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   誰も教えてくれなかった!高所恐怖症のナゾ

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2007年12月12日放送

今回の番組について

高いところに行くと足がすくんだり、腰を抜かしてしまう「高所恐怖症」。素晴らしい景色を見逃したり、不便を感じたりしている人も多いのではないでしょうか。ところが、ガッテンが調査したところ、治せると思っている人はなんと0%! ナゾに包まれた高所恐怖症に迫ると、驚きのメカニズムと克服法が明らかになりました。

ガッテン100人アンケート

100人中、3割の人が自分は高所恐怖症だと答えました。その方々は、安全が確保されているにもかかわらず身体に反応が出てしまい、困っていました。
※崖の上や足場の不安定な場所で怖いと思うのは、本来、身を守る大切な反応です。

オープニングクイズ

  • 問題:長野県千曲市で行われている橋の上から男性4人が逆さづりになる行事。逆さづりで何を行う?
    答え:踊る
    ※3年に1度行われる国の重要無形民俗文化財「雨宮の御神事(あめのみやのごしんじ)」の中の1場面。
  • 問題:山の頂など、ちょっと変わった場所でする新しいスポーツ。何をする?
    答え:アイロンがけ
    ※「エクストリームアイロニング」というスポーツ。
  • 問題:とび職といえば、一般に高所で作業する人を指すことが多い。英語でも、高所で作業する人を表す言葉には、ある動物が使われている。それは何か?
    答え:クモ
    ※「spiderman(スパイダーマン)」と呼ぶ。

「ここが高所との闘ーい(高い)どころ」

高所恐怖症を克服したいと強く願う3人の女性たちに、高い所をめぐるツアーに参加してもらいました。142メートルの大つり橋では、下が見えた途端、動きが止まりあえなく敗退。次に向かったお城では、危険なところは何もなさそうなのに大絶叫。怖がっていたのは、床板に見えた、たった5ミリのスキマでした。

高所恐怖症の人は、単なる高さにおびえるというよりも、下に空間があるということをイメージさせる状況を怖がる場合が多いといえます。

とはいえ、5ミリのスキマから落ちるわけはありませんし、理性で抑えられないものでしょうか? しかし、理性が働かなくなる理由があったのです。

「恐怖が増(ぞ〜)? これが恐怖のおまじない」

使われなくなった病院の手術室で、Aチーム7人、Bチーム7人の2チームに分かれて、ホラー映画を見てもらう実験を行いました。Bチームの人には、ある「おまじない」を唱えてもらいながら見てもらいました。すると、Aチームに比べて緊張や興奮の度合いを示す皮膚電位の変化が大きくなりました。

そのおまじないとは、「怖くない!大丈夫!」というもの。“怖い”という感情を抑制してもらったのです。

これは、心理学の世界で「抑制の逆説効果」などと呼ばれる現象です。感情や思考を抑制しようとすると、かえって増幅させてしまうことがあるのです。

みんなで一緒に「シロクマ実験」

  1. シロクマを思い浮かべてください。
  2. 次に、シロクマを思い浮かべないでください。

しかし、ゲストの3人は「思い浮かべないようにするのは無理!」という答えでした。シロクマを考えないようにするには、シロクマが頭の中に入ってきていないことを常に確認し続ける必要があるため、逆にシロクマを浮かび上がらせる結果になってしまうのです。

高いところめぐりツアーに参加した3人の女性たちも、「怖くない!大丈夫!」というおまじないを唱えていました。

恐怖が増幅する理由

高所恐怖症の人たちの頭の中では、これだけではなくもっとすごいことが起きていました。

「怖い」という感情がふくらむと、足がすくんだり、鼓動が高まったりという身体反応が出ます。それらが脳にフィードバックされ、「やっぱり怖いんだ」と怖さが増幅されてしまうのです。

さらにもう1つ、私たちの頭の中には、過去の経験に基づいて自分のいろいろな行動や反応に対する予測図ができあがっています。その予測図に基づいて行動することを「フィードフォワード」と言います。高所恐怖症の人は、怖い体験をしたり、人から話を聞いたりして、間違った予測図を思い描いてしまうのです。

