議会ライブ

2007年(平成19年) 第4回定例会 12月議会

#反対討論 牧野直子議員 

●住民基本台帳ネットワークシステムの適正な運営を求める決議

(1)決議すべき内容ではない

まずもってこのような決議案が出されたことを大変遺憾に思います。本来、意見書や決議というのは議会の総意として表明すべきものです。したがって全会一致が大原則です。
例えば、国際問題について、2001年には「米国の同時多発テロに関する決議」を、2003年に「イラク問題の平和的解決を求める決議」を、箕面市議会として全会一致であげてきました。
 これらをみても、少なくとも幹事長会議で会派間の調整を経て、成立してきた経過があります。調整がつかない場合には、最終的に多数決で決めることになったとしても、かつてはそこに至るまでの努力は行われ、少数意見にも配慮がされていました。しかし、最近は、その努力をせずに、いきなり多数決で決めてしまう傾向が強くなってきています。

今回は、12月17日、民主市民クラブの幹事長である石田良美さんから、私たちに説明があり、翌日の幹事長会議に提案されました。すでに自公民の3会派の提案ですので、幹事長会議に出された時点で可決される見通しがついている状況です。

住基ネットの対応については、委員会の中でも、大阪高裁判決の履行を一日も早くすべきであるという意見と最高裁の判決まで待つべきという意見とに分かれていました。このように議会の中で明らかに意見が割れている案件を、数の論理で市議会の決議としてあげることは、民主的な議会運営を逸脱しています。幹事長会議で、決議になじまないので取り下げることを求めましたが、聞き入れられませんでした。先ほど提案者の一人である石田議員の答弁の中に、顧問弁護士の意見を聞くようにという働きかけを行い、市長もその意向に沿って、意見を聞くということでした。それなのに、今の時期にあえて議会の総意として、決議を上げるべきではないということをまず意見として述べておきます。

(2)内容に問題あり

次に、内容について3点問題点を指摘しておきます。

@まず、間違った認識に立っていることを指摘しておきます。

文面の8行目に次のように書かれています。

「市長の管理権限の及ばない大阪府のサーバ内の本人確認情報すべてを職権消除することにおいて違法であること」。

これを読むと、これまで延々と行ってきた議会での議論や住基ネットシステム検討専門員の答申、弁護士の意見書などは一体なんだったのかと全く空しくなります。とくに9月議会の斎藤議員の質疑や上田議員の住基ネットの「システム上の不備」についての質問に対する答弁など、さんざん議論し、理解を深めてきたはずなのに、これまでの議論の積み重ねが全くもって活かされていません。

住民基本台帳法では、住民基本台帳の管理は自治体固有の事務であり、住基法36条の2で、「市町村長は住民基本台帳事務にあたり、適切な管理のために必要な措置を講じなければならない」となっているのですが、システム上ではコミュニケーションサーバという住基ネットシステムをつなぐ機器は、箕面市の管理下にあるにもかかわらず、裁量権が自由に発揮できない仕組みになっていること。そのために、適切に管理するための緊急避難的な方法をとろうとしていること。また、住基法では大阪府には大阪府としての役目が明記されているにもかかわらず、現実にシステム上では、市から送信されたデータは自動的に大阪府のサーバを通して全国サーバーに送られる仕組みになっていること。

このように、法律とシステムが合致していないことが、今回の大阪高裁判決を履行するに当たっての検討の中で明らかになったのです。このことを共通認識として、まず、職員も議員もお互いに確認することが何より大切ではないでしょうか?

答申はそのことを踏まえて住民票コードの削除方法を提案しており、松村弁護士の意見書も同じ観点の指摘をしています。ただ、違法かどうかの不毛の議論を繰り返すことに貴重な時間とエネルギーを費やすことは、決して箕面市民のためにプラスになるとはいえないでしょう。
 この事実を議会で共有し、箕面市議会として、こぞって、住基ネットを運用している全国の自治体と国に対し、住基法という法律と住基ネットというシステムの不整合を正し、自治事務を適正に執行できるよう声をあげていくことのほうがよほど、意味があるのではないかと思います。

Aつぎに決議の内容が不適切であるという点です。

「職権消除コードの記録や選択制はもとより控訴人の住民票コード削除についても最高裁判決が出るまで実施しないことを強く求めるものである」とあります。
 大阪高裁判決を確定させたのですから、一刻も早く、控訴人の住民票コード削除ということを実施しなくてはなりません。原告が望んでおられることは、「自分のデータを住基ネットに流さないで」ということなのです。 それが1年を経過してまだ実現できていないのです。 最高裁の判決が出るまで待たなければならない理由はなんらありません。
  先日の民生常任委員会でも早急に実施することを求める意見が出されており、また、この件については、議員の総意とはいえないことが提案前からすでにあきらかになっています。私自身も、現在権利侵害の状態に置かれたままの控訴人についての権利回復については、早急に実施するのが市としての務めであると考えます。
  したがって、この決議内容には到底同意できるものではありません。

B全体として市民不在の決議である

この決議文には当事者である控訴人の立場がまるで考慮されておらず、市長の判断に対する批判に終始している内容となっています。「利便性を享受したい人の権利を侵すことなく、一方で個人のプライバシーを一番大切にしたい人の権利を尊重する」とする市長の姿勢は、市民の立場にたった極めてまともなものと受け止めています。議会としても、「職権消除は違法」という思い込みから脱却し、控訴人だけでなく「住基ネットにつながないでほしい」という思いを強くいだいている市民の願いにも真摯に耳を傾けるべきではないでしょうか? 
 法律は、本来は市民の願いを実現するためにこそあるのであって、市民を縛るためにあるのではないと思います。総務省は、箕面市がとろうとしている方法について、「違法のおそれがある」としていますが、私たち議員は、総務省の役人の代弁者ではなく、箕面市民の代弁者であるべきです。
 いずれにせよ、今回の市民不在の強引な決議に対しては断固反対します。
 また、先ほど「最高裁で、仮に選択制を認める判決が出たら、それに行政は従わなくてはいけない」という発言がありましたが、そんなことはありません。司法と行政は別です。
 三審制より三権分立の方が大切です。そのことを付け加えて私の討論とします。

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