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2008年1月29日

 あの郵政民営化論議と同様、造反騒ぎまで出てきた暫定税率問題だが、税率維持の法案が年度内に成立しなかった場合を想定し、与党側が、とりあえず暫定税率を一時継続する「ブリッジ(つなぎ)法案」を提出する方向となってきた

苦肉の策とはいえ、世の中には一本の通り道を渡すことで劇的に事態が好転する場合も多い。金沢市の犀川大橋下流で、藩政期の幻の木橋を復活させる構想も、川の両岸を結ぶ新しい人の流れをつくると期待される

防災や公共性の点で、許可を受けるまでの道は平坦でない。しかし住民が主体となり、工事費に寄付金を募るというから、お役所も地元の熱意に一肌脱げないか

犀川河畔で幼少を過ごした室生犀星の「性に眼覚める頃」に、朝の一番水をくみに川へ行くと、良質な水が後から後から流れてくるようで、幾度も手桶の水をくみかえたという清冽(せいれつ)な描写がある

そんな犀星の世界をたどるためにも、雄渾(ゆうこん)なおとこ川の流れに木橋の情緒を加えたい。構想を煮詰める中で地域の一体感も生まれた。どこかの法案のような一時のつなぎでなく、既に両岸の住民の心の中に立派な橋はつながっている。


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