奈良県田原本町で母子3人が死亡した放火殺人事件を巡り、中等少年院送致となった長男(17)の供述調書を引用した単行本が出版された秘密漏示事件で、長男を精神鑑定した医師、崎浜盛三被告(50)=刑法の秘密漏示罪で起訴=側が、奈良地裁の初公判で無罪を主張することが関係者の話で分かった。初公判は4月14日。
事件は06年6月に起き、当時高校1年の長男は、殺人などの非行事実で中等少年院送致となった。
秘密漏示罪は、医師や弁護士らが業務上知り得た人の秘密を、正当な理由なく漏らした場合に適用される。医師が単行本の著者、草薙厚子さんに供述調書の写しなどを渡したことについて、弁護側は認める方針。しかし、「鑑定人として知り得た情報に過ぎない。鑑定人は秘密漏示罪の医師には当たらず、罪の構成要件を満たさない。調書の写しを渡したのは長男に殺意がなかったことを明らかにするためだった」と無罪を主張する意向だ。
このため、言論や出版の自由と少年法を巡って注目された事件は、検察側と弁護側が秘密漏示罪の医師の「身分」を巡って争うことになる。【阿部亮介、高瀬浩平】
毎日新聞 2008年2月1日 大阪朝刊