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「博士」の教員採用 明確な位置付けが必要

 県教育委員会が2008年度から博士号取得者を正規教員として採用することになり、2月1日に選考試験の書類受け付けを開始する。専門的知識を有する最高学位の「博士」に絞って公教育の教員を募集するのは、全国的にもユニークな試み。初年度の採用枠は若干名というが、本県の教育現場にどのような刺激と効果をもたらすことができるのか注視したい。

 博士号取得者の教員採用が具体化したのは、昨年9月の外部専門家による知事の補佐機関「県発展戦略会議」で、委員から提言があったのがきっかけ。提言を受け、寺田典城知事は「本県の教員は皆同じタイプの人が集まっているのではないかと心配している」とし、「新しい血を吹き込むために全国から公募して配置してはどうか」と実現に前向きな姿勢を示した。

 これに対し、根岸均県教育長は「必ずしも名選手は名監督ではなく、リスクがある」などと難色を示したが、同11月の戦略会議では知事の強い意向に押し切られる形で08年度からの採用方針を表明。いくらスピード感が必要とはいえ、教育現場の意向を十分把握する時間もあまりないまま採用方針が決まったことには唐突さも残る。

 今月10日に公表された博士号取得者の特別選考実施要項によると、「高度な専門知識や技能を持った優れた人材を教員として迎え入れることにより、学校教育の多様性への対応や活性化を図る」のが採用目的。職務内容としては「地区の拠点校や県総合教育センターなどに所属し、小中学校、高校において高い専門性に裏付けられた知的世界に触れる機会を提供する」など5点を挙げている。

 「高度な専門知識」によって子どもたちの知的好奇心や学習意欲を喚起し、授業の改善にもつなげようという狙いは分からないでもない。だが、目的も職務もやや抽象的で、公教育になぜ博士号取得者が必要なのか明確なビジョンがよく見えない。「高度な専門知識」を有するのは何も博士号取得者だけに限らないし、それを義務教育という段階でどう生かせるのか具体策を検討する必要もあろう。

 ただ、採用方針決定の経緯や目的などの抽象性はともかく、現在の教育現場が閉鎖的という批判があるのも事実。全国的には広く教員の人材を求めて学校を活性化させようと、教員免許を持たない人に「特別免許」を与え、正規の教員として採用する制度を活用している教委が急増中だ。今回の博士号取得者の採用は、本県としては初の特別免許制度の活用となる。そうした従来の殻を破り、教育現場に刺激を与えるという意味では注目される事業といえよう。

 昨年4月に文部科学省が実施した全国学力テストで、本県の小学生、中学生はいずれもトップレベルの成績を収めた。課題は高校教育でいかに能力を伸ばすかにあるとされ、今回の博士号取得者の採用もそうした事情が背景にあるとの指摘も聞かれる。だが、公教育の基本は知識の詰め込みではなく、子どもたちが自主的に考え、適切に判断し行動することを身に付けさせることである。基本を再認識して「専門性」を生かしたい。

(2008/01/30 09:07 更新)

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