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コラム社説2008年01月29日(火)付 愛媛新聞

大阪府知事選 勝敗の分岐点は知名度だけか

 大阪の街に「橋下旋風」が吹いたということか。三十三年ぶりの与野党激突となった大阪府知事選は、与党が推した弁護士でタレントの橋下徹氏が民主党推薦候補らを大差で破った。
 テレビのバラエティー番組に多数出演するなど知名度抜群の橋下氏のタレント性に焦点が当たった選挙だった。
 大阪は漫才師の西川きよし氏が参院選で三期連続当選し、コメディアン出身の故横山ノック氏は再選の際に府知事選史上最多の約二百三十五万票を獲得した「実績」のある土地柄だ。何より昨年十一月の大阪市長選では、報道番組キャスターを務めていた民放のアナウンサーが初当選している。
 投票日の出口調査では、橋下氏に投票した人のうち「人柄」を基準にしたのが41・1%で最も多かった。テレビを通じて茶の間に浸透した橋下氏に対する慣れや親しみやすさが、投票行動に結びついたといえよう。
 民主党の鳩山由紀夫幹事長は「圧倒的な知名度の差を埋められなかった」と敗因を分析。社民党の福島瑞穂党首も「選挙が個人の人気投票のようになり残念だった」としている。
 橋下氏は子どもにさえ顔を知られている。知名度の優劣が勝敗に影響したのは間違いない。しかし、橋下氏の勝因を知名度だけで片づけるのは、あまりにも短絡的にすぎる。
 「脱タレント」で当選した宮崎県の東国原英夫知事は、テレビに出演するなど精力的に宮崎をアピールしている。その姿に有権者が橋下氏をダブらせても不思議ではない。
 橋下氏は出馬表明後、茶髪にジーンズという独特のファッションからスーツに着替え、髪も黒く染めた。そして、「大阪を変えよう」と熱っぽく訴えた。
 大阪府の財政は火の車だ。一九九八年度から九年連続の赤字決算で、府債残高は約五兆円に上る。昨年度の完全失業率は全国ワースト二位、生活保護を受けている世帯の割合も高い。
 知事といえば既成政治家からの転身組や官僚出身者が目立つ。政治、経済の両面で閉塞(へいそく)状態にある府民が、しがらみのない橋下氏の清新さ、バイタリティーに期待したのが選挙結果ともいえよう。
 既存の政党は勝敗の原因を知名度だけに矮小(わいしょう)化しすぎると、有権者の真意を読み誤ることになろう。
 与党は参院選、大阪市長選と続いた退潮ムードにブレーキをかけた格好だ。ただ戦術とはいえ、政党色を極力控えた戦い方だった。府政でも堂々と立場を明確にして訴えるべきだった。
 民主党は小沢一郎代表が陣頭指揮に当たるなど国政選挙並みの体制を敷いた。ねじれ国会の主導権を握り、衆院解散―総選挙に追い込む戦略の橋頭堡(きょうとうほ)にしたかったからだ。それだけに出はなをくじかれる形となった。
 小沢代表は新テロ対策特別措置法再議決時の採決よりも選挙応援日程を優先させたとして批判された。三月の熊本をはじめ年内には七県で知事選がある。戦略の見直しを迫られよう。

   
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