、映画化なんかも狙えるんじゃないですか?
「おぉ! いいですねぇ。でも、これ女優さんが絶対にイヤがりますよ。そうだなぁ、●●●●専門の女優さんならやってくれるかも(とんちが浮かんだ一休さんのような表情で)」
誰が観るんですか(笑)。さて、数本のソフトを取り上げてバカ話を繰り広げてきたわけですけど、これからの「SIMPLEシリーズ」はどこへ向かっていくんでしょうか?
「どこでしょうねぇ、それはボクが一番聞きたいですよ」
PS3はどうなんですか?
「PS3は難しいですよ。6.000円とかになっちゃいますから。ハイエンドのマシンになるともうかなり繰り込まないとダメですし。もちろん、ソフトの価格帯を安価に押さえることが出来るプラットホームであればやっていきたいですけど」
それは残念ですね。DS(SIMPLE DSシリーズ)やWii(SIMPLE Wiiシリーズ)にも「SIMPLEシリーズ」を提供されていますが、 例えばWiiのコントローラーの特色を活かした「THE水泳」とかは?
「絶対にやらないです(笑)」
DSの2画面を活かした「THE登山RPG」とか。
「おぉ! それはいけるかもしれませんねぇ……って、絶対に売れませんよ。でも、こうして話してみてあらためて思ったんですけど、普通に売れたソフトって覚えてないものですね。ヒットしたソフトとまったく売れなかったソフトはしっかり覚えてますけど(苦笑)」
生みの苦しみがこれからも続きます。
「うーん、苦しいっていわれたらそうかもしれないですけど、日々そうですからもう何も感じませんね(苦笑)」
最後に、新たな岡島イズムを待ちわびているファンにひとことお願いします!
「これからも『SIMPLEシリーズ』は王道のテーブルゲームや定番のタイトル、もちろんブレーキが壊れてるかのように突き抜けているコアなタイトルもドンドンとやっていこうと思ってますんで、これからもよろしくお願いします!」
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