現在位置:asahi.com>教育>子育て>朝日新聞記者の子育て日記> 記事

朝日新聞記者の子育て日記

どの病院で産むか、それが問題だ(女性編)

2008年01月28日

 さて、どこで産むか。

 産婦人科不足と聞くし、早めにどの病院にするか決めなくては。

 最近は、まるで病室が高級ホテルのようだったり、豪華なお食事が出てきたり、赤ちゃんの超音波を立体映像で見ることができたりと、サービスが多様化している。病院選びでどこを重視するかは、価値観によって随分違ってくる。

 とはいえ、やはり病院は病院。華美な施設やサービスは不要で、私にとって安心して産める病院とは、きちんとした医療体制が整っているところ。緊急の場合も、総合病院に搬送されずに処置を受けられて、患者の要望をきちんと聞いてくれ、医師や助産師、看護師が十分に配置されているところ。やはり人がポイントだと思った。

 というわけで、実際に産んだ人に話を聞いたり、ネットを調べたりした結果、候補を都内の3カ所に絞った。国立のA病院か、民間のB病院またはC病院。

 (2007年)4月初旬、まず自宅近くのA病院に問い合わせてみた。

 すると、「今月の診察の受け付けは終了しました。来月の診察の受け付けは25日午前9時からです。30分で予約が埋まってしまうこともありますので、早めにお電話をおかけください」と言われた。まるで、人気歌手のコンサートチケットの争奪戦のようではないか。予約がとれるか自信がなかったので、あきらめた。C病院は、自宅からも会社からも通いづらいのでやめた。

 最終的に会社に近いB病院に決めた。だが、問い合わせてみると11月の分娩まで、予約でいっぱいとのこと。早速、私も受診の予約を入れた。予定日は12月初旬だったので、受診までの約1週間のうちに、分娩予約がどんどん入ってしまわないか、と受診日まで落ち着かなかった。安心して産める場所を確保することがこんなに「激戦」とは思わず、産婦人科不足の報道を身をもって感じることとなった。さらに病院が少ない地域の妊婦さんの不安はいかばかりか。

 B病院は、とても安心して受診できるところだった。主治医も看護師や助産師の方々も優しく、しっかりした方ばかりで、出産前の不安を解消してくれた。会社から近く、勤務中に内出血があったときも、緊急外来で診てもらえた。やっと心安らかに産める場所が決まった、と安心していたのに、夫が9月に名古屋に転勤することがになった。

 困った。東京で産んでから行くか、それとも名古屋で新たに病院を探すか。8月から探して、果たして分娩予約がとれるのか。しかも、転勤先の情報も乏しい。しかし、夫とは臨月も、出産時も、生まれてまもない赤ちゃんの世話も全部、一緒に経験したかった。B病院の主治医に頼んで9月末まで分娩予約を入れたままにしてもらい、名古屋で病院が見つからなかった場合は、東京で産むことにした。しかし、独り東京で、産気づくのを待って過ごすのも心配だった。

 愛知県出身や名古屋在住の知人に聞いて回ったが、名古屋で産んだ人はなく、なかなか病院が見つからない。お産事情に詳しい先輩記者に話を聞き、ネットの情報をさんざん調べて、なんとか4カ所に候補を絞り、まずは電話をかけてみた。うち1カ所はやはり、「来年1月まですでにいっぱい」と断られた。そのほかは、分娩予約制でなく、受け入れ可能とのこと。電話の応対はいずれも感じがよく。各病院のホームページもまあ悪くない。あとは足で稼いでみるしかない。

 9月上旬、母と一緒に3カ所の病院をはしごして、院内を歩いてみた。足を踏み入れた時に受ける全体的な感じ、職員の人たちの対応や病棟の様子を見てみる。それから、重視したのが医師、助産師、看護師の数だ。

 結局、新居から徒歩10分のところにある病院に決めた。女医を中心に妊婦を診る常勤の産婦人科医が5人、助産師も10人以上いる。病院を訪ねた時も、助産師の方が優しく話しかけてくれ、気持ちがやわらいだ。

 おっぱい指導にも力を入れていて、母乳育児を希望していた私にとっては、産後のフォローも心強かった。候補の中で、自宅から一番近いのも魅力だった。出産経験者らが感想を書き込むネット情報も悪くなく、食事もおいしいとの評判が多数書かれていた。「へえ、そうなんだ」と読み流していたが、それが私の日々の唯一の楽しみになるとは、そのときは思ってもみなかった。

女性記者プロフィール(07年10月15日から)

1995年朝日新聞入社、34歳。前橋、福島総局、東京・名古屋本社学芸部などを経て、04年9月から東京本社文化グループに在籍。11月下旬に第1子出産予定で、9月から産休に入る。現在は夫の転勤先の名古屋市で過ごす。

女性記者プロフィール(07年10月6日まで)

2000年朝日新聞入社、29歳。甲府、青森総局を経て、東京本社生活グループに在勤中の06年11月に第1子(女児)を出産。現在は夫の転勤先の福島県福島市にて育児休業中。

男性記者プロフィール

2002年朝日新聞入社。29歳。2カ所目の赴任地である新潟・上越支局で06年秋から育児休業を取り、同い年の妻と、第1子の長男を子育て中。

このページのトップに戻る