kmoriのネタままプログラミング日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-11-14

[] Ron Paulのフォロワーさん このエントリーを含むブックマーク

先日のトンデモ大統領候補Ron Paulの記事にコメントがついていた。id持ちの人ではないので消される心配はないが、かなり[ピー]な感じがするのでここに写しを置いておく。

sawarabi666 『なぜ連銀の廃止がトンデモなんですか???

ケネディリンカーンも同じことをしたんですよ。(そして殺された)

政府が通貨を発行することは合衆国憲法に書いてあるので

民間銀行である連銀は明らかに違憲

しかも双子の赤字で崩壊寸前の今の米国経済を見れば、

政府が通貨をコントロールすることは緊急の課題です。

ポール議員のいう金本位制とは、連銀がドルを好き勝手に印刷するのを

やめさせるという意味で、金が絶対の存在という意味ではありません。

(上でリンクされている文章を読めばちゃんと書いてあるんですけどね)

テレビ討論ではいつも1位のポール候補、先週は資金キャンペーンでも

記録を作りましたね。』

どこからつっこんでいいのか困るが、簡単に説明すると

  • ケネディリンカーンが殺されたのは連銀の廃止を提案したからではない
  • 連邦準備銀行は民間銀行ではない(ドメイン名だって.comではなく.govになってる)
  • 財政赤字がひどいのは連銀ではなく政府ブッシュ大統領の責任(クリントンの時代には赤字解消に向かっていたのに)
  • 中央銀行の独立性が重要だと言われているのはだらしない政府が勝手に通貨を乱発してインフレになるのを防止するため。なのに、通貨発行のコントロールを連銀から奪って赤字垂れながしの政府に渡せというのは話があべこべだ
  • 金本位制がいいって?大恐慌が起こった原因は何だったのか勉強してきなさい

ところで連銀がいけないと主張する日本人は、日銀については何も言わないの?もしかして、日銀は世界で唯一金融政策の手段を持っていて通貨の価値を高めつづける*1ことに成功している中央銀行だから、こういうトンデモさんたちからは一目置かれているというわけ?

*1:通貨の価値が高まる=デフレ

sawarabi666sawarabi666 2007/11/19 23:27 拙コメントを再掲して頂きありがとうございます。
頭からトンデモ呼ばわりは御免こうむりますが、疑問点を整理して頂きましたので、
私の言葉の足りなかった点は補いつつお答えしたいと思います。

> 連邦準備銀行は民間銀行ではない(ドメイン名だって.comではなく.govになってる)

連銀の中で政府機関の名を冠するのは理事会 Board of Governors だけで、
本体となる12の Federal Bank は100% 民間の株主が出資している銀行です。
中でも支配的立場にある NY 連銀の大株主は Chase Manhattan (32%),
Citibank (21%), Morgan Guaranty Trust (9%) など(1994年時点)。
1914年の連銀設立以来、株主の社名は変わってもおおもとの財閥の顔ぶれは
基本的に同じです。寡占的株主の意向が金融政策に大きく影響していることは
歴代議長の経歴を見ても分かります(グリーンスパンはモルガン系でしたね)
ちなみに各 Federal Bank のドメイン名は .org のようです。

> ケネディやリンカーンが殺されたのは連銀の廃止を提案したからではない

暗殺の真相はもちろん闇の中です。政府紙幣の発行が最大の原因かどうかは
分かりません。事実として言えるのはリンカーンやケネディが通貨発行権を
ごく一時的ながら政府の手に取り戻したこと、そのため連銀やその母体となる
銀行家達の激しい抵抗を受けたことです。

ケネディの最後の行政命令となった Executive Order 11110 に基づいて
発行された財務省債券は、後任のジョンソンがすぐに回収、発行停止しました。
リンカーンが南北戦争の戦費調達のため発行した政府債グリーンバックは
NY の大銀行家達(後年の連銀の母体)の抵抗にあって廃止されました。
リンカーンは最大の敵は南軍ではなく銀行家であると公言しています:
I have two great enemies, the Southern army in front of me and
the bankers in the rear. And of the two, the latter is my greatest foe.

> 財政赤字がひどいのは連銀ではなく政府、ブッシュ大統領の責任
> (クリントンの時代には赤字解消に向かっていたのに)

おっしゃる通り財政赤字を作り出した政策の責任は政府にあります。
私が言っているのは連銀が発行するドルを政府が利子を払って借りる、
というシステムが債務を不必要に増大させているということです。
国有の中央銀行がドルを発行すればこの法外な利子を払う必要は
なくなります。

> 中央銀行の独立性が重要だと言われているのはだらしない政府が
> 勝手に通貨を乱発してインフレになるのを防止するため。なのに、
> 通貨発行のコントロールを連銀から奪って赤字垂れながしの政府に
> 渡せというのは話があべこべだ

中央銀行の独立性の重要さはもちろん認めます。ただし政府だけでなく
資本家からも独立した中央銀行が必要なわけで、FRB のような株式銀行は
論外です。日銀は株主構成こそ半官半民ですが、実質的には
大株主である海外金融資本の影響を強く受けており問題が多い。
従来のシステムではユーロ導入前のドイツ連銀(ブンデスバンク)
のようなものがベストかと思います。

> 金本位制がいいって?大恐慌が起こった原因は何だったのか勉強してきなさい

これは経済学者の間でも見解の分かれる問題なので宿題としては難しすぎるかと
思いますが、たとえばバーナンキ現 FRB 議長(大恐慌の研究者としても著名です)は、
合衆国の金保有高が激増した当時、それに見合う通貨供給を怠った FRB の失策が原因、
としています。金本位制そのものに問題を認めない点ではロン・ポールも同じですが、
当時と違って不換紙幣と化したドルをどんどん刷っていいか、という点で
鋭い対立があります(もちろんその前に発行母体の問題があります)


以上は私の拙い認識ですのでロン・ポールの見解とは違う所も多いと思います。
また彼の政策がすぐに実現可能なものばかりとは決して思いませんが
合衆国の根源的な問題を照らし出す貴重な候補者であると考えています。
アメリカの政策の強い影響下にある日本でも注目すべきではないでしょうか。
ポール候補の政見と有権者の反応については Google 本社でのインタビューが
詳しく分かりやすいかと思います:
http://www.youtube.com/watch?v=yCM_wQy4YVg