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2005.03.10

東京大空襲60年

 昭和20年(1945年)3月10日未明の東京大空襲から、今年でちょうど60年になる。日本では広島長崎の原爆についてはあれこれ語られることが多いが、東京大空襲についてはあまり語られることがなかったように思う。戦時中は日本の大都市ならどこもたいてい空襲にあっていたから、東京に空襲があったからといっても特別なこととは考えなかったのかもしれない。しかし数ヶ月かかった沖縄戦の死者が18万8000人、広島長崎の原爆も被爆当日の死者は合わせて4万人に満たない。しかし東京大空襲ではわずか一晩に10万人が殺されたのだから、これはある意味、広島長崎の原爆以上の被害を出した、人類史上まれに見る戦時虐殺とも言えるのだ。

 僕が現在住んでいる本所深川地区は、東京大空襲でもっとも被害が大きかった場所だ。そういう意味で僕自身は広島長崎の原爆以上に東京大空襲を身近に感じるのだが、3月10日は8月6日や8月9日ほどには、日本人に広く知られていると言いがたい。ましてや外国人はほとんど知らないだろう。

 広島長崎の原爆ですら、日本人の記憶からはどんどん遠ざかっているのが現実だろう。それが東京大空襲に至っては、そもそも知っている人すら少ないのだからお話にならない。かく言う僕が東京大空襲を知っているのは、岩波新書から出ていた早乙女勝元の「東京大空襲―昭和20年3月10日の記録」によるところが大きいのだが、このロングセラーも現在は版元品切れ状態らしい。東京大空襲60周年に大増刷してくれればいいのに……。

 東京大空襲を扱った文学作品は多いはずだが、中でも有名なのは高木敏子の自伝的な児童文学「ガラスのうさぎ」だろうか。これは今年アニメ映画になるが、独立プロの自主上映運動でどこまで一般まで浸透するかどうかは疑問。これは海老名香葉子原作のアニメ映画「あした天気にな~れ!/半分のさつまいも」でも同じことだけれど……。

 「ガラスのうさぎ」はずっと以前(1979年)に一度劇映画になっている。海老名香葉子さんが東京大空襲で家族を失った話も、以前に「うしろの正面だあれ」というアニメ映画になっている(1991年)。でもこうした映画を観た人たちって、いったいどれぐらいいるんだろうか。上映組織はあるからホール上映や学校上映のためにプリントを借りようとすれば借りられるし、図書館や公民館などでも上映会が行われているのかもしれない。でもこういう独立プロの良心的な作品というのは、なかなかビデオやDVDにならないんだよな~。

 もっともこうした作品がビデオやDVDにならないのは、パッケージ化した途端に市民団体のみなさんがせっせと海賊版コピーを作ってあちこちに配布してしまうからかもしれない。「こんな素晴らしい作品を世に広めたい」とか、「作品が訴えかける平和のメッセージを多くの人に伝えたい」というきわめて真面目で誠実で良心的な目的で行われるコピーも、やっぱり海賊版には違いないから、作品の製作者にとっては大打撃。でも製作者側も「作品を広めたい」という気持ちは同じだから、「違法コピーをするな」となかなか言い出せない。で、そういうことを言いたくないから最初からビデオもDVDも作らないに違いない……と、僕は勝手に勘ぐっている。

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08:01 午後 | 固定リンク

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