いまさら、どんな紹介もいらないでしょう。
明石家さんまさんの登場です。
今回、ほぼ日で「睡眠」の特集をするにあたり、
この人が出てくれたら最高だなぁということで
夢のように名前を挙げていたのが
「とにかく寝ない人、明石家さんまさん」でした。
ほぼ日にかぎらず、こういった取材ものには
ほとんど登場しないといわれる明石家さんまさんですが、
多忙を極める中、時間を割いてくださいました。
脱線大歓迎、というスタンスで臨んだ糸井との対談は、
予想どおり、いえ、予想をいい意味でおおいに裏切る
「おもしろい時間」になりました。
全17回、どうぞたっぷりお楽しみください。
ああ、そうそう、この対談は期間限定の掲載となります。
睡眠特集の終了とともに読めなくなってしまいますので
どうぞ、読み逃しのないように!

「いつか無くなるものを求めちゃいかんのだよ。
無くなるものは、求めるためではなく、
そいつで遊ぶために、この世にあるんだからな」
(『セフティ・マッチの金の言葉』より)

第1回 寝ない人 第10回 動物とサッカー
第2回 ずっと元気 第11回 ハズレをつかむ快感
第3回 そんな生活はできない 第12回 落合采配
第4回 昔から、ずっと 第13回 考えてる時間
第5回 寝てられない 第14回 生きてるだけで丸儲け
第6回 シリコン 第15回 追いつかないんですよ
第7回 さんまシステム 第16回 幸せってなんだっけ?
第8回 負けてるときは 第17回 師匠
第9回 ピヨヨヨヨン    
第9回 ピヨヨヨヨン
さんま あの、間寛平という人のギャグでね、
「ピヨヨヨヨン」というのがあるんですけどね。
これは、まぁ、世間的には
あんまり流行ってないんですけど。
糸井 (笑)
さんま なにかというと、昔、
ポーカーゲームというのがあったんですね。
あの、テーブル型のゲームでね、
単純に、コインを入れて、ポーカーをやって、
ビッグ・オア・スモールで
ダブルアップしていくやつなんですけど。
それが昔、流行ったんですね。
で、また、寝ずにずぅっとやってると、
もう、笑うんですよ。
何時間も顔上げずに続けてると、
なんていうか、わかってくるんですね。
たとえば、スリーカードかなんか役がそろうと。
そうすると、ビッグ・オア・スモールで、
こう、ボタンを押していくんですけど、
当たると倍になっていくんですね。
ポーン、ポーン、ポーンと倍になっていく。


で、「あ」と思いながら、
タンって押すと、負けるんですね。
そのときの音が(がっくりとうなだれながら)
「‥‥‥‥ピヨヨヨヨン」。

一同 (笑)
さんま いや、だからね、
「ピヨヨヨヨン」はね、
あの、魂の叫びなんです。
糸井 うん(笑)。
さんま もう、負け続けるとね、
「しもうた」とかね、「くっそぅ」とかね、
そんなことばがなくなってくるんです。
糸井 音になっていくんだ。
さんま 音になっていくです。
「ちくしょう!」とか、
「見とけよ!」とか言ってるときは、
まだ大丈夫なんです。
もうね‥‥「ピヨヨヨヨン」。
一同 (笑)
糸井 なるほどね(笑)。
さんま ダメなときのピークはね、
擬音とか効果音に近くなっていくっていうことが
ほんとによくわかるんです。
だから、よく世間の人は、
「『ギャフン』なんて、言わないよ」とか、
そういうことを言うんですけど、
あれ、言います。言うんです。
糸井 (笑)
さんま 「ギャフン」に近いことばを言うんですよ。
糸井 つまり、けだものの声ですね。
さんま はい。ほんとうにそうです。
「‥‥ポックリ」とかね、
「‥‥ペキーン」とかね、
そういうことしか
言えなくなるときがあるんです、人間。
糸井 はぁー。
さんま なんか追い込まれたときって、そうでしょ。
奥さんとかに追い込まれたときとかね、
思わず、「‥‥ぐんて」とか。
あれ? オレいま、なんで、
「ぐんて」なんて言うたんやろ?
みたいなことになるんですよ。
糸井 ほんとに追い込まれると(笑)。
さんま はい。言うてしまうんですよ。
それの頂点が‥‥。
ふたり 「ピヨヨヨヨン」。
一同 (笑)
さんま いや、ほんとね、
日本がもっと博打やってる国ならね、
「ピヨヨヨヨン」はね、大ヒットする。
糸井 はははははは。
さんま これ、間違いないです、本当に。
糸井 そうすると、寛平さんのほかのギャグも、
けだものの声であるというか、魂の叫び。
さんま はい。「アヘアへ」とかね。
糸井 その音だったんですね。
さんま 平凡なサラリーマンの方からは
絶対出ないことばです。ええ。
糸井 寛平さんは、いまでもその、
苦しい状況を自らつくりだして
番組の中で、音を発してたりしますね。
さんま します、します(笑)。
糸井 『明石家電視台』
(さんまさんが司会を務める毎日放送の深夜番組。
 全国放送ではなく、いわゆる関西ローカル)

なんかに出てるときも、
寸前まで、なんにも用意しないで。
さんま クワー(笑)。
糸井 自分で自分をいったん空っぽにして、
さんまさんが近づいてきたときに
「危ない」と思ってなんか言う、みたいな。
さんま あのへんのあれもね、
ある種、裏をついてる状態なんですけどね、
それをやると終わりだともいえるんですけど、
あのう、そこに果敢に挑戦なさってる(笑)。
糸井 挑戦してますねぇ(笑)。
おまえなら拾ってくれるだろうっていうか、
さんまさんなら、
ちゃんと怒ってくれるだろうって
完全に当てにしてるというか。
さんま 見ていただいてありがとう。
一同 (笑)
さんま だから、ぼくは好きですね、
あの番組は、やってて。
糸井 いや、ぼくは『電視台』が好きで、
東京でやんないのが惜しくて。
さんま クワー(笑)。
東京では、誰も見ないです(笑)。
糸井 そうですかねぇ。
さんま いやいや、あれはやっぱり、
関西のあの時間であの状況で、
やるからできるわけで。
糸井 「ピヨヨヨヨン」が絶えず聞こえてますよ。
さんま ああ、「ピヨヨヨヨン」です。
糸井 「ピヨヨヨヨン」ですよねぇ。
さんま だって、58歳のおっさんが、
追い込まれて「うんこ」って言うんですよ。
一同 (爆笑)
さんま 「うんこ」って言えばおもしろいと思うのは
小学生低学年とか、幼稚園でしょう。
糸井 そこまで、追い込まれてる(笑)。
さんま あれは、もう、笑いましたねぇ。
ああ、人間っていくつになっても
追い込まれたら「うんこ」って言うんだって。
一同 (笑)
さんま だから、考えていくと、
「うんこちんちん」に近いギャグに
たどり着いてしまうというか、
たどり着きやすいんですよね。
糸井 快感の源なんですね。
さんま はい。たぶん、そうだと思いますね。
  (続きます)
   
2008-01-30-WED

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN