活動を通して見えてきたこと

活動履歴

全国的な問題として要望します

 この運動を立ち上げた時点では、とにかく市長と病院長に医師の招へいを要求せねばならない、そのために署名活動をすることで市民の不安を訴えよう、という切羽詰った問題の解決が急務で、ゆっくり議論を交わす時間もありませんでした。しかし、さまざまな意見を踏まえ議論する中で、この問題は市だけのものではなく、滋賀県、そして全国の問題であり、厚生労働省に私たち市民の声を届け、医療制度の見直しを要求しなければ解決はできない、ということが見えてきました。そこで、嘆願書は市長と、知事宛に出すことに変更し、短期的には市長へ、従前の機能(リスクの高い分娩、緊急手術等)を存続させるため、医師の招へいなどあらゆる手だてを尽くすことを要求する一方で、知事宛には、県内の医療における地域格差をなくすよう求めると同時に、厚生労働省への医療制度改善の働きかけを要望することにしました。

お互いが理解し歩み寄ることが必要です

 実際、立ち上げたHPのゲストブックへの書き込みからは、全国の産婦人科医からの過酷な勤務状態、訴訟の多さ、そしてマスコミによる過熱報道など、産科医不足の要因を窺い知ることが出来ました。私たち医療の受け手には、医療行為が過失無く安全になされることを望む権利があると思いますが、一方で、医療に対する過度な期待は、時として懸命に医療に取り組んでおられる医師を追い詰めるという現実も直視せざるを得ませんでした。この産科崩壊という危機を乗り越えるためには、医療を提供する側と受ける側が、お互いを理解し歩み寄ることが求められているように思います。

安易な集約化では私たちの安心は得られません

 前述のような理由による深刻な産科医不足の中で、ハイリスクな分娩や救急医療を取り扱う病院に、ある程度産科医を集約化することは、当面はやむを得ないかもしれません。しかし、今後健康で正常なお産も一律に、遠方の集約化された病院に行くしかないということになれば、私たちは出産に大きな不安を抱かざるを得ません。

 同時に私たちは、特別な理由がなくとも高度な医療を提供する中核病院に集中しがちであった、今までの傾向を考え直す必要があるのではないかと感じています。そのためには正常な分娩のために、中核病院に取って代われる、診療所や助産院などの身近な出産場所の受け皿が確保される必要があるでしょう。

 そして今までのような大規模な分娩施設としては難しくとも、妊娠中からハイリスクが予想される場合や妊娠・分娩中に異常が起こった場合のために、迅速に医療の助けを得られる中核病院として、彦根市立病院を是非とも必要としているのです。

 私たち産む側の姿勢も変えていけたら

 さらに私たちは、産む側も、最初から医療を頼りにするような出産観を変革していく必要があるのではないかと感じています。病気になっても、「病院の先生が治してくれるから、大丈夫。」「お薬を飲めばいい。」などと考えて、現代人は自分の身体と向き合うことを怠ってきたのではないでしょうか。食事や生活を見直すことで防げる病気はたくさんあるのです。お産も、自分の身体や赤ちゃんの状態を常に感じながら日々を大切に過ごすことによって、決して「病院で産ませてもらう」のではなく、本来ならば大部分は医療の介入なしに「産む」ことができるものなのだということを知らなければならないと思います。お産は大昔から続く自然の営みですが、現代のように医師主体、病院主体な姿勢では逆に安全が保障されかねる一面もあるのではないかと思います。まず妊産婦自身が食事や運動、生活様式を見直し、最大限の身体の準備をして自律的に出産の時を迎えることが、安全なお産をするために一番大切なことだと思います。

  そしてまた、お産は病気ではないとはいえ、危険な状況になることはその中でも起こってくるでしょう。私たちは日々何気なく当たり前のように、科学の恩恵を受けながら生きています。

 一昔前なら助からなかった命が助けられるようになり、もっともっとと要求を重ねていきがちです。しかし、どれだけ手を尽くしても助けられない命があることを忘れてしまい、人間の力ではどうすることも出来ない状況に対しても誰かを責めてしまう傾向がなかったでしょうか?ここにも産む側と医療者側との歩み寄りの余地を見出していけたらと感じます。

 市民が声をあげることが第一歩

 署名活動なんてやっても無駄、という意見も数多く寄せられました。しかし、私たちはこの活動を続けることが、医療崩壊の現実を世間一般に広く知らしめ、各々が自分自身の問題として考えるきっかけをつくると信じ、そのために行動を起こしていくつもりです。厚生労働省は市民の声に動かされます。そして、市民の意識は、一市民の声が届くことによって変わっていきます。市民が声をあげることは、医療崩壊の問題を解決するための一助になると、私たちは信じています。  

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