高所恐怖症の3人に、つり橋で「怖い」と思った瞬間に、これからその恐怖心はどうなると思うか尋ねたところ、「恐怖が高まって最後はどうにかなってしまう」と答えました。ありもしない恐怖をどんどん予想し、事実とはかけ離れた結末を思い描いてしまったため、その場に立っていられなくなったのです。

「これで平気に慣れたかーい?」

高所恐怖症のAさんは、何度も142メートルの大吊り橋に挑戦しているのに、いつまでたっても渡れるようになりません。専門家に聞いてみると、「怖いままで逃げ出してしまうと、ますます悪化してしまうこともある」というのです。

ヘビ恐怖症も治った!?

ヘビ恐怖症のディレクターが自ら実験。ヘビの写真を見続けると、恐怖の度合いを示す発汗量はいったん上がったものの、約10分で正常並みになりました。ヘビの写真を10分見ていただけで、なぜか恐怖の度合いが下がったのです。

グラフ「ヘビを見たときの発汗量の変化」

実は、恐怖はいつまでも続くのではなく、ある一定の時間を過ぎると下がり始めます。その場に居続ければ、いずれその状況でも大丈夫だという体験ができるのです。これを番組では「OK体験」と名づけました。

専門家によると、もともと「恐怖」は緊急事態に対する反応なので、エネルギーがそう長くは続かないといいます。本当に危険な場合であれば、いつまでも怖がっていられますが、そうでなければ、遅くとも15分くらいで恐怖の反応は下がり始めるといいます。

「ガバンでガマン?ガンバって」

高所恐怖症を克服したいと願う8人が、30メートルのつり橋に挑戦しました。10歩も進めなかった人々が画板に2分ごとに何かを記入すると、あっという間にOK体験することができました。そして、念願だった142メートルの大つり橋も制覇したのです。

8人が行ったのは、実際の医療現場でも行われている「エクスポージャー(恐怖の対象などにさらすという意味)」という方法を、専門家のアドバイスによってアレンジした方法です。エクスポージャーは、医療現場でも効果があると認められています。

  1. まずはおよそ30メートルのつり橋で挑戦します。我慢できるところまで進んだら、その場で止まってもらい、画板上の画用紙に2分ごとに恐怖の度合いを書き込んでもらいます。「もう我慢できない!」という恐怖の度合いを100として、その時点での恐怖の度合いを点数化するのです。恐怖の度合いがゼロになった(OK体験)ところで、いったん戻ります。
  2. もう一度同じことを繰り返します。一度OK体験をすると自信がつくのか、1回目よりも先まで進むことができました。
  3. いよいよ、142メートルの大つり橋に挑戦。8人全員が念願だった真ん中まで行くことができました。

OK体験をするためのポイント

  • 心を閉じない:
    怖くないと言い聞かせたり、他のことに熱中したりしていると、OK体験は訪れません。実際に恐怖を体験することがとても大切です。
  • 恐怖にのみこまれない:
    頭の中が恐怖でいっぱいになってしまってもOK体験は訪れません。ある程度の冷静さを保てるレベルの高さや場所を選んでみてください。

OK体験は、吊り橋でなくても、ビルや、タワー、歩道橋などでも可能です。ただし、場所は問いませんが、とにかく安全が第一です。崖や足場の不安定な所など、危険な場所では決して行わないでください。10分間たっても怖さがなくならない場合は、もっと低いところで試すなど、簡単なものから段階的に挑戦してみて下さい。

この方法は、高所や閉所、クモやヘビ、先端が怖い先端恐怖症にも効果があります。たとえばクモやヘビの場合は、写真を見る→模型を見る→模型に触るなど、段階的に挑戦してみてください。

実習コーナー

ゲストにゴンドラ付きのリフトで3メートルの高さに上ってもらい、恐怖の度合いのグラフを書いてもらいました。すると、いったん上がったものの、4分間でOK体験をすることができました。

実際に行う場合の注意点

  • 例えば、つかんでいる手の感覚など、その時の感覚に目を向けると、恐怖にのみこまれにくくなり、恐怖心が下がるのが早くなります。
  • 家族や友人など、誰かと一緒に行くと、冷静さを保ちやすくなります。

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