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【低学年放課後の居場所(2)】全児童対策事業…行き届かぬ指導員の目 (2/2ページ)
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わくわくについては、「いろいろな友達と遊べる」と評価する声がある一方で、初対面の子と交流せずに、一人遊びをする子も目立つという。
スタッフも留守家庭の子に特別な配慮はしない。市はわくわくを「遊び場であって、保育の場ではない」(青少年育成課)と位置づけているからだ。しかし、共働きや1人親家庭の子供はスタッフから声をかけられなくても、ほかに行き場所がない。
全国学童保育連絡協議会の真田祐事務局次長は「どんな子がくるか分からず、スタッフも固定しないのでは、子供は心を開けない。こういう不安定な場所が留守家庭の子の放課後の居場所になるのは好ましくない」と、情緒面への悪影響を心配する。
安全面への懸念もある。スタッフは1カ所あたり平均4人だが、正規職員は原則1人で、ほかはパート。高校生をシフトに組む場所もある。
スタートした平成15年、わくわくでは通院が必要な事故が約250件と多発した。小学校1年生の男児が2階から転落し、頭の骨を折る事故も。スタッフが1階に降りたすきのことだった。市は事故後、安全管理の徹底を指示。目が届く所で遊ばせる態勢を取り、緊急時のマニュアル作りや出欠確認を義務づけた。
自己は18年度に3分の2程度になったが、それでも骨折は38件。川崎市は「学校や以前の学童保育と比べても、発生率は高くないはず」とするが、保護者の間には懸念がくすぶる。
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全児童を対象にした放課後事業は他の自治体でも増えている。横浜市「放課後キッズクラブ」「はまっ子ふれあいスクール」▽大阪市「児童いきいき放課後事業」▽東京都世田谷区「新BOP」▽品川区「すまいるスクール」▽江戸川区「すくすくスクール」など。国の後押しもあり、今後も広がりそうだ。
しかし、保護者には川崎市同様の心配も広がる。江戸川区のすくすくスクールに通う柴田優実ちゃん(当時小学校1年生)=仮名=は遊んでいてけがをした。しかし、家庭への連絡が行き届かず、病院に行くのが遅れ、顔に傷跡が残ってしまった。母親は「職員数は決まっていても、子供の数が一定しないから、目が届かない。安全管理が不十分なのは納得できません」とする。
「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は待機児童が減る効果などを評価しつつ、「留守家庭の子供は疲れていたり、熱が出そうでも、家に帰れない。心身を休められる『第2の家』の機能を確保してほしい」と配慮を求めている。
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【全児童対策事業】親の就労にかかわらず、すべての子供に放課後の居場所を提供する自治体の事業。地域の人の参加を得て、学習やスポーツなどに取り組む。