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【社説】

診療報酬改定 医師会へ遠慮しすぎだ

2008年1月31日

 二〇〇八年度の診療報酬改定が中央社会保険医療協議会で合意された。国民にとってプラス面があるが、財源配分の帳尻合わせの感も否めない。分かりやすい診療報酬体系を目指すべきだ。

 〇八年度からの診療報酬は昨年十二月の政府・与党協議で、薬価を除く医療行為など「本体部分」の0・38%の引き上げが決まった。この枠内でいかに効率的に財源を配分するかが注目された。

 評価できるのは診療所(開業医)に振り向けられていた財源をある程度減らし、その分を崩壊の危機に瀕(ひん)している病院の産科、小児科、救急医療などに盛るようにしたことだ。

 今後この動きに弾みをつけ、国民が安心して出産・育児ができるようにしてもらいたい。

 問題は財源の捻出(ねんしゅつ)の仕方だ。

 診療報酬引き上げ分を病院勤務医らが担う医療に回すほか、一定の医療処置をしない場合でも「医学管理」の名目で請求できた診療所の「外来管理加算」を抑制し、浮く分を病院医療の充実に充てるのはいい。

 だが、病院の再診料(五百七十円)よりも高い診療所の再診料(七百十円)については、引き下げを見送った。病院と診療所の格差是正の必要性は以前から指摘され、二年前の改定で初診料はようやく二千七百円に統一されたが、再診料の是正はほとんど進んでいなかった。

 日本医師会は診療所の再診料が高い理由について「地域医療を支えている」と引き下げに反対してきた。

 確かにそうした診療所は少なくない。だが、ビルで開業し夜間の診療を受け付けない診療所もある。一律に「地域医療」を担っていると言われても国民は納得できないだろう。

 病院の再診料が低いことが病院へ患者が集中し、勤務医の労働を過重にしている要因でもある。

 診療所の再診料に施設整備費が含まれるとしても、病院に比べあまりにも高く設定する理由には乏しい。

 中医協は診療所の再診料引き下げを見送る一方、病院の再診料を引き上げて格差を縮めるが、なぜ一律に診療所再診料が高止まりかという国民の疑問には答えていない。医師会へ遠慮しすぎだ。

 受けた医療内容が分かる詳しい明細書の発行について前回改定で「努力義務」となり、今回は患者の求めがあれば発行が義務化されるが、対象は四百床以上の病院に限られる。

 これからの医療には何よりも透明性が求められる。それが患者の医療費への関心を高め、無駄を除くきっかけにもなる。すべての医療機関に明細書発行を義務付けることを早急に検討すべきである。

 

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