発表資料:2007年8月31日 ←目次に戻る
VDT作業での目の酷使による疲労実態と、蒸しタオルの温め効果を、実証
■月曜に比べ、週末は目のピント調節力低下(週末老眼化現象が発生)
■蒸しタオルで目を温めると、ピント調節力、ドライアイ症状が改善


 花王株式会社(社長・尾崎元規)ヒューマンヘルスケア研究センターは、鶴見大学歯学部眼科学講座・後藤英樹准教授と共同で、パソコンを長時間使用するVDT(Visual Display Terminal)作業者の実態を調査した結果、VDT作業で目が疲労してピント調節力が低下することを実証しました。
 さらに、蒸しタオルで目を温めると目が楽になると経験的に言われていますが、蒸しタオルを使用して心地よい温度とされる約40℃で目を温めると、実際にVDT作業で低下したピント調節力が改善することやドライアイが改善することを、科学的に実証しました。

VDT作業蒸しタオルで目を温める


■研究成果
■VDT作業による目の疲労の実証
 パソコンを長時間使用するVDT(Visual Display Terminal)作業を主業務(1日当り約6時間従事)とする方16名を対象に、疲れ目の程度をピント調節力により評価しました。その結果、VDT作業によりピント調節力が低下する傾向が分かりました。さらに、休日明け初日(月曜日)と週末(金曜日)を比較すると、5日間で顕著にピント調節力が低下していました。

■VDT作業終了後に、蒸しタオルで目を温める効果
 上記の被験者に対し、VDT作業終了後に蒸しタオルで目を温めるという方法が、どのような影響を及ぼすかを検討しました。その結果、心地よいと感じる温度の蒸しタオルを目にあてて、約40℃で3分間(蒸しタオル1本を使用)、もしくは約40℃で10分間(蒸しタオル5本を連続使用)温めることで、VDT作業で低下したピント調節力が回復することを明らかにしました。また、この被験者に、蒸しタオル使用後の感想を調べたところ、約40℃で3分間に比べ、10分間と長く温めた場合の方が効果を実感する人が多いことが分かりました。

■ドライアイへの、蒸しタオルで目を温める効果
 ドライアイと診断される方27名を対象に、蒸しタオルで目を温めたときのドライアイ改善効果を調べました。その結果、約40℃で3分間(蒸しタオル1本使用)温めた場合は改善した目は5%程度でしたが、約40℃で10分間(蒸しタオル5本を連続使用)温めた場合は36%の目に改善が認められました。

 以上より、VDT作業の目の酷使の実態と、疲れ目やドライアイのケアとして、家庭でもできる「蒸しタオルで目を温めること」が有効であることを確認しました。
 本内容は、日本臨床眼科学会(2007年10月11~14日、京都)で発表いたします。


■研究背景
 情報化社会を背景に、パソコンはもちろん携帯電話などの携帯情報端末の増加に伴い、VDT(Visual Display Terminal)は拡大の一途をたどっています。例えば、インターネット利用者数は8,500万人を超え、企業普及率99%、世帯普及率も87%に達しており(総務省調査、2006年1月)、こうした実態からもVDT作業は増加していると考えられます。花王の調査(2007年2月、首都圏女性12~69歳641名)でも、20~30代の女性では、1日に7時間以上のパソコン作業をしており、その多くが目の疲れや目の乾きを感じているなど、目を酷使する環境は確実に広がっております。
 しかしVDT作業の目への影響については、一般に良くないといわれるものの、科学的に実証した例はほとんどありませんでした。また疲れ目の対策としては、心地よい暖かさの蒸しタオルで目を温めると目が楽になると経験的に言われていますが、その効果を科学的に検討した例もほとんどありませんでした。
 花王では、以前から身体への温熱効果について研究を進めており、そこで今回の検討を実施しました。


■実験方法
 以下の試験を、専門医の指導に従い、被験者のインフォームドコンセントを得て、2007年5月に実施しました。

■VDT作業の目の疲労度、およびVDT作業後に目を温める効果の測定
   被験者:1日当り約6時間のVDT作業に従事し、作業中に目のかすみを感じた経験があると自己申告した方16名(男性9名、女性7名、平均年齢31.3歳)。蒸しタオル1本使用者と蒸しタオル5本使用者の2群に分けた。

測定法:VDT作業は午前中2時間、午後3時間の計5時間実施。VDT作業前(9~10時)、VDT作業後(16時頃)、VDT作業終了後の蒸しタオル使用後(17時頃)に、アコモドメーター*を使用して目のピント調節力を測定。
蒸しタオルは約60℃の温蔵庫で温めたものを放置し、約40℃になったものを使用。蒸しタオル1本で3分間温める場合と、蒸しタオルを連続して5本使用して10分間温める場合の2通りを実施。測定は、休日(土、日)明け翌日の月曜日と金曜日の2回実施。

■ドライアイに対する蒸しタオルにより目を温める効果の測定
被験者:専門医の指導のもと、ドライアイの診断指標であるBUT*を測定し、BUT5秒以下でドライアイの疑いのある人27名(男性5名、女性22名、平均年齢39.8歳。内4名は片眼のみがドライアイの疑いがあったため、対象眼数は50眼)。蒸しタオルを1本使用する群、蒸しタオルを5本使用する群の2群に分けた。

測定法:上記試験と同様、約40℃の蒸しタオルで、1本で3分間、もしくは5本で10分間温めた後、BUTを測定。
*アコモドメーター: ピント調節力を測定する機器。遠ざかる画面を見つめ、画面のぼやけが無くなって、はっきりとピントが合うまでの距離を計測。測定時は各被験者が所有する眼鏡・コンタクトレンズでの視力矯正下で実施。
*BUT(Tear Break-Up Time): ドライアイの診断法の一つ。フルオレセインを点眼し、まばたきを1回した後、眼球を覆っている涙液層が壊れるまでの時間を測定。涙液層が壊れるまでの時間が5秒以下をドライアイの疑いありと判定。


お問い合わせ
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042

※社外への発表資料を原文のまま掲載しています。

ご利用条件個人情報保護指針
(c) KAO CORPORATION. All Rights Reserved.