串本町大島の近畿大学水産研究所で3日、養殖魚の親魚として飼育されていた養殖クロマグロ(重さ325・4キロ、全長2・6メートル)の出荷作業があった。次の世代の親魚が育ったため、売却を進めており、今回は埼玉県に本部のある回転ずしチェーンが新店舗開店記念のイベント用に買い取った。 27メートル四方のいけすには近海で捕獲された稚魚から育てた10歳と11歳が11匹いたが、1月ごろから、随時売却している。今回つり上げたのは5匹目。残りのほとんども予約が入っており、今年中に売却が完了する見込み。 重さ300キロ級の採卵用の親魚の出荷は2002年以来2回目。通常の養殖は20〜70キロで出荷するため、大型の養殖マグロの出荷は珍しいという。 職員がタイミングを見計らい、1匹の頭部に約3メートルの電気もりを突き刺した。120ボルトの電流を流し、ショックを与えると、クレーンでつり上げ、素早く血や内臓を取り除いた。冷蔵保存し、6日に出荷するという。 養殖は1キロ約4000円と天然物の半額程度で取引される。約1500人が満腹になるほどの身が取れるという。 岡田貴彦技術員(49)は「身の締まりでは天然の方が人気があるが、養殖も脂分が多いことなどから評価が高い」という。 研究所は02年に人工ふ化させたクロマグロの稚魚が成魚となって卵を産み、ふ化する完全養殖に世界で初めて成功している。