◇大学が引き揚げ
大阪と兵庫の2病院で、入院患者の受け入れ休止や、救急体制の縮小を検討していることが29日、相次いで明らかになった。いずれも大学病院の医師引き揚げが理由とみられる。医師不足の深刻な影響が大都市周辺でも起きている。【津久井達、高田房二郎】
兵庫県尼崎市にある関西労災病院(642床)は、今春からの救急体制縮小を検討している。同病院は年間2906人(06年度)の救急搬送を受け入れており、消防関係者は影響を懸念している。
同病院には3人の救急医がいるが、医師を派遣する大阪大病院側から「医師を拠点に集中させたい」として3月末と6月末に医師2人を引き揚げると通知されたという。夜間救急は維持する方針だが、昼間に現状通り受け入れるのは困難な見通し。
兵庫県内には、重篤患者を24時間体制で受け入れる3次救急病院が7カ所ある。
関西労災病院は3次救急に指定されていないが、救急部や重症治療部があり、3次と同等のスタッフ、設備を持つ病院として阪神南東部の救命救急の拠点の役割を果たしている。
周辺には、3次救急病院として兵庫医大病院(西宮市)があるが影響は必至だ。尼崎市消防局は「年間数百人に上る市内の心肺停止患者の大半を労災病院に搬送している。受け入れが縮小されれば大問題だ」と話す。奥謙(ゆずる)関西労災病院長は「地元の拠点病院であり、できるだけの対応はしたい」と話した。
大阪府南部の阪南市立病院(185床)は、4月から入院受け入れを休止する。常勤医11人のうち少なくとも7人が3月末で退職する見通しとなり、後任も見つからないため。累積赤字も多額にのぼり、市は「病院存続を含め、2月中旬に結論を出したい」と話している。
病院によると、退職するのは整形外科、胃腸科・外科、小児科、麻酔科の医師。いずれも和歌山県立医科大(和歌山市)からの派遣で、大学の引き揚げが原因らしい。
同病院では昨年6月、9人の内科医が一斉退職し、内科診療を全面休止。他科の診療は続けてきたが、入院患者数が前年の3割程度に激減。同医大側から「手術の少ない病院に医師を派遣し続けることは難しい」との意向が出されたという。
毎日新聞 2008年1月29日 大阪夕刊