食料不足「F」犠牲者は「×」・・・和歌山大発 救難サイン
上空に被災状況発信、近く国に提案
食料不足は「F」、犠牲者がいる場合は「×」――。和歌山大防災研究教育プロジェクトが、全国共通の記号で情報発信する「救難サイン」の定着を目指している。大規模災害の発生時、上空のヘリコプターなどから孤立集落の被災状況を即座に把握して、救援活動に役立てることを目的にしており、近く総務省消防庁に提案する。
重体者とその人数を表す救難サイン。みかんなど、目立つ色のものを並べて代用もできる。(紀美野町神野市場の町文化センターで)
同プロジェクトによると、救難サインは1メートル四方のパネルを用いて発信。上空からわかりやすいようにシンプルな記号にするが、死者や重体者を示すパネルと数字のパネルを組み合わせるなどして、被害規模を知らせることができる。夜間でも見えるように、反射材のパネルを使用する。
山間部での孤立化が問題となった2004年10月の新潟県中越地震では、運動場に「ヘルプ」などと書いて救助を求める被災者がいた。これをヒントに、共通の救難サインを同プロジェクトが考案し、実用化に向けて様々なサインとパネルの大きさ、素材などを試してきた。
救難サインによって、上空から救助が必要な地域の優先順位をつける「被災地のトリアージ」が可能になる。パネルがない場合でも、運動場や広場に書いたり、服や野菜、果物などを並べたりして、代用できる。
ただ、地域や関係機関によってサインの周知度が異なった場合、救援活動に混乱をきたす恐れもある。このため、同プロジェクトは、全国共通のサインとするよう、総務省消防庁に提案することを検討。同時に県や各自治体へも協力を呼びかけていく。
同プロジェクトの中村太和教授は「大規模災害の場合、被災地からの情報発信の手段は限られているので、実現すれば意義深い。まだあくまで試作品段階なので、協議してより実用的なものにしていきたい」と話している。
(2008年01月29日 読売新聞)