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連携した素早い対応を

2008年01月30日

 米国のサブプライムローン焦げ付きによる関係金融機関の連鎖的な損失拡大は、企業業績の悪化と相まって株価の大幅な下落を招き、世界の金融・証券市場にも影響を与えている。今後、株価低迷の長期化や金融収縮が顕在化してくれば、世界的なリセッションにつながる恐れもある。

 わが国経済は、過去6年にわたって好調な輸出が企業収益を改善させ、民間設備投資を促進して生産を拡大し、長期の成長を実現してきた。この流れは今も変わっていない。

 12月の貿易統計では、輸出は対前年同月比6.9%増と伸び率を鈍化させたが、前年に比べ1日少ない営業日や円高を考慮すれば、比較的高い水準を維持している。これは米国向けが4カ月連続でマイナスとなり、西欧向けも1.5%増と急速に鈍化したにもかかわらず、(1)中国向けが比較的高水準を維持したこと(2)インド、インドネシア、タイ、ベトナム、ブラジルと人口の多い国向けが極めて好調なこと(3)ロシア、中東、アフリカ、豪州など資源国向けが大幅な伸びを示したこと(4)わが国が強い競争力を持つ自動車、産業機械、化学製品、鉄鋼が高い伸びを維持したことによる。

 つまり、米国の景気の減速は明らかであるが、前述の国・地域は経済拡大や所得の向上、さらには資源価格の高騰による収入の増加によって、設備・建設投資や個人消費などの内需が盛んであり、しばらくは経済成長が続くものと予想される。しかし、これらの国・地域の財・サービスの需要先は世界のGDPの25%を占める米国であり、景気減速の影響は避けられない状況にある。今求められているのは、世界が協調して財政・金融政策を総動員して、有効な手段を次々と打ち出し、株価の下落や金融の収縮、投資・消費の低迷を食い止めることである。各国政府の連携した素早い対応を望みたい。(創)

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