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どうする 同和行政2008年01月31日 2月3日告示の京都市長選で、同和行政をめぐる議論が争点の一つになっている。前哨戦での議論や同和行政のあり方、桝本頼兼市長が市職員不祥事の一因に同和地区住民の就労対策として進めた「優先雇用」(選考採用)を挙げたことなどへの見方を、府内で活動する三つの同和、人権運動団体に聞いた。 ________________________________ ■部落解放同盟府連・西島藤彦書記長 「差別残る現実をよく見て」 02年3月に特別措置法が終わった。基本的には地区住民を対象にした同和行政は終わっている。我々の認識では、同和行政は個人給付や特別対策ではなく、部落差別の解消に向けた行政。完全終結する、しないというのは、差別が解消されたか否かがバロメーターだ。 市による市民の意識調査でも差別意識は色濃く現存しているし、ネット上でも洪水のように差別的な書き込みがある。ねばり強い啓発が必要だ。本来の行政施策のなかで差別解消を求めている。 市長選では、差別の現実をしっかり見た上で議論してもらいたい。コミュニティセンターなどの利用のあり方で問題があるなら、議論しながら変えていけばいい。それを飛躍して完全終結というのは違う。実態を見て、解決のために市民、行政、運動団体はどのような役割をするのか、という議論が必要だ。 「逆差別」と言われることについても、風潮で見られている部分があり、しっかりと市民と議論するべきだと思う。これまでの取り組みの成果と課題を分析しないと、次の議論ができない。 雇用促進で親の収入が安定し、子どもの教育が保障されたことは大きな成果だ。結果として不祥事があり、我々も反省した。だが、職員の処分は我々にはできない。職員には公務員としてのしばりがある。そこから議論をスタートするべきだ。 ■京都地域人権運動連合会・藤谷剛書記長 「一般市民の参加で終結へ」 差別は不当だと思える地域社会ができたら部落問題は解決したと提起して運動してきた。そういう意味では、問題は解決したと思っており、05年には幅広い人権問題に取り組む組織になった。 かつてはひどい差別もあって、69年に特別措置法ができてから二十数年間の同和対策事業の効果は非常に大きかった。ただ、80年代に過度の同和対策依存や、運動団体対応型の行政に批判が出た時点で、真摯(しんし)に同和行政終結の議論がなされなかった。我々も明確に終結方針を出せず、今思えば弱点があった。選考採用も一定のけじめはつけるべきだった。 同和行政は、国の施策がなくなった01年度には終わるべきだった。桝本市長は日本で一番の改革をやったと言っているが、同和奨学金などをずるずると続け、市民の批判を浴びている。ここまで部落問題が解決したんだという啓発をしないと、問題が温存されることになりかねない。 部落問題は運動団体の専売特許のようになって、市民参加がなかった。今後は一般市民も入れて議論していくべきだ。例えば、旧同和地区の住民向けの改良住宅は空き家が多く、市民に開放していく必要がある。 京都市は同和行政を一掃できておらず、特定の団体と市幹部のなれ合いも払拭(ふっしょく)されていない。市長選では、完全終結へ向けた議論を求めたい。 ■自由同和会府本部・上田藤兵衛会長 「人権のまちづくり 皆で」 京都市の同和行政は戦後一貫して、熱心に、非常に固い決意で地域の環境改善に努力してきた。ただ、事業が遅れて過疎化、高齢化が進み、生活保護率も高い地域もある。街づくりも行政指導型で、特定の運動団体が独占し、住民の意見が反映されていない。 過去の行政は主体性がなく、「同和関係者は同和対策でいい目を見たのではないか」と逆差別をあおる結果になった。市職員の選考採用は、任命権まで特定の運動団体に渡したことに問題があった。我々は運動は自前でするという考え方で、選考採用や補助金などの恩恵は一切受けていない。 特別措置法がなくなって同和事業を終結するのは当然だが、改良住宅の建て替え問題など一般施策の中でやっていくことはあり、地域全体として「人権のまちづくり」を進める必要がある。人権政策として啓蒙(けいもう)、啓発も必要だ。我々は人権擁護法の制定を求めてきたが、市議会も早期制定を求める意見書を可決している。市も差別の救済制度を確立してほしい。 同和行政終結へ向けた市の主体的な取り組みは評価できる。職員不祥事は任命権者の市の問題で、すべて選考採用の問題とするのは間違いだ。改革大綱をどう推進するかが重要。現象面を取り上げた批判があるが、市政の中で同和問題を含めた人権行政をどうしていくかを議論してほしい。 マイタウン京都
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