不妊の夫婦が別の女性に子どもを産んでもらう代理出産について、日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は、代理出産を法律で原則禁止し、営利目的の実施は依頼者を含め処罰すべきとする報告書案をまとめた。国民の意見を聞き、二月中に最終報告書を発表する。
代理出産の是非は、極めて重いテーマである。日本産科婦人科学会は倫理指針で禁じているが、法的拘束力はない。ドイツやフランスは法で禁じているが、英国や米国の一部の州は認めるなど判断は分かれる。
日本では代理出産で子どもを得た夫婦は五十組以上いるとされる。娘に代わり母親が「孫」を代理出産した例なども報告され、こうした現実に戸惑う人は多いはずだ。ただ、学会の自主規制には限界があり、医者個人の判断に委ねるのは問題が大きい。何らかの法整備が必要な段階に来ているのは確かだろう。
報告書案は、妊娠出産の危険を別の女性に負わせる問題や、生まれてくる子どもの健康に悪影響を及ぼす恐れなどを重視し法律で禁止すべきとした。だが、処罰の対象は営利目的に限定した。すべての代理出産を罰則付きで禁止すべきとした二〇〇三年の厚生労働省部会の報告書に比べ、処罰の範囲を緩和した。
代理出産は、子どもを産めない人の最後の選択肢といわれる。こうした声に配慮し、国の厳重な管理下での実施などに道を残した。
〇三年の報告書は与党内に反対意見が強く、政府の法案提出は棚上げになった経緯がある。今回も法整備に向けて動き出すかどうか注目されるが、まず社会的な合意形成を急ぎ、合意に基づく対応が望まれる。