山陽新聞体育賞の贈呈式が二十六日、岡山市内で行われました。今年の受賞者は岡山、香川県内の四団体、六個人、一ペア。この中の全国高校総体チャンピオンを育てた指導者から、こんな話を聞きました。
「選手に技術を教えることは確かに大事だけど、それだけでは不十分。余力がないと、勝負事には勝てないよ」
試合では、しばしば想定外のことが起きます。悪天候、長時間に及ぶシーソーゲーム、観客席の大歓声や悲鳴…。それまで経験したことがないような状況に戸惑い、平常心を失っても不思議ではありません。心身に余力があればこそ、不測の事態を乗り切ることができるというのです。
では、どうすれば余力を養えるのでしょう。その答えは練習にあるようです。五輪マラソン二大会連続メダリストの有森裕子さん(岡山市出身)は、レース当日のあらゆる状況を想定し、雪や猛暑の日でも走ったそうです。岡山県内でもプロ志望の高校生ゴルファーは、わざと難しいラフやディボットに球を置き、ショット練習に励んでいます。
トップ選手たちを見ていると、みんな気持ちのコントロールが上手です。練習では「自分は未熟」「今のままじゃダメ」と厳しく追い込むのに、試合になると「ここまでやったんだから大丈夫」「自分が負けるはずない」と開き直り、面白いぐらいプラス思考で本番に臨みます。
それぞれの方法で力を蓄え、頂点を極めた郷土のアスリートたち。その鍵を握る日常は興味深く、示唆に富んでいます。
(運動部・飯田陽久)