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2008年1月30日

◎能登島談合疑惑 一般競争入札の拡大急がねば

 能登半島地震に伴う七尾市の能登島大橋復旧関連三工事の指名競争入札で、七尾市内の 建設会社役員らが逮捕された。石川県は昨年十月、制限付き一般競争入札の対象を「五千万円以上」から「三千万円以上」に引き下げたばかりだが、談合が疑われている三工事の予定価格は、二千三百万円台から二千五百万円台で、一般競争入札の対象外だった。

 全国知事会は入札改革指針で、段階的に「一千万円以上」に引き下げる方針を示してお り、これを受けて富山県は昨年十月から二千万円以上に引き下げ、福井県は新年度から二百五十万円以上への大胆な引き下げを決めている。石川県もさらなる引き下げを急ぎ、一般競争入札の拡大に努めてほしい。

 談合が疑われているのは、地震で損壊した能登島大橋の橋梁(きょうりょう)部分の補 修工事で、三工事とも同じ十二の業者が指名され、七尾市内の三業者が落札した。95・8―96・7%という落札率は、いかにも不自然な印象だ。石川県発注工事をめぐる談合事件に、県議会議長の妻が社長を務める企業が関与していたのが事実なら衝撃的である。

 地震関連では、昨年十二月、七尾市が発注した下水道復旧工事の指名競争入札で談合の 事実が発覚し、中島町の会社社長らが起訴されたばかりである。災害復旧工事で不当な利益を得るのは、「火事場泥棒」に似た行為であり、震災被害に遭った人たちの神経を逆なでするものだ。

 地震復旧工事に限らず、行政や本紙などに寄せられる談合情報は、後を絶たない。官発 注工事にはびこる談合の根深さは尋常ではなく、一般競争入札の拡大や罰則強化で、談合をやりにくくしていく以外に手はないだろう。

 石川県は昨年四月から、制限付き一般競争入札の対象をそれまでの「五億円以上」から 「五千万円以上」に、同十月からはさらに「三千万円以上」に引き下げた。その結果、昨年四―九月の五千万円超の発注工事は落札率が88・1%にまで下がった。〇二年度から〇六年度の落札率(二百五十万円超)が94―97%だったことを思えば、大きな変化である。全国知事会が入札改革指針で示した「一千万円以上」の目標を早くクリアしなければならない。

◎再生紙偽装騒ぎ できないと言う勇気を

 年賀状から始まって次々露見した再生紙偽装騒ぎは「環境への配慮」と「品質保持」の 板挟みの中で起きたということが分かってきた。古紙の配合を減らして品質を維持しながら、製紙各社がウソつきだと袋だたきにされている有様は視点を変えれば、こっけい極まりない出来事とも言えそうである。

 日本人に限らず、人間というのは「時代の空気」にのみ込まれやすい。温室効果ガスを 減らし、地球の生物を守ることの重要性を否定するものではないが、温暖化ガス削減運動も多分に、有無を言わさぬ空気に動かされているようなところがあるように思われる。騒ぎが起きたもとをたぐっていくと、合点のいかないことに行き当たるのだ。本当に大事なことは、お互い、できないことはできないと、はっきり言う勇気を出し、これならできるという方法を見いだし、誠実に実行する努力だ。

 京都議定書で約束した温暖化ガス削減目標を果たすために二〇〇一年四月から「グリー ン購入法」が動き出し、この法律を受けて「環境物品等の調達に関する基本方針」なるものが閣議決定された。

 そしてこの方針に、たとえばコピー用紙なら古紙の配合率を100%とするなどという 判断基準が国の機関や自治体に対して努力義務として示されたのである。

 努力義務とはいえ、古紙の配合率を100%にしては顧客が満足できる品質を維持でき ないことが技術的に分かっていて、結果的にメーカーが配合率をごまかさざるを得なかったということではなかったのか。

 今になって回収やら納入拒否やらが起き、しかし回収などをすれば、運送によってかえ って温暖化ガスを増やすことになるほか、紙不足となり、仕事ができなくなる。やむなく古紙の配合率を下げることを容認するようなことになってきた。環境省はメーカーの申告にゆだねられている配合率をチェックできるようにグリーン購入法を見直す検討を始めたうろたえぶりだ。が、古紙の配合率だけが削減ではなかろう。京都議定書には「京都メカニズム」と呼ばれる削減のメニューがいくつもある。古紙の配合とは別の方法による削減も考えたらどうか。


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