【萬物相】ドイツの勇気
第2次大戦がぼっ発する前、ベルリンは自由奔放な雰囲気が漂う都市だった。同性愛者たちが集まるバーやナイトクラブ、キャバレーが至るところにあった。ところが、ヒトラーが政権の座に就いてから、状況は一変した。ヒトラーは同性愛を「公衆道徳に悪影響を与え、出産率を低下させ、国家に危機をもたらす堕落した行動だ」とし、「国家の敵」と定義した。1933年から45年までに、ドイツの同性愛者120万人のうち10万人が逮捕され、そのうち5000人から1万5000人ほどが収容所で処刑されたと推定されている。
2005年、欧州議会はアウシュビッツ収容所の解放60周年を迎えるにあたって、決議案を可決した。その中で同収容所について、「ユダヤ人、ルーマニア人、ポーランド人、ロシア人、その他の国籍の収容者、同性愛者など計150万人が殺害された“死のキャンプ”だった」と定義した。欧州議会が同性愛者の犠牲について公式に認めたというわけだ。同性愛者たちは、他のナチスによる犠牲者と違い、最近まで補償や年金に関するメリットを受けられなかった。
一方、ロマ(ジプシー)も「忘れられた犠牲者」だ。ナチスの犠牲になったロマは25‐50万人ほどいるが、ユダヤ人に比べると国際社会の関心は薄かった。90年代末になって、犠牲者の子孫たちがスイス銀行を相手取り訴訟を起こした。ナチス政権がロマたちから奪った貴金属や宝石を受け取ったスイス銀行が、お金を返すことも釈明することもしなかったためだ。犠牲者の子孫たちは「この訴訟が、ナチスによるロマの受難について広く知らしめる第一歩となった」と話している。
ドイツでナチスが政権の座に就いてから75年が経った先月30日、ドイツ政府はナチスによって犠牲になったロマや同性愛者たちを追悼する記念碑を建立することを発表した。さらにドイツはこれまでにも「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念館」をベルリンに開設したり、ユダヤ人の子どもたちを追悼する列車を運行するなど、ナチスによる蛮行を後世に伝える事業を進めてきた。「負の歴史」を鮮明に記憶することこそ、こうした悪行を食い止められると考えたからだ。どの国であれ、過去の過ちを認め反省してこそ、前へと進むことができる。これはいくら隠そうとしても、否定しようとしてもなくなるものではない。ドイツがこの数十年間、国際社会に見せてきたこうした取り組みを、なぜ日本は見習うことができないのか分からない。
姜仁仙(カン・インソン)論説委員
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