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2008年1月31日

◎地銀の決算 気にかかる投信市場の縮小

 北陸で順調に売り上げを伸ばしてきた投信販売に急ブレーキがかかり始めた。北國銀行 の第3四半期決算を見ても、投信販売はふるわず、預金が急増している。金融商品取引法の施行と株式市場の低迷が原因であり、北陸の他の金融機関も事情は同じだろう。ようやく日本で育ちかけてきた投信市場が縮小に転じたのは気になる。

 東京証券市場はこの十年、企業の持ち合い解消が進み、外国人持ち株比率が増加の一途 をたどった。最近では原油高で潤うオイルマネーやヘッジファンドなどである。売買代金に関して言えば、東証のシェアの半数以上が外国人投資家であり、彼らの影響力は、日本の証券大手や機関投資家をしのぐと言われる。

 投信販売は、日本の金融資産を貯蓄から投資へと誘導する重要な役目を負っている。投 信販売シェアの半数を握る銀行が、投信を通じて、日本人株主を増やしていくことは株式市場の安定につながり、国益にもかなう。金融機関には販売手数料が入り、企業は投資のための資金調達が容易になるからだ。サブプライムローン問題のような国外事情で、自国の株式市場が乱高下する状況を脱するためにも、貯蓄から投資への流れをせき止めてはならない。

 北國銀行などで、投信市場への資金流入が細っているのは、金融商品取引法の完全施行 に伴い、顧客へのリスク説明などに要する時間が大幅に増えたためである。購入まで一時間もかかるような商品を、顧客は買いたがらず、売る方も避けようとするのは無理もない。金商法が投信販売の激減という「行政不況」を招いてしまった。

 最近の日本株が異常な乱高下を繰り返すのは、膨大な資金を操る外資が短期利益を狙っ て、さまざまな仕掛けをしてくるからだという。長期投資を目指す投資家には迷惑な話だが、自国の市場を食い荒らされぬようにするには、千五百兆円といわれる個人金融資産を徐々に株式市場に誘導し、厚みを増していく必要があろう。

 バブルのころ六百兆円を超えていた東証の上場企業の時価総額は、現在五百兆円足らず 。ニューヨーク市場はこの間、四百兆円から実に千五百兆円にまで膨れ上がった。株式市場の成長なしに経済の拡大もない。

◎つなぎ法案取り下げ 与野党協議の道開かれた

 与野党が衆参両院議長のあっせん案を受け入れ、「つなぎ法案」をめぐる対立の矛をひ とまず収めたことは大人の対応といえ、自民、民主両党が責任政党としての自覚をともかく示したものと評価できる。政局優先の「審議なき国会」では、与野党とも国民の支持を得られない。道路特定財源の暫定税率について、文字通り審議を尽くし、年度内に賛否を決してもらいたい。

 議長あっせん案では、新年度予算案と予算関連法案について「年度内に一定の結論を得 る」という幾分玉虫色の表現になっているが、暫定税率などの「日切れ法案」を年度内に確定し、国民生活が混乱することがないようにしてもらいたい。

 与野党が議長あっせんに合意し、与党がつなぎ法案を取り下げたことは、憲法の「六十 日ルールによるみなし否決」や「衆院の再議決権」に頼る国会運営を慎むということである。また、野党も暫定税率の期限切れを狙った審議引き延ばしなど党利党略的な戦術は取らないという意思表示をしたものであり、これにより与野党の政策協議の道が確保されたと受けとめることができる。

 与野党協議で望まれるのは、譲り合いの気持ちである。互いに歩み寄る努力をしないと 修正協議は成立しない。徹底審議といって主張し合うだけでは、元のもくあみになりかねない。与野党が折り合うための一案として、与党は道路特定財源の一般財源化を拡大することを真剣に考えてはどうか。〇八年度で五兆円以上の税収が見込まれる特定財源のうち、一般財源化されるのは約千九百億円にとどまる。

 暫定税率の継続は、国と自治体の財政維持のためにやむを得ないと考えるが、今後、一 般財源化を増やすことで与野党の妥協を図るのは可能であり、国民の理解も得やすいのではないかと思われる。

 また、日切れ法案では揮発油税の暫定税率が焦点になっているが、牛肉やたばこの関税 の軽減措置、中小企業の設備投資促進税制、国際金融取引の非課税措置なども含まれている。年度内に成立しないと、これらの「減税措置」は期限切れとなり、国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼすことになる。


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