今冬、岡山県南でも二度ほど雪に神経を使う運転を強いられた。天候が回復するとうそのように思えるのだが。
縁遠かった県北に勤務した最初の冬、冷たい雨がやんだ夕方、カーブでブレーキを踏んだ途端にスピンした。一回転以上し、車は横向きに道をふさぐ形で止まった。後続の定期バスがじわじわ減速し、ぎりぎりで止まってくれた。
降りてみるとツルツルで歩くことも難しい。一見普通に見えた路面は完全に凍結していた。「何度もブレーキを踏むから凍結の怖さを知らん人だと思って、車間距離を取っとってよかった」。バスの運転手の言葉が忘れられない。
状況の認知とそれに基づく判断・予測、続く運転操作。事故につながるミスは三段階のいずれかで起きる。財団法人交通事故総合分析センターの調査では、大部分が前の二つの段階という。バス運転手の状況認知と判断・予測は、極めて的確だった。
当方はそもそも凍結を認知できず、当然判断・予測も間違っていた。だが、最初の怖い思いが幸いしてか、その後、冬の道でも事故を起こさずすんでいる。雪道や凍結道はわがまま運転を決して許さない。ハンドルを握る側に、謙虚さを要求する。
脇道から車や人が飛び出しそうで、時に運転が怖くなったのもあの後だ。疲れるが、危険に備える防衛運転を教えてくれたヒヤリ体験に、今は感謝している。