2008年01月31日 更新

オシム前監督が生観戦…杖つきながらも自分の足で会場へ

急性脳梗塞で倒れて以来、初めて公の場に姿をみせたオシム前監督(撮影・鈴木健児)

急性脳梗塞で倒れて以来、初めて公の場に姿をみせたオシム前監督(撮影・鈴木健児)

アシマ夫人(左)ら家族につきそわれて会場に入った(撮影・鈴木健児)

アシマ夫人(左)ら家族につきそわれて会場に入った(撮影・鈴木健児)

 キリンチャレンジ杯(30日、日本3−0ボスニア・ヘルツェゴビナ、国立競技場)イビチャ・オシム日本代表前監督(66)は、昨年11月16日に急性脳梗塞(こうそく)に倒れて以降、初めて公の場に姿を見せ、試合を観戦した。

 ハーフタイム。大型ビジョンに“雄姿”が浮かぶと、満場の大拍手がわきあがった。

 「ご来場の皆さん、今晩は。そしてボスニア・ヘルツェゴビナ代表の諸君、日本へようこそ。私は治療を続けておりますが、これまでにご支援を頂いた全ての皆さんに改めて感謝いたします」のメッセージとともに、手を振るオシム前監督の姿が映し出された。昨年11月16日に急性脳梗塞(こうそく)で緊急入院。公の場に出たのは入院前日の同15日、千葉の練習視察以来だった。

 入院中の都内の病院から、協会スタッフが運転する車で到着。車を降りると、入り口まで約20メートルを、右手に持つ銀の杖と夫人のアシマさん、看護師の手助けを借りながら、ゆっくりと自分の足で歩みを進めた。

 メーンスタンド最上段のVIP席で観戦。スーツに身を包んだ体は、ひと回りやせた感じで、顔もやつれ気味。それでも試合中はデザートを口にして笑みを浮かべた。日本協会・川淵キャプテンによると、高円宮妃殿下と対面のときは立ち上がってあいさつ。周囲が座るようにすすめると「妃殿下の前では10時間でも立っていないと」と笑いを誘った。

ハーフタイムに映し出された、オシム前監督のメッセージ

ハーフタイムに映し出された、オシム前監督のメッセージ

 「両国代表が『南アフリカ』で再び対戦することを期待しています」とメッセージを締めた前監督は、今後も毎日4時間のリハビリで復帰を目指す。意識回復に10日間を要し、生命の危機をさまよったことを思えば驚異的な回復ぶりだ。試合後は出口で母国ボスニア・ヘルツェゴビナ協会の関係者と4分間ほど立ったまま会話。その表情は、来場時よりも明るく映った。

(須田雅弘)


【ファンの声】

◆川崎寿さん(東松山市、会社員、59歳)

 「きょうはオシムが勝たせてくれた試合。これで元気になってくれれば…。こみ上げてくるものがあった」

◆井上寛子さん(西東京市、会社員、29歳)

 「やせこけていたようにも見えたが、ホッとした。本当にうれしかった」

◆高橋一郎さん(川崎市、会社員、40歳)

 「これからも日本代表を助けてほしい。今後、どのように携わってもらえるのか知りたい」

★スタンドの空席目立つ

 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の公式入場者数は2万6971人。冬場の平日開催ということもあり、空席が目立った。国立で行われた近年の日本代表戦では、2万2544人だった1995年9月のパラグアイ戦に次ぐ不入りだった。